#11 その名も京極天藍
既視感を感じることがある
「うそ、京極天藍って「天藍堂」の店主も同じ名前だったわ」
菫青の目の前にいるのが先ほどまで、自分がいたはずの「天藍堂」の主と同姓同名だとは思いもよらないことだった。
まさか、同一人物なのだろうか。
「その通り、わたくし「天藍堂」の店主であり、ここ「天藍舎」の店主でもある京極天藍でございます。こちらの世界は如何ですか?お嬢さん」
「えっまさか、ホントに?」
菫青は我が目を疑いたくなる心境に陥った。
なぜなら、目の前にいる人物こそ菫青が本来いた世界にもいた京極天藍本人だと云うのだから驚きも度を超している。
驚愕する菫青の顔を見て、してやったりとニヤつく顔にムッとなる。
「そのまさかです。わたくしの次元軸は多次元に渡ります。次元は幾重にも重なり合っているものです。ご存知ですかな?」
「それはパラレルワールドってこと?ここはオーリカだって聞いたけど?数億年前の地球にも数億年後の地球にも、アナタは存在しているってことになるのかしら」
まるで空想劇の登場人物のようだ。
「そうとも云えるし、そうでないとも云えるし、ただ、どの次元のわたくしも全ての記憶も意識もわたくし自身が共有しているのです。ですから、どこにいようとも出逢った人、起こった出来事はその場その時に全て同時に体感共有出来るのです」
余りに突飛すぎて菫青の脳内の処理能力が追い着かない。
「アナタの云ってることを理解するのは難しいわ。ではアタシは?ここにいるアタシは別の次元世界のアタシであるのになぜオーリカにいるの?これは夢?夢にしてはリアルすぎないかしら」
菫青もまた、本来いた世界の記憶を保持したまま別世界に彷徨い込んでいる。
「夢だと思えばここは夢の世界となりましょう。リアルと思えばリアルな世界が存在します。現在のあなたがここにいるのが事実と認めるか。それを決めるのはあなた次第ですよ。しかし、そこに拘る必要はない。どこにいてもあなたはあなた。そして、わたくしも然りです」
天藍の言動の説得力のなさに減滅する。
「益々、理解不能だわ。ただ、悩んでいてもバカらしいってことだけは分かったわ。とりあえず、今と云う現在をたのしむことにするわ」
「それは賢明です。いやー、実にお嬢さんは賢い人ですね」
胡散臭い笑みを浮かべながら喋る天藍を胡乱気な目で見据える。
褒められても少しも嬉しくないのは気のせいではない。
「もうその辺で勘弁してちょうだい。天藍。キンセイは私が預かるわ。問題ないわよね」
菫青が不機嫌になってゆくのが手に取るように分かる。
「もちろん。問題なんぞありませんよ。キッカにお任せ致します」
「ありがとう。そうするわ。あっそれと、天藍、あなたはキンセイに近付かないように。これ以上あなたといると何やら混乱するようだから。いいわね」
二人のやり取りを見ていた菊花が天藍に釘を刺す。
「ええ!それヒドくない?」
「ヒドくない。ルビィ!サファイア!天藍の監視よろしくね」
いつの間にか背後に控えていた二人の姿に菫青は本日何度目かの驚きを口にした。
next soon→#12
それがパラレルワールド




