#16 家族
親は無くとも
「へぇ、そうなの。それでキンセイは嫌じゃなかったの?女の子の姿で生活してゆくことに対して」
「ええ、別に抵抗はなかったわ。アタシは大人しい子供だったし、もう一人の双子の兄の方がヤンチャで手の掛かる子供だったから。双子の兄の名前は「星葉」セイヨウと云うの」
菫青と似て非なる者がもう一人、この世のどこかに存在していることに興味が沸いた。
菫青の兄弟がここではない世界にいることには変わりない。
「セイヨウ。星葉石の名の珍しい鉱石があるけど関係してる?」
「よく分かったわね。すごいわ。もしかしなくてもキッカはかなりの鉱石マニアでしょ」
「星葉石」アストロフィライト。語源の由来はギリシャ語の「星」Astoroと「葉」Phyllonである。
特徴として放射状や葉状に結晶が広がる。
産出数は少なく非常に稀少だ。
パワーストーンとしての働きは「創造の爆発」である。
菫青の双子の兄はまさに「存在そのものが爆発」だと云えるほど常識外な性格をしている。
菫青も鉱石の「菫青石」アイオライトから命名されている。
マグネシウムや鉄を含むケイ酸塩鉱物だ。
菫色の美しい変成鉱物で角度によって青だったり、緑だったりと二色性を特徴とする。
パワーストーンとしては「精神安定」「目標達成の羅針盤」「夢や目標の方向へ前進するサポート」「誠実」などがある。
星葉と菫青、同じ双子でも性格や魂の本質は全く違う。
親兄弟でも一個の人間である。
それぞれ皆違う性質は持って然るべきなのだろう。
「私は鉱石マニアって云うよりも、パワーストーンを使ってのセラピーをしているの。リアルな鉱物学よりもスピリチュアルなエナジーヒーリングとしての鉱石利用をしているの。鉱石は多大なパワーを宿しているからね。水の国のシンボルストーンは水晶よ。この国はクリスタルパワーの恩恵を受けているの」
菊花の得意分野が垣間見えたような気がする。
「それステキね。実はうちのママとパパもセラピストなのよ。世界中を飛び廻っているから余り家にいないけど。上の兄達が弟達の相手をしてくれていたの。アタシ達は兄達に育てられたと云っても過言ではないわ」
両親が不在がちだったことに対しての淋しさを記憶の底から思い出す。
「子供達を残して両親二人共、仕事で留守にしているの?」
幼子を残してまで仕事を優先させるほど仕事に魅了されているのだろうか。
「ええ、仕事大好き人間みたい。自宅でサロンを開くとか、そーゆー定住は好まないみたいなの。世界を相手にしているから身体が動く限り続けるのではないかしら」
もはや、仕事は「支事」自分達の支え事となっている。
「キンセイも双子の兄弟にとっても淋しい限りね」
子供であれば親に甘えたい年代を両親不在ですごすことになる。
「そりゃあ、淋しい限りよ。大好きなママだし、パパもとても頼りになるし、二人共存在感あるから家にいないと不安になるけど。でもね。それを補うくらいに兄達がアタシ達双子の面倒をみてくれたの」
両親不在の淋しさを埋めてくれた兄達にはどれだけ感謝してもし切れないほどだ。
「そうなの。それは頼もしい兄弟達なのね」
「ええ、とても頼りになる兄達だわ」
そんな風に兄弟のことを話題にしていると、現在の自分の置かれている立場を思い出して急に不安になる。
「どうしたの?キンセイ」
急に黙り込んでしまった菫青の睛が不安定に揺れていた。
「アタシは元の世界に戻れるのかしら?ここは自分が視ている夢なのかとも思うわ。だけど、それにしてはリアルすぎる。キッカはずっとここ水の国にいたの?」
自分の母親と同じ名前と、そっくりな顔立ちの菊花に親近感が沸かない訳がない。
「ええ、そうよ。私はここ水の王国で生まれ育ったの。家族構成は両親と姉が一人いて水の王国ではなく風の王国に嫁いでいるわ」
水の王国はオーリカ大陸に存在している国の一つだったことを思い出す。
「大陸がひとつなんて、とてつもない超大陸としか思えないわ。もっとずっと大昔にも大陸がひとつの頃があったと云われているけど」
「それ知ってるわ。ゴンドワナ大陸のことね。地球は生きている。多分、時代時代によって地球も変化しているけど。その中で私達は生かされている。本来は別次元で生きている私とキンセイのタイムラインが今だけでも一致したからこうして出逢うことが出来たのだと思うわ」
信じられない話ではあるが、今、目の前に映し出されていることの現実は否定のしようがない。
ここは大人しく受け容れるしかないとの覚悟が必要だ。
「はぁ、もう観念するわ。せっかくキッカと出逢えたのですものね。この出逢いは偶然ではないと思うの。だから、この状況をたのしむことにするわ」
菫青は性格上、殆ど悩むことがない。
それはどんな如何なる時も起きたことに対して抵抗せずに受け容れることを善しとしているからである。
たまに受け流しスルーすることもあるため、人によっては冷淡と受け留め兼ねない。
しかし、それは本人の解することではない。
大雑把と云えばそれまでである。
「あなたのその漢前な性格に敬意を表するわ」
菊花がいたく感心している。
「ええ、一応アタシも男ですから」
菫青が満面の笑顔で返答する。
「それもそうね」
人は見た目だけではない。
お手本もしくは見本としての菫青に益々興味が沸いてきた。
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子は育つ




