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元アラフォーが皇女に転生?!元暗殺者の少年を拾ったので育てます!  作者: 桜月ふたば
第一章

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EP8.  助けた少年に殺されかけた話


「皇女様! もっと背筋を伸ばして! 流れるように~」

「は、はい!」

ピアノと先生の手を叩く音に合わせて、靴の音がフロアに響く。


「ハァハァ……」

「少し休憩しましょうか」


パパを見送った後、私は午前中の授業をしていた。

先生から休憩の合図があり、近くの椅子に腰を掛ける。


―社交ダンスって、こんなに難しいのね……―


「以前、出来ていた箇所が出来てませんね……。

今日はこれにて終わりましょう」

「はい。ありがとうございました」


この器に入ってからというもの、授業についていけない日々が続いていた。

「はぁ~……。魔法の授業だけしか、出来てないなんて……」


―記憶が全くない状態は、かなり厳しいよ……―

帰りの廊下で深いため息をつきながら、部屋に戻った。


午後は、机の上に積まれている書類に目を通す。


『参加させたい者の名前に、印を付けてください』

メイドにそう言われたこの書類は、茶会の参加者候補のリストだ。


名前、家柄、その子供が好きな物……。


私はこのリストから、気になる2人を見つけていた。

家柄ではなく、日本を感じる単語が書いてあったからだ。

ワクワクしながら、そのリストにある2人に大きく印を付ける。


「承知しました」

メイドにリストを渡し終わる頃には、もう窓の外はオレンジ色に変わっていた。


「結局、昨日の夜は少年の所へ行けなかったな……」


その日の夜。


「今日も、よろしくね」

「はぁい。今日も寝るだけでいいんでしょ?」

呼び出した直後から、もう影武者は欠伸を出している。

「うん、眠るだけだよ」

「このベッドふかふかで良いんだよねぇ~じゃあ、おやすみ~」


手をひらひらさせた影武者は、そのままベッドへ潜っていった


「ふぅ……早く行かなくちゃ」

呼吸を整え、大人の姿に変わると少年の居る家へ転移を開始した。


目を開くと、家の扉が見える。後ろを見渡すと、一面森の中だった。

夜の肌寒い風に、木々の葉が揺れる音と鳥の鳴き声が遠くから聞こえてくる。

「改めてみると、ここは静かね。落ち着くわ」

慌ただしい城の中の音とは違う。

静かな夜の森の音をしばらく聞いていた。


ガチャッ


家の中に入ると、人の気配がない。

「こんばんは~」

「……」


―あれ? 寝ているかな?-


少年がいた部屋へ進み、扉を静かに開けた。


ヒュンッ! トスッ


「ひっ……?! 」


私の顔の横に、果物ナイフが横切る。


「来るな!!」


目の前に、刃物をもった少年がこちらを睨んで立っていた。

黒髪に、赤い瞳。


「お前……! 誰なんだ!! 近づいたら殺す! 」

数日前まで瀕死だったとは思えないくらいの威勢に、私は驚いていた。

よく見ると、突き出されたナイフの先は揺らいでいる。


「落ち着いて! 私は君を助けた者だよ。置き手紙見てなかった? 」

「なぜ俺を助けた……お前に何の得がある!ないだろうが!」


「別に損得で考えてない。体が勝手に動いただけよ」

「嘘をつくな! 俺は……信じない! 」

少年は大きく首を振る。

「どうせ売り飛ばすか、奴隷にしようと思ったんだろ!」


―ダメだ……何を言っても信じてくれない……―


「何があったか知らないけどさ……。

その、ぶっそうな物向けないでくれる?」


私が手をかざすと、少年が持っていたナイフが光る。

鉄の部分は、グニャッと曲がり花に変わった。


「は? ……お前。魔女なのか……? 」

「いや、ただの平民だよ」


少年の後ろにあるテーブルに目を向けると

食べ物はそのまま残った状態だった。


―この警戒している様子じゃ、そりゃ食べないよね……―


「何も食べてないようだし、今から料理作るから食べてよ」

「誰がお前の作ったものなんて食べるか!」


「それに私にも一応名前はあるの。

私は、サーシャ。あなたの名前は?」


「……言いたくない」

「うーん……坊やっていうから、いいか」

「は? なんか腹立つ!!」


「じゃあ料理するけど食べる?」


グゥ~~~~ッ

少年のお腹の音が大きく部屋に響いた


「……食べる。お前が作ってるのを見てやる。変なもん入れんなよ?」

「分かった」


―何だろう……警戒から威嚇してくる子猫に見えてきた―


私はタブレットで調理器具と食材を注文した。


【配送完了】

通知音のあと、淡い光が机の上に光る。

フライパン。鍋。カトラリー。その他、食材が机いっぱいに広がった。


少年は、椅子から立ち上がり目を見開く。


「うあ!?なんだよ、それ!」


納品書の備考欄に目を通す。

【食材に付いている不要容器は、破棄と言いながら振ってください】

「へぇ、便利だな」


おかゆに、コンソメとネギ・卵・鮭フレークを入れ鍋にかけた。

グツグツ

鍋の音と、コンソメの優しい香りがキッチンに広がる。

リンゴを切って軽く塩漬けをしていると、少年が睨みつけてきた。


「おい、そんな食材みたことねぇぞ」

「異国の食材だからね。もうすぐ出来るよ~」


テーブルに置かれた料理を、少年はすぐ食べようとしなかった。

―うーん。どうしよう……。―


「毒入ってないよ? 作ってたの見てたよね? 」


「……」

話しかけるが、難しい顔をしたままの少年に困惑していた。

とりあえず、私はスプーンで食べ始める。

眉間にしわを寄せた少年は、私が食べている姿と自分の前にある皿を交互に見ていた。


「ん!美味しい」

私がそう言って微笑むと……。


グ、グゥ~~~


少年のお腹の音が部屋に響いた。


「俺も食べる……」

小さく呟き、静かにスプーンを手に持った姿を見て少し安心する。

恐る恐る一口食べると、口に合ったのか

どんどん食べる速度を上げている。


「おかわりできるから、ゆっくり食べて」


ケホッケホッ!!

「ほら、水飲んで」


ゴクゴグ

それから少年は3杯おかわりをしてくれた後

椅子に座り直し、真剣な顔で私に話しかけた。


「お前……俺を殺さないのか? それとも売りとばすのか? 」

「どちらもしないよ」

私は静かに首を横に振った。


―何度も確認するなんて、今までどんな境遇で生きてきたのだろう―


「今は、元気になる事だけ考えてね」


「悪かった。その……助けてくれたのに、態度悪くて。

でも、まだお前を全部信じることは……悪いが出来ない」


今まで裏切られたことがあったのだろうか?

その表情は暗く、悲しげに見えた。


「いいよ。人は簡単に信用しちゃいけないから、坊やが正しい」

「なっ! また坊やかよっ!!」


スプーンを握りしめ、頬にご飯粒つけながら怒っている少年。


ふと、タブレットの時間を見るともう深夜2時を過ぎていた。

「ごめん、帰らなくちゃ!」

「えっ、こんな遅くにか?」


少年は目を見開き驚いている。


「また来るから!またね!おやすみ坊や」

「だから、坊やっていうな!」

怒っている少年を後にして、私は急いで家を出て城へ転移した。


―最初はどうなるかと思ったけど、食べてくれて良かった―


部屋で眠っている影武者は、ベッドから落ちていて豪快なイビキが部屋に響いている。


ンゴォォオオ……


「ああ……さすがに寝相まで同じじゃないのね」

私は苦笑いをしながら、そのまま影武者を収納した。




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