#19 太古からの着信
過去と未来は
その時である。
「♪♬~♪♫~♩♩♩~」
菫青のジャージのポケットから着信音らしき音が鳴り響いた。
いつもの癖で外出時に欠かせないスマホを持って出ていたのだ。
「ちょっと、失礼」
着信画面を見て驚いた。
「セイだわ」
ビデオ通話の表示をタップする。
「キンギョ?どこにいるの!」
それは菫青の双子の兄弟からだった。
画面に映し出されていた見慣れた顔に菫青は懐かしささえ感じる。
「セイ。どうしたの?そんなに慌てて何かあったの」
双子の片割れ「夜天星葉。ヤテンセイヨウ」自分とそっくりな顔が慌てふためいている。
「どうしたもこうしたもないよ。何かあったのは君の方でしょ。丸二日帰って来ないからさ。一体、どこへ行っちゃったのさ。みんな心配しているよ。連絡もないから誘拐でもされたんじゃないかって騒ぎになってるんだよ」
信じられない言葉を聞かされる。
「えっ二日ってナニそれ?そんなに経ってるの。アタシには数時間経ってるとしか思えないんだけど」
どうやら「あっちとこっちの」時間の進行具合が異なるようだ。
「それで?今現在どこにいて何をしているのさ?」
スマホに映る星葉が僅かにイラ立っているのが分かる。
「オーリカ大陸だっけ?王国だったかしら?水の国の水月町ってところらしいわ。アタシも来たばかりでよく分かってないの」
「キンギョ、大丈夫?頭打ったとか?」
なんて失礼なことを云う兄弟なのだろう。
でも今つながっている相手が、本来菫青がいた世界なら詳細を話したところで相手が腑に落ちないのも無理はない。
「打ってないわよ。失礼ね。アタシも知らない世界に飛ばされた感でいっぱいなの。そっちに戻る手段も分からないの」
ここは正直に伝えるしかないけれど、どうやら本来の世界とはつながっているらしいことは分かった。
「キンギョ、もしかして、もうこの世にはいないとか?」
「いるわよ。勝手に殺さないでちょうだい。生きているからこうしてセイと話せているんじゃないの」
本当になんて失礼なヤツだ。
「それでなんでそのオカリナ王国にいるの?」
「オーリカね。アタシにも分からないわ。あっでも「天藍堂」って云うギャラリーに立ち寄ったわ。そこでシーラカンスに出逢って、そうね、確かそのシーラカンスの目の前に座らされて、それからこっちの世界に飛ばされちゃったみたいなの」
そして、また訪れたのが同様の怪しげなサロンだった。
「飛ばされた?オカリナ王国に?一体そこは何時代なのさ」
「オーリカね。何時代なのかは分からないわ」
何度訂正しても一度インプットされたら、それが星葉の基準となってしまう。
「キンギョの云う「天藍堂」って建物自体がレトロな感じでなんだか妖しげな看板の掛かっているところ?」
星葉も外観だけは知っていたようだ。
「そう、そこよ。店内はギャラリーとカフェなんだけどね。なぜか室内に「シーラカンス」が水槽の中で揺らめいていたわ」
大まかにはしょった説明で伝わるだろうか。
案の定、画面の向こうの星葉が怪訝そうな顔をしている。
「よく分からないけどさ。面白そうじゃん。それでキンギョはなんで「天藍堂」でなくて知らない世界にいるのさ。なんでこの通信つながってんのかね」
不思議なことや得体の知れないことに遭遇すると、恐怖や不安より先に好奇心に勝るものがなくなってしまうのが星葉の本質だったりする。
今、まさにその本領が発揮されたようだ。
「分からないわ。スマホの電波は次元を越えるのかしら?「天藍堂」のシーラカンスの前に座らされて、それからチャネリングに入って気付いたら、なぜか全然知らないオーリカ王国の水の国にいたのよ。そうそう、それととってもびっくりな出逢いがあったの」
云うなり菫青は二人の会話を興味深そうに聞いていた菊花の横に並んで立ち、画面に映るようにスマホの持ち方を調整した。
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