第二章 17 蓄光石と魔物狩り屋の報酬
17 蓄光石と魔物狩り屋の報酬
蓄光石。
親指と人差し指で作った輪のサイズの平たい石で、真ん中に小指の先ほどの穴が開いている。ミーヤもマアチもボウも、穴に紐を通し、首にかけて服の内側に垂らしている。
これは、『どれだけ魔物を倒したかがわかる石』だ。
魔物は、世界のエネルギーが具現化した存在。生物ではないので、ダメージを与えても血などは出ない。そして、一定のダメージを与えると、魔物としての形が崩れ、世界のエネルギーそのものに戻る。溶けるように光となるのだ。
だが、それがただ世界に還元されてしまっては、苦労して魔物退治をした甲斐がない。だから、報酬を得るためのアイテムが作られた。
町には『鑑定屋』という施設があり、精霊がいる。蓄光石は精霊が作ったアイテムだ。
蓄光石は最初は黒色だが、魔物を倒して光を吸い込むと輝きだし、倒した魔物の量により、色が変わる。
蓄積した光が500テニエル未満なら、銅色。
蓄積した光が500テニエル以上、5,000テニエル未満なら、銀色。
それ以上になったら、金色。
人間の目には、それだけの区別しか出来ない。だが鑑定屋の精霊は、蓄光石の光を1テニエル単位で詳しく鑑定できる。
魔物狩り屋は、多くの魔物を倒し、蓄光石に魔物を倒した功績を蓄積していく。ある程度光が溜まったら、鑑定屋に行き、溜まった光に応じた報酬をもらう。精霊が蓄光石の光を吸い取って黒色に戻す。また魔物狩りに行く。そうやって生計を立てている。
ミーヤ達も、数日前に鑑定屋で換金をしたばかりだ。マアチに生理が来て、ミーヤもそろそろ始まりそうな状態だったので、魔物狩りは休むことにした。天気も悪いし、今日は鑑定屋に行こう、と三人で向かった。だからさっきまで蓄光石は黒かった。
それが今、ミーヤとマアチの蓄光石は銅の色に輝いている。
だが、ボウの蓄光石は黒いままだ。
魔物の光は『その魔物を倒すため、その場で魔法や物理攻撃を行った人』の蓄光石に、均等に吸い込まれる仕組みだからだ。
100テニエル得られる魔物を一人で倒したら、その人間が100テニエル分の光を得る。二人がかりで倒したら、きっかり50テニエルずつの光がそれぞれの蓄光石に入る。三人がかりだと、33.333……テニエル。鑑定屋で換金するときには小数点以下は切り上げになる。小数点も初級学校で習った。
蓄光石は精霊の作ったアイテムなので、こういうことができる。
だから、回復や補助魔法など、戦闘のサポートをする人間も、平等に報酬を得られる。
ただ、今のボウのように、魔物とにらみ合った程度では蓄光石は反応しない。
「一匹だけかな?」
ミーヤが辺りを見回す。木々の中にはもう、不審な動きや物音は感じられなかった。
「大きさも普通だったから、オレとミーヤで分けて50テニエルぐらいかな。何匹もいたら、兄貴も戦えて稼ぎになったのに」
葉獣は、個体差はあるが一匹100テニエル程度だ。
「弱い魔物でも、何匹にも囲まれたら結構大変なんだぞ。特に魔法使いは、魔法を放つのに精神集中がいるだろ。葉獣の群れに連続攻撃されて精神集中出来ない、ってこともあるんだから」
魔法使いのミーヤとマアチは顔を見合わせる。
「そうだよな。三人いるからあっさり勝てたけど、一対一だったら手こずりそうだぜ」
「マアチはまだいいよ。火の魔法が効くもん。私は水だから葉獣とは相性が悪いし。……ナイフとか持った方がいいのかな? 魔法使いでも、武器持ってる人もいるよね」
「まあ、まずは得意な攻撃方法をきわめていってくれよ。練習していけば精神集中の時間は短く出来るっていうし。それに水の魔法は戦闘以外で必要だ。俺の稼ぎは、今は心配しなくていいから、魔物狩り屋として強くなることを考えてくれよ。そうしたら、一緒にもっと強い魔物を倒しに行けるんだから」
ボウの言葉に、二人はうなずく。
「ありがとう、ボウ兄さん」
「ありがとな、兄貴」
「さあ、蓄光石は落とさないようにしまっとけよ」
蓄光石は本人と紐付けられているので、体から少し離れたところにあっても、魔物の光は吸い込まれていく。だが、宿屋に忘れた、山道のどこか落としたなど、体から離れすぎると、光は吸い込まれない。魔物だった光はそのまま消えて世界に還元される。
だから魔物狩り屋は、蓄光石を無くさないように首にかけ、紐が切れないように服の内側に垂らすのだ。
三人は蓄光石を服の内側に戻し、次の魔物を探して歩き出した。




