福島正則、長浜へ
読者の皆様。
本編を読んでいて、こう思わなかっただろうか。
「福島正則って広島じゃないの?」
「なんで長浜なん?」
これは、作者も思った。
だがな、この世界線――関ヶ原が発生しなかった。
つまり、毛利家は大減封になっていない。広島もそのまま毛利領である。
なので、福島正則を広島へ配置する理由が無い。
「じゃあ、なんで長浜なん?」と思ったそこのお前。
作者は考えた。真面目に考えた。
そして――『徳川家康なら、こうするんちゃうか?』という結論に至った。
それが…これだぁ……。
ワン、トゥー、スリー……!
◇
江戸城。
家康は各大名らの査定を行っていた。
「上杉は会津から越後へ。」
家康の言葉に、幕閣たちは顔を上げた。
「越後ですか?」
「不安分子は遠ざける。じゃが……恩は売っておきたい。」
正信はニヤリと笑う。
「上杉にとっては、越後は故郷。
会津は預けられた地にございまする。」
「上杉は越後帰還を悲願としていた。だからこそ……。」
知らせを受けた上杉さんは家中領民、全員大喜びしたそうです。
それから順調に査定は進んでいく。
「次、福島正則。」
僅かに空気が揺れる。
「近江・長浜へ。」
家康は淡々と答えた。
「あやつにとって、長浜は故郷であろう。」
「ふむ。」
「他に誰が適任がおる?」
「……確かに。」
幕閣たち、納得しかけている。
「それだけにございますか?」
正信だけ、違う所を見ていた。
「……石田治部が佐和山におる。」
「……あ。」
「三成が近くにおれば、あやつも無茶はせぬであろう。無茶する前に、三成が止める。」
ようやく腑に落ちた。
「つまり……治部殿に正則の手綱握ってろ、ということですな。」
「うむ。」
正信、少し考えて顔を上げる。
「丸投げでは?」
「丸投げじゃ。」
家康は即答した。
「あやつの世話を出来る者、他に誰がおる?」
誰も思い付かなかった。
しばらく沈黙が続き、やがて、正信がぽつりと呟いた。
「確かに。」
全員頷いた。
福島正則。
幕府から完全に猛獣扱いされており、石田三成はその飼い主と認識されていたのである。
なお、本人たちは知らない。
※因みに、正則の人物解釈は以下の通り
・三成→言うこと聞く猪
・うた→全力で尻尾振ってる大型犬
・重家たち三成の息子たち→父上が可哀想って理由で餌付けしたら、勝手に住み着いた猪
・左近たち石田家臣の皆さん→帰巣本能が異常に優れた珍獣
・福島家中の皆様→躾された猪
誰一人として、人間扱いしていない……。
そして、長浜へ国替となった正則は……。
「佐吉ぃー!長浜の米、持って来たでぇ!」
「倉に持ってって。」
月の半分は佐和山に入り浸っていた。
完全に、"独立したのに職場に近いから、という理由で実家にバンバン帰って来ている息子"状態だ。
余りにも自然なので、石田家臣たちは正則がやって来ると、「お帰りなさい。」と言っているぐらいだ。
「何書いとるんや?」
「紀之介から文貰ったから、返事。」
「アイツ、生きとったんか。」
「お前も文出したれ、喜ぶで。」
「じゃあ、紙と筆貸して〜!」
三成は、律儀に用意してやる。
「……なんて書こうか。」
「長浜に国替えなったって書け。」
正則は素直に筆を進める。
そして、正則から手紙をもらった大谷吉継さんは、『市松から文来た!アイツそんなマメな奴ちゃうのに!』と大変驚いたそうな……。
あれ?長浜は?
息子の忠勝と甥で養子の正之、福島家臣たちが回しているので、安心して下さい。
なお、正之は早々に諦めた。
『それが、これだぁ……!ワン、トゥー、スリー…』分かった方、作者と同世代です笑




