第二章 16 魔物との戦い
16 魔物との戦い
三人は息を潜め、木々の間に目をこらす。小さな影が、こちらに向かってくる。
山に生きる獣ではない。獣ならば、人間を警戒し、人間と遭遇しても距離を取って様子をうかがうのが普通だ。
だが、目の前の影は、一直線にこちらに向かってくる。
「葉獣だっ」
マアチが小さく叫ぶ。
葉獣。葉っぱや小枝を丸めてかたまりにしたような魔物だ。葉や小枝で出来た手足があり、人間に体当たりや引っ掻きで攻撃してくる。身長はせいぜい人間の膝ほど。一番弱い魔物の部類だ。
「一匹だ、二人でやれるな?」
「はい!」
ボウが言い、ミーヤとマアチが答える。
ボウは剣を抜くが、斬りかかりはしない。葉獣を牽制するだけだ。葉獣は足を止める。
その間に二人は魔法の準備をする。
ミーヤは魔法屋で精霊に訓練してもらい、水の魔法を習得した。『人間の精神力で、水という世界のエネルギーを、一瞬だけ呼び出す』ことができる。ある程度の量が出せるので、中級レベルだ。
魔物にぶつけるには綺麗な水でなくていい。だがぶつけ方にもいろいろある。
ミーヤは、一番得意なやり方をする。
両手を向かい合わせ、精神を集中する。手と手の間にバケツがあり、水が溜まっていくことを想像する。
「……水よ!」
気合いと共に、ミーヤは葉獣に手を振り下ろす。手の中に現れた水の玉が葉獣に飛んでいく。
ベシャッ!
ボウに気を取られて立ち止まっていた葉獣に水が直撃する。小枝の体が押しつぶされる。
だが、葉と小枝の体に水の魔法はあまり効かない。葉獣は崩れた体をもう一度組み立てていく。
効き目が高いのは、もちろん火の魔法だ。
「……炎よ!」
ミーヤの横で、マアチの準備が整う。マアチも手の中に火の玉があることをイメージし、精神を集中していた。そして現れた火の玉を、体制を直している葉獣に投げつけた。
『残水の魔法』をかけた魔法水筒ならば中に水が残るが、ミーヤが葉獣にぶつけた水は、もう消えている。
乾いた葉と小枝の体に、炎は効果的だ。マアチは火の魔法を中級まで習得しており、火の玉の大きさは葉獣と同じぐらいだった。その炎は葉獣を焼き尽くした。
この炎も一瞬で消えるので、周りの木々に燃え移りはしない。
葉獣だったものは、溶けるように光となり、ミーヤとマアチの胸元に吸い込まれていく。
「やったな、マアチ、ミーヤ」
ボウが辺りを見回し、他に魔物がいないか確認してから剣を鞘に収める。
「うん、しっかり魔物が倒せた!」
ミーヤが胸元を押さえる。
「でも、悪いな、兄貴、オレ達だけもらっちまって」
マアチが、胸元から蓄光石を取り出しながら言う。それは銅色に光っていた。
「葉獣は安いからいいよ。二人の練習台にちょうどいいし」
ボウは優しく答えた。




