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勘違いは程々に  作者: ゆうさと
スキー合宿
37/43

班決めとペア


学祭が終われば、定期試験がある。

いつも以上に時間がなく、皆地獄を見るのだが、今回は違う。

その翌週にスキー体験合宿が控えているからだ。

行事に力を入れているこの学園は、1年生から旅行イベントがある。


試験も終わり、今は班決めをしている真っ最中。


「……葵、ひかり、一緒の班になろ?」


「うん!いいよ!」


「これで3人だね!あとは……あ!みゃー!」


私から誘おうとしていたから瑠璃ちゃんに誘われるのは予想外だった。

ひかりちゃんはみゃーちゃんこと、相澤京ちゃんを誘いに行っている。

京ちゃんは黒髪のボブカットで、黒縁眼鏡の女の子。

くりっとした可愛い瞳をしていて、背も小さいからとても子どもっぽくみえる。

読書が好きでよく本を読んでいる。

図書委員っぽい彼女は実際図書委員だ。

可愛らしい所は内気で前に出る事のないけど、困った人を見ると放っておけずにグイグイ行ってしまうギャップのあるとても優しい女の子。

男女隔たりなく世話をする事からちっこいお姉ちゃんと親しみを込めて揶揄っている同級生の男の子達。

有宇くんの事も少しは同級生とも関わった方がいいよ?と心配されていて、文化祭の時主演を務めると聞いた時驚いていたが、同時にホッとしていたを思い出す。

きっと少しずつ関わりを持とうとする有宇くんの姿を見て嬉しかったのだろう。

聞けば、中学3年生の時から知っているようだ。


「葵さんも、瑠璃さんもよろしくね?楽しい合宿にしようね?」


「うん!よろしくね京ちゃん!」


「……よろしく、京」


2人は面影が似ていて、なんだか姉妹に見える。

性格や容姿は全然似てない。

世話好きな妹と、自分の事を任せっきりな姉みたいな関係だ。

良く提出物を出すのを忘れる瑠璃ちゃんをフォローする所を見ている所為なのかも……何で持ってきてるのに出すの忘れちゃうんですか?ってよく突っ込まれてたな。


あと物凄く可愛いもの好きだ。

人形とか家にある小物とかとても可愛らしい物で溢れている。

以前、アクセサリーや可愛い小物とか使わないの?と聞いた事があったのだけど……


『……えっとね?ほら、私は似合わないから……こうやって可愛い物を眺めてる方がいいんだぁ』


と言われた事がある。そんな事ないのにな……

そんな彼女が可愛い女の子が好きなのは当然なわけで。

お人形さんみたいに新雪のような綺麗肌と無表情だけど可愛らしい瑠璃ちゃんをいつも愛でてる。


今もその真っ最中だ。


「今日も可愛いなぁ……あれ?いつもと何か違うような?」


瑠璃ちゃんの異変に気がつく……なんだろ?


「あ、髪止めてるからだ」


サイドを後ろに蝶々のリボンのついたゴムで纏めていた。

キラキラの飾りがついたヘアピンで左右を固定しているから崩れないようになってる。

表情がいつもより見えるおかげか、物静かな雰囲気から少し明るい雰囲気になっている。

綺麗から可愛いに、美女から美少女になった感じだ。


「……これ付けてる時は運がいいから」


ぐっと拳を胸の前で握りながら闘志を燃やす瑠璃ちゃん。


「これで有宇と同じ班にっ!」


たしかに同じ班になれたら嬉しいけど、くじ引きだしそんな上手くいくかなー?と思っていたけど……



◇◆◆◇


「なっちゃったよ……」


「ん?何の話だ?」


口をぽかんと開けている葵に首を傾げる。

俺と秀が座る席のグループには既に6人集まっていた。

男女の部屋班4人の計8人で班は構成される。

男は俺、室井 秀、赤井一、三ツ矢駿の4人。


きっかけは単純で、秀と組んでた俺が三ツ矢を引き連れた赤井に誘われた……というわけだ。


一方、女子のメンバーは石川葵、朝日奈ひかり、佐伯瑠璃、相澤京の4人だ。

全く関わりのない人がいないのは楽でいい。


このメンバーなら変な事は起こらないだろうと思った矢先……


「っち……女もかよ」


「こらこら、そういう事言わない」


グループから少し離れ、窓辺に背中を預けている三ツ矢は眉間に皺を寄せたまま舌打ちをする。

黒髪のオールバックに、高身長、顔も整っているのだが、それが無視されるぐらいに無愛想の表情をしている。

そういえば三ツ矢が誰かと話しているとこ見た事ないな。

そして不良っぽくはあるが、そんな嫌らしい感じがしないのも不思議だ。


「有宇……お前も大概あんな感じだからな?」


「……うっせ、まぁいいや。これからよろしくな、三ツ矢」


ファーストコンタクトを試みる。

警戒を解くためにまずは握手から。

手を差し伸ばすと、俺の顔と手を交互に見てくる。

まるでどういう意味か分からないようだ。


「……有宇はこれからよろしくって握手しようとしてる…………私は有宇ならいつでも大歓迎」


自然に心を読んだ瑠璃が三ツ矢に説明する。


「っふ……なんだよ。それならさっさと言えよ……だがな!お断りだ!」


やれやれと肩を落としたと思えば、バッと指を指して拒否する三ツ矢。

若干表情がピクピクしているが何でだ?


「そういうのはな!もっと段階があるんだよ!」


「お、おう……んで、段階ってなんだよ?」


段階ってなんだ?恋するABC?


「そ、それは……アレだよ!アレ!わかんだろ?」


「いや、分かんねえよ……」


そう答えると何故か悔しそうに口を紡ぐ。

若干涙目だし。何がダメだったんだ?


「……分かる。まずは簡単な挨拶からでしょ?…………有宇の手を握るのは代わりに私がやっといてあげる」


「おお?……女の癖に分かってんじゃねぇか」


「……まぁね?有宇の事ならなんでも知ってる」


「おい、なんでこいつら話噛み合ってんだよ。簡単な挨拶ってなんだよ。握手は簡単じゃないのか?」


「……肌が重なるとドキドキする。恥ずかしがり屋さんとか人見知りの人には難しい……まずは声かけからだよ…………今私もドキドキしてる」


三ツ矢と握手するはずが、佐伯さんと手を握っている。

手を離そうともにぎにぎと楽しむように握ってくる感触と腕を抱かれてしまっていて離せない。


「ちょ……離してもらえませんかね、佐伯さん?緊張してるなら三ツ矢みたいに繋がなきゃいいし」


「いや」


いつもにはないぐらい即答する。


「嫌だって、子供じゃねぇだからさ?」


「いやなものはいや…………名前で呼んでくれるなら考える」


ごにょごにょと俯き加減に話すからよく聞こえない。


「あ?……悪い。なんつった?小さくてよく聞こえなかった」


「……瑠璃って呼んでって言った…………だめ?」


上目遣いにお願いしてくる。

絡めた腕にさらに密着する。

鼓動が混じり合うって境界線が薄れていくような危なげな視線と抱擁。


「おぅ…………動くなよ?」


視線を合わせたまま俺はどんどん顔を近づける。

鼻と鼻がくっつくような距離の2人。


「ああ……有宇、いいよ?」


「うぇ!?ゆ、有宇くん!?……あ、あわわ!?る、瑠璃ちゃんまでいいよって!?」


それに目が離せなくなっている周囲の中で1番パニックを起こしているのは葵だ。

このままじゃ……まるで2人はそのまま……


「…………うん、やっぱり体調崩してんな。道理でくっ付いてくるわけだ」


おでこをくっつけて体温を測る。

やはり熱い。

てか触れたらさらに熱くなったな……


「「え……その為だったの?」」


素っ頓狂な声をあげる佐伯さんと葵。


「あ?……まぁ、引っ付いたり、瞳潤んでたりしたからな。紅葉も風邪じゃなくても具合悪くなるとこうなるんだよ。見分けるならおでこが手っ取り早いかなって。いつも紅葉にしてるしな。紅葉に」


「有宇?なんで二回も繰り返したんすかね?」


勿論重要な事だから。ほら、色んな女に気安くやってると思われたくなかったから。


「……私は紅葉ちゃんと同レベル…………ん?ならいいのかな。ちょっと嬉しい?」


頭をくらくらさせてる佐伯さん。

ニヤニヤと見ていた秀と朝日奈さんは呆れた顔。

相澤と三ツ矢は熟した林檎みたいに顔を真っ赤にさせていた。

葵も顔を赤くしていたが、なんでホッとしてるんだ?


楽だと言ったのは前言撤回しなければならないかもしれない。

そう思い直したのであった。

もし口に出していたら、その元凶はお前だよ!?と誰しもが突っ込んでいたかもしれない。


話し合いは続き、本題のスキー体験の話になる。

経験者と未経験者で組んで教え合おうという事になった。

経験者は男子は、俺と赤井。女子は瑠璃とひかりだった。


「わたし、全然できないよ?」


相澤京がおずおずと手をあげる。

「じゃあ私が教えてあげるよ!勿論あおもね!」


朝日奈さんが任せてよ!と2人の肩を抱く。

……男らしいな。


「え?……女子は女子同士で教え合うんすか?旅行だよ?青春だよ?ナンデ?え?」


秀はぽかんと口を開けたまま。

そんな女子と滑りたかったか?


「え?駄目なの?」


「男同士の方が色々やり易さはあるしな。俺がおもち……指導してやるからさ」


「おい、今オモチャって言いかけたろ!……旅行だぜ?青春だろ!?男女でやらずして何が青春だ!」


秀はまるで演説するように高らかに立ち上がり力説する。

まぁ確かに、男女ペアでイチャコラスキーは定番中の定番だろう。


「考えてみてくれ。青春は一度きりだ。俺達は卒業して、学生時代を思い出す時にそこに甘い一時があったっていいじゃないか!いや!あってほしいです!お願いします!!」


「必死すぎだろ……」


「あはは……でも、一理あるかも」


宣言が懇願に変わっている辺り、相当男女で思い出を作る事を楽しみにしていたようだ。

もはや執念だろう。

苦笑いする俺と葵。

これはこっちが折れるしかないと思った矢先。


「い、いやだよ……絶対に嫌」


「な、なんで?」


「そんな事言ってヘンな事するだけでしょ?」


じろっと秀を睨むのは控えめな胸に手を当てて怯えるように身を縮ませるのは京。

秀のスキンシップは男女隔てない。

なのに、浮ついた話が出ないのは何故か?

隔てないと言うか、差がないからだ。

だから、女子とはいいとこ行っても友達止まり。

そういうノリが嫌いな京のような子は警戒してしまう。

日頃の行いが完全に仇になっていた。南無三。


「っな……有宇!?」


言葉が出ない秀は俺の脇を小突いてフォローを求めてくる。

……仕方ないな。


「京、安心しろ。こいつのリスク管理は相当だ。一線を超えられないヘタレだからな」


「ほ、ほんとに?」


安心させる為に頭を撫でると、恐る恐る見上げてくる。


「ああ、それに未経験者だろ?秀と組む事はないよ」


「そっか……ゆうくんがそう言うなら……」


しばらく撫で続けると、身体の緊張が解けて、元気を取り戻す。


「私も賛成するよ!」


すぱっと手を挙げる姿は小動物のよう。


朝日奈さんは物珍しそうに俺の方を見つめていた。

視線を受けて、首を傾げていると、


「なんか、こう……女の子と交友あるあおっちって珍しいなぁーって」


「珍しいって……確かに女は苦手ではあるけどな。こいつには昔世話になったからな」


事情があって転校しなければならなかった中学3年。

中途半端な時期や容姿から随分注目されたし、声もかけられた。

単純な好奇心や下心、ナワバリ意識様々だ。

その頃は極度の人間不信に陥っていたから全て跳ね除けた。

敵意も悪意も好意も善意も何もかも。

そんな事を続けていれば孤立するのは当然だったはずで俺自身もそれを望んでいた筈だったのだが……


目の前にいる少女がそれを許さなかった。

事あるごとに話しかけてきた。

困っている事はないですか?

悩み事はないですか?

趣味は?

休日はどう過ごしてるんですか?

読書が好きなの!

これ面白かったんだ!是非読んでみて?

いつもはおどおどしているのに、何故か世話を焼く時だけはハキハキしていた彼女。


最近は俺に何か話させようとしていたが、次第に自分の事を話していた。


心を開いて貰うにはまずは自分が心を開かなきゃね!


そして俺が負けたというわけだ。

決定打があったわけじゃない、根負けしたのだ。



「捻くれてた時に曲げずに声をかけ続けてくれたからな……少しぐらい特別に見ても仕方ないだろ?」


「なるほど……みゃーの曲げないお世話力はあおっちが鍛え上げたようなもんだね!」


「……他人には冷たいけど、身内には凄い甘い。それが有宇」


「むむっ」


朝日奈さんは気苦労を簡単に想像できたのか京を労うような表情をしている。

佐伯さんは自分の事のように自慢げに胸を張る。

……別にそんなんじゃねぇし。誰だって身内には甘いだろ?俺だけ?

あと視界の隅で葵が頬を染めて膨らんでるけどなんでだ?


「……つっこまないぞ。つっこまないからな!……」


涙目で睨んでくる秀は無視する。

事実だし、あれぐらいしかフォローできないっつーの。


「……私も有宇と滑りたい」


「まぁ、折角だし、俺も女子と組んでみたいよね。秀のいう青春ってのを感じてみたいかな」


ここで強力な助っ人。イケメンの赤井。

爽やかな風が吹く。


「たしかに、楽しそうだしね!あおは?」


朝日奈さんと葵も賛成と手を挙げる。


「三ツ矢もそれでいい?」


赤井が聞いたその時だった。


「ふん!冗談じゃねぇよ」


今まで腕を組んで瞑目していた瞳がギロリと光る。

その所為で京なんて、恐怖で携帯のバイブレーションみたいになってる。


「……待って」


勢いよく立ち上がる三ツ矢を佐伯さんが引き止める。


「なっななな何すんだ!?は、離せ!」


「……そんな訳にはいかない」


腕に引っ付く佐伯さんを乱暴に引き離そうとするが一向に抜ける気配がない。

徐々に三ツ矢の顔が真っ赤になっている。

あれは怒っているというよりは……


「……三ツ矢くんも同じ班。話し合って決めた方がいい。そんなに嫌なら秀と組ませるから落ち着いて」


大きな体格の三ツ矢に負けじとしがみ付く……結果、身体が密着していく。


「……じゃないときっと有宇は貴方と組むからそうはさせない」


聞こえるか聞こえないかの声。

建前に隠された本音だった。


まるで抱きつくようにも見える2人。


「っち……」


「ちょ!い、いいから!……わ、分かったから!、いい加減、は、離せってば!!」


佐伯さんに腕を引かれながら、渋々席に座りなおす。

意外と押しに弱いらしい。

耳まで真っ赤にしてる。


「じゃあ、どうしよっか?男なら俺か蒼井なんだけど?」


「……べつに……でいい」


「あ?」


「べつに佐伯とやってやってもいいって言ったんだよ!馬鹿!」


「……え?ちょ……」


感情の起伏が少ない佐伯さんも目を開く。

久しぶりにそんな驚いた顔見た。

こいつ…………でいいとはアレだが思った以上に子供で馬鹿かもしれない。

ツンデレだなこれは……頬を染めている姿で確定した。


「佐伯もそれでいいかな?……午後は好きに入れ替えてもいいからさ?保護者みたいな感じで1つお願いできない?」


赤井は三ツ矢に気を使って、聞こえないようにトーンを下げる。


「……ぬぬぬ。ここに来て、まさかの伏兵……まぁいい。徹底的に鍛えてあげる。根性も」


ぼぉっと背後から炎を燃やしているように見える。

完全にやる気の時の佐伯さんだ。


佐伯、三ツ矢ペア。


「朝日奈さん!俺と滑ってくれ!」


「お、いいよ!でも、ヘンな事したらあおっちに言いつけるからね☆よろしくね!あおっち!」


「ああ、任せろ!雪の中に埋めてやる!」


「アンタ!なんでそんな生き生きしてるんすかね!?しないってば!単純に青春を謳歌したいんだよ〜!」


声をあげる秀にどっと笑いが起きる。

妙に嬉しがってたな……いや、いつも通りか?


朝日奈、室井ペア。


「相澤、良かったら、一緒に滑らない?」


赤井がにっこりと笑って、小柄な少女に問う。


「わ、私が?……い、いいよ?」


「やった!よろしくね」


嬉しそうにさっと握手を求める赤井。

その爽やかさはまるで王子様。

白馬に乗って迎えに来ないかな?


相澤、赤井ペア。


すらすらと紙にペンを滑らせる赤井と視線が合う。

そしてくすっと笑った彼。


「じゃあ、蒼井石川ペアだね。2人とも大丈夫?」


「お、おう」


「だ、大丈夫だよ!」


俺達は声を合わせる。

ニヤニヤと揶揄いの笑みを浮かべている朝日奈さんと秀。

顔が熱くなる感触から逃れる為にそっと視線を葵に逸らすと、照れた様子で覗いていた。


顔が赤くなってるのが自分だけではない。

そう思うと、自然と強張りが溶けていき、お互いクスッと笑みを浮かべていた。


「…………」


前から無言の視線を感じる。

揶揄い、嫉妬、羨望、興味津々な視線。

誰がどの感情なのかは一目瞭然だ。

朝日奈さんと秀はさっき以上に口角を歪ませている。

京は顔を少し染めて、瞳を輝かしている。

赤井もへぇーとこちらを見つめていた。

三ツ矢は腕を組んで瞑目していて興味ない……ふりをしながら、時折チラチラとこちらを見る。



「……ま、まぁ、よろしくな、葵」


恥ずかしさ隠しにポンと頭に手を置く。

少し触れすぎたかなと反省する。

そういえば、俺の事昔は怖がっていたからな……


しかし、それは杞憂で葵は頭に置かれた俺の手を両手で包み込むように合わせる。


「うん……よろしくね、有宇くん」


にこやかに笑う姿は一輪の花が咲いたかのよう。

これからの事に思いを馳せるような笑顔は、嬉しそうで楽しそうで、喜びに満ちている。


そんな笑顔を見て俺も……


「安心するな……葵の笑顔は」


「え?……何か言った?」


「いや、なんでもないよ」


先走った言葉をかき消すようにポンポンと少し乱暴に撫でて、手を離す。


「わあぁ!くしゃくしゃになっちゃったよ〜」


くしゃくしゃになった髪を梳かすように撫でる。


聞かれていなくて良かった。

……きっと勘違いさせてしまうから。

それは葵にも俺自身もだ。

これは友情から来る親愛だ。

そうであってほしい。

そうでなければ……


佐伯さんの悲しそうな視線を感じる。

そんな顔をするのは俺の心が読めてしまうから。

感情と、視線を無視してスキー合宿に思いを馳せる。


面倒臭がっていた交友もまずは班の皆と深めて広がっていきたい……


残ったのは、純粋な願いだった。


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