一年悩んだ結果……
暫く四人で雑草を抜いていると……
「父上〜!おっちゃ〜ん!飯やで〜!」
畑の向こうから、大きな声が響く。
重家だった。
両手に籠と鍋を抱えながら、こちらへのんびりと歩いて来る。
「おう。」
「おっ、重家や。」
三成と正則が手を止める。
そして重家は――
「あれ?」
長政と嘉明を見つけた。
「松寿の兄ちゃんと孫六の兄ちゃんやん!」
「……重家か!?」
長政が目を丸くする。
「うわっ!」
嘉明も驚いた。
「大きなったなぁ!」
「この間まで、こんなんやったのに!」
嘉明は腰の辺りに手をやると、重家は呆れた顔をした。
「それ、十年以上前や。」
「そうやったっけ?」
「そうや。」
「時の流れって怖いなぁ。」
「怖いなぁ。」
長政と嘉明はしみじみ頷く。
重家は二人の顔を見比べた。
「で?」
「ん?」
「何しに来たん?」
長政と嘉明は固まった。
「……。」
「……。」
重家は首を傾げる。
「手伝いに来てくれたん?」
「……ちゃう。」
長政が目を逸らす。
「成り行きで……。」
嘉明も目を逸らす。
「ふーん。」
重家は納得したような、してないような顔をした。
そして、なにか閃いたらしい。
「じゃあ、茶ぁしに来たん?」
「「ちゃう!!」」
見事に声が揃い、重家はびくっと肩を震わせる。
「何で怒るん!?」
「怒ってへん!」
「怒ってへんわ!」
「怒っとるやん!」
重家は三成の後ろへ隠れた。
三成は呆れたように二人を見る。
「お前らなぁ……。」
「「……。」」
「ウチの倅、虐めんな。」
「「虐めてへん!」」
今度は三成と正則が吹き出した。
重家が持って来た籠の蓋を開ける。
中には握り飯と漬物、そして鍋には味噌汁が入っていた。
「おっ、今日は猪汁や。」
正則が嬉しそうに声を上げる。
「昨日の残りや。」
三成は手を洗いながら答えた。
「なんや、また出たんか?」
「一昨日、罠に掛かってたんや。」
「ふ〜ん……まぁ、残りでも十分や。」
「せやな。」
全員、その場に腰を下ろす。
「ほれ。」
三成は長政と嘉明に握り飯を差し出した。
「早よ食え。」
「……ああ。」
「おおきに。」
二人は受け取るが、食事どころではない。
長政と嘉明は小声で話し始めた。
「なぁ。」
「何や。」
「いつ頭下げる。」
「……。」
嘉明は真剣に考えた。
「今ではないと思う。」
「俺もそう思う。」
「飯時やしな。」
「せやな。」
二人は頷き合った。
そして、その横で……。
「うん。」
三成は味噌汁を啜る。
「この味噌、よう出来とるな。」
「この前仕込んだやつや。」
正則も普通に食べていた。
「ほう。」
「ちょっと塩多かったかな思うてたんやけど。」
「気にならん。」
「ならええわ。」
完全に普通だった。
長政はその様子を見て困惑する。
(怒っとらん……。)
嘉明も困惑する。
(怒っとらんなぁ……。)
すると三成が顔を上げた。
「何や。」
「いや。」
「何でもない。」
「そうか。」
三成は再び味噌汁を啜る。
「ほら。」
「ん?」
「早よ食え。」
長政と嘉明を見る。
「疲れたやろ。」
二人は固まった。
一年。本当に一年。どう謝ろうか悩み続けた。
なのに……。
「冷めるで。」
三成はそう言って握り飯を差し出した。
長政と嘉明は顔を見合わせる。
そして、同時に思った。
(俺ら、この一年何しとったんやろ。)
本日、二度目である。




