まずは友として、会いに行け
大坂城下の黒田邸。
官兵衛は、目の前に座る清正と正則、長政を見つめる。
「……で、決まったんか?」
最初に口を開いたのは、清正だった。
「……戻って来て欲しいって、言いに行きます。」
官兵衛、すかさずデコピン。
「痛ぁぁ!」
「阿呆!それをお前らが言う資格ある思うてんのか?」
却下された。
「徳川殿に怒られたやろ。何聞いてたんや!」
実は清正たち。
官兵衛と幽斎に怒られた次の日、家康に呼び出された。
『怒るのは分かる。腹立っていたのも分かる。だけど、順番違うだろ!段階踏みなさい!なんで相談してくれなかったんだ!?』と怒られていた。
「頭を、下げて来ようかと。」
正則がポツリと呟く。
「……公儀の話は……。」
「せえへん。」
「よし。長政、お前は?」
「少し、間空けてから行こうかと。」
「うん、それがええ。一気に押しかけたら、佐吉も嫌がって出てこうへんわ。」
官兵衛は懐から煙管を取り出し、火を入れた。
「……佐吉、怒っとるやろうなぁ。」
「アイツ、怒ると長いん。」
清正と正則は肩を落とす。
「いや、もう怒ってへんと思うぞ。」
官兵衛は煙を吐き出しながら呟く。
「ええ〜?」
「怒り通り越して、どうでも良くなってると思う。」
「それ、あかんやつ……。」
「先に手ぇ出したん誰や?」
3人とも、黙ってしまう。
「まぁ、来たら来たで、茶ぁぐらいは出すやろ。
アイツは、わざわざ自分を訪ねて来た客人を無碍にはせん。そうやろ?」
官兵衛の問いに、清正と正則はゆっくり頷く。
「まぁ、手土産は持っていきや。」
「ほんなら、酒……」
正則がそう呟いた瞬間、官兵衛のデコピンが炸裂する。
「痛ぁぁっっ!!」
「お前が呑みたいだけやろ!」
「呑まへん!」
「呑む!!菓子にせえ!」
「……分かった。」
「よし。」
官兵衛は満足気に笑う。
「ところで……忠興と嘉明はどないしたんや?」
「忠興はお父上の幽斎様から屋敷に閉じ込められてる。」
「ん?」
「佐和山に行こうとして、止められたらしい。」
「……ああ。そりゃ、幽斎殿が正しいわ。」
「……そんなに?」
「忠興が余計な事言うて、余計拗らせるのが目に見える。」
信用ないな。
「んで、嘉明は?」
「嘉明は、大坂城で御用や。落ち着いたら、行く言うてた。」
「……そうか。」
官兵衛はタバコ盆に灰を落とした。
「ええか?先ずは、友として佐吉に会うてこい。」
「「はい。」」
「頭下げて来るのはかまへん。
茶ぁ飲んで一緒に菓子食べるのも、かまへん。」
一拍。
「やけどな。"戻って来て欲しい"は絶対に言うな、公儀の話もするな。
今のお前らに、言う資格はないぞ。」
3人は黙ってしまった。
「……返事。」
「「「………。」」」
「返事ぃぃぃ!!」
「「「はいっ!!」」」
「よし!」




