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大坂城再建。お前らは帰れ

大坂城再建工事が完了した。


元和元年の落雷による火災から九年。


幕府の威信を掛けた大工事は、ついに終わりを迎えたのである。


完成した大坂城を見上げながら、松平忠明は静かに息を吐いた。


「終わった……。」


長かった。


本当に長かった。


予算で揉め、石垣で揉め、縄張りで揉め、天守で揉め……。


「予算。」


「天守。」


「予算。」


「天守。」


という不毛な争いを何度見たか分からない。


だが、それも今日で終わりである。


「ご苦労であったな。」


振り返ると、秀頼と茶々が立っていた。


「これは、淀の方様。」


忠明は深々と頭を下げる。


「ようここまで出来ましたなぁ。」


茶々は完成した城を見上げた。


「ほぉ〜。」


一言。


そして反対側へ移動。


「ほぉ〜。」


もう一言。


更に移動。


「ほぉ〜。」


また一言。


忠明は少し不安になった。


大丈夫だろうか……。

気に入らなかっただろうか。


そんな心配をしていると……。


「うむ。」


茶々は満足そうに頷いた。


「見事やなぁ。」


忠明は胸を撫で下ろした。


「高台院様にもお見せしたかったな〜。」


茶々がぽつりと呟く。


「申し訳ございませぬ。」


「ふふ、松平様が謝ることやないでしょ。」


高台院は近頃足を悪くしている。

流石に京から大坂までの移動は見送られた。


「まぁ、帰ったら話して聞かせるし。」


「きっと喜ばれましょう。」


秀頼も頷き、城を見上げる。


「豊臣家の遺構は殆ど残っておりませぬが……。」


少しだけ寂しそうに笑った。


「これも新しき世の城なのでしょう。」


「せやなぁ。」


茶々も頷く。


未練がないわけではない。

だが、恨みも執着もなかった。


時代は変われば、城も変わる。それだけの話である。


しばらく城を眺めた後、茶々は踵を返した。


「さて。」


「はい?」


忠明は首を傾げる。


「帰るか。」


「はい。」


秀頼も即答した。


「お千が待っております。」


「そうやね。」


忠明は思わず固まった。


九年……九年掛かったのである。


その城を、二人は一周しただけで帰ろうとしている。


「……あの。」


「ん?」


「もう少しご覧になられなくて宜しいので?」


忠明が恐る恐る聞くと、茶々は不思議そうな顔をした。


「もう見たで?」


「見ました。」


秀頼も頷く。


「そう……ですか。」


「うん。」


茶々は笑った。


「ええ城やった。」


それだけで十分だった。

こうして二人は京へ帰っていった。


そして、その日の夕方。


天守を見上げながら。


「ええなぁ……。」


「ええ。」


「実にええ。」


「うむ。」


加藤清正、藤堂高虎、池田輝政、黒田長政。


城オタク軍団は、まだ残っていた。


忠明は遠い目をした。


「もう帰れ。」


誰も聞いていなかった。

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