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兵站奉行だって、酒に飲まれたい

家康は侍女に命じて、酒と膳を用意させた。


「ほれ、呑め。」


「はっ。」


呑み始めて数刻。


三成は愚痴り始めた。


「正則は阿呆です。どうしようもない阿呆です。」


「うむ。」


家康は静かに酒を注いでやる。


「やけど、領地における統治は本物なんですよ。」


「分かるぞ。」


「治水工事に力注いで……百姓らの事を誰よりも考えてます。」


「よう見ておるな。」


「目ぇ離した瞬間、勝手しよるんで。

……後の処理、全部こっちやっちゅうねん。」


三成は、一気に酒をあおる。


「清正は馬鹿。でも、城造らせたら天下一です。」


「うむ。」


「嘉明は水軍衆として、よう纏めとるし。

長政も……流石は官兵衛様の息子やなって思うし……。」


はぁ……と溜め息が漏れる。

頬がほんの少し赤い。

酔ってるようだ。


そりゃ、命のやり取りをした後だ。

酔わないとやっていけないだろう。


「前田の叔父貴が言うてたんです。

少しは人を頼れ、豊臣家の為やって……。」


「そうか。」


「やのに……。人が決心した瞬間に、これかいな……。」


ガックリと肩を落とす。


「……治部殿。実はな……。儂も利家公の見舞いに訪れた際、利家公から頼まれた。」


三成はゆっくりと顔を上げる。


「豊臣の息子どもは、声の大きい馬鹿ばっかだと。

だから、喧嘩になった際は間に立ってやってほしい。

止める大人があの馬鹿どもには必要だと。」


少し間を空けて、続ける。


「もし、三成が頼ってきたら……その時は少しだけでも良いので、手を貸してやってくれと……。」


三成の目からパタリと涙が落ちた。


「利家公は、最期まで其方らを案じておったぞ。」


「そうですか……。はぁ……叔父貴がここまで気ぃ使ってくれたのに。

叔父貴に会わす顔あらへんわ。」


「……なぁ、治部殿。」


「……はい。」


「少し、休んだらどうじゃ?

此度の件は……儂の方でなんとかしよう。」


三成、少し考える。


「……せやな。」


顔を上げる。


「もう知らんわ。なんで全部俺やねん。

アイツら俺のことあちこちであーだこーだ言うて回ってるけど……。

その後ろで俺がどんだけ頭下げてきた思うてんねん。」


三成、止まらない。


「豊臣家とか、天下とか……もう知らん!

そんなに俺が邪魔なら、お望み通り退いたるがな!

あとはやりたい奴がやったらええねん!」


家康、ポカンとするが直ぐに気を取り直す。


「なれど……北政所様と淀の方の耳には入れておいた方が良かろうな。」


「明日、文を出します。」


そして、翌朝。


二日酔いで響く頭を押さえながら、三成は寧々と茶々へ文をしたためた。


そして、二人からは割と早くに返事が。


『もう休みなさい。みんな、困ったらええねん。

そんぐらいせな分からんで。』


要約すると、そう書かれてあった。


「……では、佐和山へ戻ります。」


「うむ。」


豊臣家の母たる北政所寧々と、秀頼生母の淀の方より許しを得た三成は、さっさと佐和山へ引き上げた。


この時、大坂城の誰もが数日で戻って来ると思っていた。


ただ一人……本人を除いて。

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