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元アラフォーが皇女に転生?!元暗殺者の少年を拾ったので育てます!  作者: 桜月ふたば
第二章

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EP.59 背中の温もりと、夕日の飛行


「主。もう帰るぞ」

「あと少しだけ――」


ガサガサッと茂みに隠れる1人と一匹。

その視線の先には、クレール達が野外で授業をしている。


―ちゃんとご飯食べれてるかしら? 怪我しないでね―

食い入るように見つめている私の横で、リリーは溜息をついていた。


「弟子のことになると、主は母親のようだな」


クレールは11歳のはずなのに、周りよりも体が一回り小さい。

だが、剣を使わない体術では、先程からずっと勝ち続けている。


―もっと早く出会えてたら、一緒に遊んで

ご飯をもっと食べさせれたのにな―


ギュッと茂みの細い木々を両手に握りしめながら、クレールを見つめていた。


「この俺様に勝てる訳がない! 」

「ハァ……。早くこいよ」

気だるそうに、腰を低くして構えるクレールは溜息をついた。


「ッチ! 今、分からせてやる――」


ダッ――

「遅い」

飛び掛かった男子生徒を、クレールは素早くかわし足を掛ける。

宙を舞う男子生徒は地面に崩れ落ちた。


ドサッ!! 


「おい! 小賢しい真似をするな! 」

「お前こそ、体術中で禁止の魔力を拳に纏わせるな」

「……気づいてたのか」

男子生徒は驚いた表情を浮かべ、立ち上がれずにいた。


「……強くなりたければ、貪欲にやれ」


ザッザッ

クレールは振り返らず、その場から歩き出した。


「そこまで! 次! 」

先生の号令で、次の生徒達が中央へと入れ替わる。


「ねぇねぇ! 見た? 今、剣無しで体格差がある学生を倒したわ! 」


私が拍手をした瞬間、リリーの小さな肉球で手を押さえつけられた。

「シッ! 弟子に気づかれる! 」

「ご、ごめん」


―はしゃぎすぎちゃった―

苦笑いをして再度クレールを見ると、こちらを見ている。


―え! 気づかれた?! ―


ガサッガサッ

両手を口に当て、体を小さくしていると後ろから足音が近づいて来た。


「どこですかー―! 皇女様――! 」

それはメイドが私を探している足音と、声だった。


「主。次の授業が迫っている。帰るぞ」

「はぁい……」

髪に葉を付けながら、手元にあった本を拾い上げ

トボトボと次の授業へ向かった。



「クレールどうした? 」

駆け寄って来たゼノが一点を見つめているクレールの顔を覗き込んだ。


「いや、茂みが不自然に動いてたから気になって――」

「猫とかじゃない? それより、お前凄いな! さっきの――」


―気のせいか? ―


俺はゼノの話を半分に、首を軽く傾げながら茂みを見つめていた。


「本日の授業はここまで! 自室に戻りなさい」

先生の声が広場に響くと、生徒達は出席カードにハンコを押してもらった。

ゼノと一緒に自室へ戻る途中。建物の裏で大きな声が耳に入り、

俺達は声のする方へ進路を変えた。


「お前、調子にのるなよ? 」

「さっき、負けたからって何よ! 」

モニカが同じクラスの男子と言い争っていた


「助けるか? 」

ゼノは俺に囁いたが、首を横に振って様子を見ることにした。

―あいつも強くなる為に来たんだ。こんなことで助けても本望ではないはず―


ザッ――

「や、やめろよ! 」

ケビンがモニカの前に立ち、両手を広げ大声を出した。

その足は震えている。


「なんだ? お前。あぁ、いつも後ろにくっついてる虫男か」

笑いながら、男子生徒はケビンの額に指で弾いた。


「わぁ! 痛いよぉ……」

ケビンが俯いていると、周りに他の生徒が集まり始めた。


「ッチ! 興がそがれた。次は絶対に負けねぇからな」

男子生徒が舌打ちをして立ち去ると、ケビンはその場でへたり込み

震えている。

モニカが慌てて駆け寄り、ケビンの肩に両手を添える。


「ケビン危ないじゃない! あんな奴、私が――」

「体が勝手に動いたんだ……もう誰も傷ついて欲しくない」


―へぇ。おどおどしてるだけかと思えば、やるじゃねぇか―

俺はゼノの横腹を肘で軽く突き、自室へと足を向かわせた。



     ◆


授業が終わった私は、午後から仮初婚約者のルイスとお茶をしていた。

白い丸テーブルの上には、ルイスが街で買ったと言っていた

チョコレートケーキとレモンケーキが並べられている。


―何だろう? 元気がない気がする―


カチャッ

カップを置いた私は、まっすぐルイスを見つめた。

「ねぇ。今日どうしたの? 元気がないように見えるけど」

「? 元気ですよ? お気になさらず」

苦笑いを浮かべながらお茶に口を付けるルイス。


―うーん。まだ、普通に話す仲にはなれないか―


「そうだ! 前に言ってた魔法の訓練してみる? 」


ガタッ! 

勢いよく椅子から立ち上がったルイスは、満面の笑みを浮かべた。


「ほ、本当ですか!? はい! ぜひ! 」


その後、メイドに移動する事を伝えた私達は

2人だけで裏庭の森付近まで歩いて行った。

リリーもトコトコと後ろを付いて歩きながら、語りかけてくる。


「主! 前の木を見ろ! あの実は酸っぱいから食べちゃダメだぞ!」

「あ! あの花は甘いから、お茶に入れると美味いんだ! 」

「このキノコはな、ずっと笑えるキノコだ! 悲しくなったら食べるがよい! 」


リリーは尻尾をフリフリしながら、嬉しそうに言葉を続けていった。


―フフッ。さっきから食べ物ばかりじゃないの。

最後話した奴は、きっと危ないキノコだよ? ―


口が緩んで笑いそうになるのを堪えながら、進んでいった。

やはり、ルイスにはリリーが見えないみたいだ。

違う方向をキョロキョロ見ている。

ルイスの頭にはリスがしがみつき、肩には小鳥が止まっている。


「相変わらず、動物に好かれてるわね」

「でも、街に居るときは全然懐かないんです。

逆に犬に吠えられたりして――」


「そうなの? 不思議だわ」

「ですよね」


ザワッーー


「よし! 着いたわ」


少し強い風が、木々を揺らしている森に到着した。

リリーは、ルイスの足元に近づき鼻をスンスンッと嗅いでいる。

私の元へ駆け寄ると、目を細めたリリーはなにやら難しい顔をした。


「この子供。かなり厄介なスキルをもっておる」


「え? 」

「どうかしましたか? 」

「いえ! 何でもないわ。目を閉じて」


―そういえば、馬のノアも同じような事を言っていたような―


ルイスが静かに目を閉じるのを確認すると、私はそっと手をかざした。


【ルイス Lv60 テイマー(未開放)】


ジッジジッ――


画面が一瞬、乱れた後。その項目の下に前回なかった項目が

新たに2ヵ所、表示されていたが文字化けをしていて読めない。


―解放するにはどうしたらいいの? それに、この文字化けは? ―


「皇女様? 」

目を閉じているルイスは首を傾げた。


「あぁ。ごめんなさいね」

私は瞬時に体の状態を見たが、異常は何もなかった。


―なぜなの? 異常を取り除けば解放されると思ったのに―


「目を開けて。手を前に出して。

目の前の蕾へ魔力を放つように想像してくれる? 」

ルイスは言われた通り、手を前に出した。掌からは何も光は出ない。


「やっぱり、僕には魔力が――」

「私の教え方が、未熟なのよ。気にしないで」


私はルイスの手の上に自分の手を重ねた。

冷たい手が微かに震えている。


「大丈夫。ゆっくり深呼吸して、お花が咲く想像をしてみて」

「はい」

それから、何度も試行錯誤したが花を咲かせることは出来なかった。

ルイスは苦笑いをして、私に体を向けると頭を下げた。


「すみません。皇女様の時間を無駄にしてしまって」

「まだ1日目だから、気にしないで」

肩を何度か軽く叩き、両手を取った私は微笑んだ。


「私も魔法を練習しても、あまり出来ない事もあるわ」

「え? 皇女様でも出来ない事が? 」

ルイスは目を丸くして驚いていた。私は静かに頷く。


「そうよ。だから一緒にこれから頑張りましょ! 」

「はい! 師匠」


「さぁ! 日がそろそろ沈むわ。手を貸して」

ルイスと手を繋いだ私に、リリーは何かに気づき私の肩に乗った。


フワッ――

柔らかい風と、金色の光が二人を包み、地面から少しずつ空へと上っていく。


「え? えぇぇぇ!!」

「前に言ってたでしょ? 空を飛んでみたいって」


―魔法が苦手な気持ちを、少しでも変えれたらいいな―


自分達より大きい木々が、どんどん小さくなっていく。

オレンジ色に染められた空に、渡り鳥達が近くで飛んでいる光景を見た

ルイスは、目を大きく開き笑顔を輝かせていた。


「す、すごい! 」

「少し速度上げるから、何かあれば言ってね」

「うん。本当に僕、空を飛んでる」


―良かった。喜んでくれて―

私は、微笑んでいるとリリーは私の頬へ額をつけ、ゴロゴロ鳴いている。

「主。そういう所、我は好きだぞ」


「僕、諦めません。いつか、魔法が使えるようになるまで」

「うん! 私も出来る限り手伝うよ」


二人と一匹は、心地よい風を受けながら城へと戻って行った。







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