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元アラフォーが皇女に転生?!元暗殺者の少年を拾ったので育てます!  作者: 桜月ふたば


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50/52

EP.50  仮初の婚約者

幻覚の笑い声が洞窟に響いた


その頃、城では……。


ガチャンッ!パリンッ


「皇女様!お怪我はないですか?!」

メイドが駆け寄る。

お気に入りのカップを落としてしまった。


―何か嫌な予感がする……―


クレールは今頃、魔物の所へ着いただろうか?


コンコンッ


「お客様が到着されました。」

「ええ。入ってもらってかまわないわ。」

今日も婚約者の交流という名の個別面談……


「ごきげんよう皇女様」

「ごきげんよう」


子供のままなら、この子達の笑顔を見抜けることは出来ないだろうが

中身はアラフォー……だてに人生の荒波を渡ってきた訳ではない。


本当にこの子は家紋を背負っていて大変そうだな…。

気に入られようと必死にアピールしてくる。


「人払いをお願い。」

私は部屋からメイド達を出した。

カップに砂糖を入れ、ゆっくりスプーンをかき回す。


「あなたには、好きな人は居ないの?」

「いいえ、おりません。皇女様だけですよ」

微笑んだ瞳はかすかに揺れている。


「瞳が揺れているわよ」

「……」

私は一口紅茶を飲み、静かにカップを置く。

「ねぇ、事情があるのなら…一旦、仮の婚約者で契約しない?

期間は今から10年くらいかな?」

「…契約の婚約者ですか……?」

「煩わしさからお互い解放されるし

16か17になったら、私から破棄するとかでどう?」


「私はあなたを恋愛対象として見れないし、それはあなたも同じでしょ?」

「…。一旦考えさせて下さい。」

「ええ。もちろんよ。」


後日、手紙が来て契約をすることになった。

毎週一日だけお茶をする仮初の婚約が開始する。


「周りに人が居ないときは、普通にしていいからね?堅苦しいの嫌いなの。」

「さすがにそういう訳には……」

「あと名前も普通に呼ぶか、アビーでもビーでも好きに呼んで」

さっきまで余裕そうだった少年は、かなり動揺しているように見える。


「何か好きなのはないの?」

「魔法…ですかね。でも、僕には魔力があまりないと言われてて」

少し悲しげな表情が気になってしまった。


「へぇ~、魔法で今後何がしたいの?」

「空を飛んでみたいのです!あと、花を咲かせて皆を笑顔にしたい!」


(……。可愛らしい理由じゃないか!)

何だか、魔法の授業の先生のような目の輝きをしている。


「お茶会の後、一緒に魔法の特訓とかどう?」

「え!いいんですか?!お願いします!」


―うん。婚約者というよりは…可愛い弟みたいね―


「両親は、僕が魔法の才がないと分かってから…

家庭教師もつけなくなったので…とても嬉しいです!」


作った甘いマスクは、普通の可愛い少年の顔になった。


その後、馬が見たいと言われたので馬小屋に向かった。


「お!嬢ちゃん!俺忘れられたかと思ってたぜ!」

小屋から顔を出し、しっぽをブンブン振っている3番。

「この子が私の専属の馬よ。」

私は3番を撫でる。


「このちびっ子は誰なんだ?!」

「紹介するわ。昨日から私の婚約者になったルイスよ」

「初めまして。よろしくお願いします。」


―お、礼儀正しい人間は嫌いじゃないぜ!―


「私ね、まだこの子の名前を決めてなくて、一緒に考えてくれないかな?」

私は後ろにいたルイスにノートとペンを渡した。


「いいのですか?はい!」

「私は少し、この馬の様子を見たいから…馬小屋横の椅子で待ってて」

「はい!」

ルイスが小屋から出たのを見てから、私は3番へ話しかけた。


「ごめんね。体調が悪くて中々これなかったの。」

「えっ!大丈夫か? 」

顔を摺り寄せてきた。可愛い。


「今は、もう元気だよ!そういえば、ご飯は美味しくなった?」

「あぁ!毎日新鮮な野菜が出てくるようになった!ありがとな!」

「後、飼育員も少し増えて とても住み心地がいいぜ!」

「よかった。」

私は飼育員に声を掛け、小屋から馬を出してもらった。


「皇女様!候補いくつか書いてきました!あの…僕も撫でていいでしょうか?」

ルイスの肩に、オレンジ色の小鳥が乗っていた。


「うん!もちろん! ルイス肩に可愛い小鳥が乗っているわね」

「たまにこういうのがあるんです」

ルイスは小鳥を人差し指で撫でる。


その瞬間、私は後ろに居る3番に目を合わせ

―分かってるわよね?―

私は、にっこり笑った。

3番は一瞬、小さくビクッとしながら頭を下げる。


「嬢ちゃん…こえぇよ…。我慢するってば…」

「はい!ルイス。触ってみて!大人しいからこの子」

「……。」

3番は目を軽く閉じて顔を下に向けた。


「うわぁ!かわいい!!」

優しくゆっくりと撫でて、無邪気にはしゃぐルイス。

その後、ルイスと私は3番の名前を決める為にノートを開く。


「んー…。ノアはどう?」

「お!いいじゃねぇか!気に入ったぜ!」

いくつか名前を読み上げたが、ノアが一番気に入ったらしい。


「…あれ、僕…変な声が聞こえる」

キョロキョロ周りを見渡すルイス。

「え?」

「お!小僧も俺の声が聞こえるようになったのか?」

「この声ってノアの?」

ルイスは嬉しそうにノアを見る。


「そうだぜ! …お前、個性的な匂いがするな。魔物が好きそうな匂…」

ペチッ!私はノアの顔を両手で挟む。


「失礼な事言わないの!」

「いや、本当の事…気分害したなら、悪かったよ」

「僕、魔物とも友達になれるのかな!」


ルイスが興奮している。嬉しそうならいいか……。

私は、ルイスのステータス画面を見た。

小さくテイマー(未覚醒)と書いてある。


「すごいわね!素質があるんじゃない?」

そういえば、この馬小屋に向かう間

色んな動物がチラチラと少年を目で追っていた。


「動物は幼い頃から好きだったんです。」

「そうだったんだ。」

―覚醒したら、他の魔法も使えるのでは…?―


その後の数日間、私はルイスと色んな話をして。ノアに乗ったり楽しい日々は過ぎていった。


   ◇

バンッ!!

「ガハッ……!」

かわせなかった攻撃をもろに受けてしまった。

「アハハハハ!」

「……っ。」

サーシャの笑顔が、少し歪んだ。冷たい。見下すような目で笑う。

その瞬間。クレールの中で何かが切り替わった。

「…っ…違う。」

魔力が揺れる。剣を強く握る。


「サーシャはなぁ……そんな目で笑わねぇんだよ!」

全身に光が溢れ出る。あの時の感覚と同じだった。

剣に魔力を絡ませ、振りかざす。

バキィッ!!

幻覚に亀裂が走った。


ギィアアアァァァ!!!


ザッザザ…  サーシャの幻覚が消える。

王と王妃も姿が歪み始め、地面が大きく揺れ始めた。


「んだよ!今度は何だ?!」

肩で息をしながら、警戒していると…


奥から巨大な黒い魔物が姿を現す。何本の手、本体には5つの大きな目がついている。

そして、超音波のような叫び声。


ギィィイイイーーー!!

「てめぇが本体か!」

首筋が熱く光る。

「クレール…。やめて…クレール…。」

サーシャの声が壊れたラジオみたいに名前を呼ばれる。

「おい…。俺の大事なやつの真似すんな」

目が据わり、低い声で呟く。


「殺さないで…」「大好きだよ。」「こっちにおいで?」

魔物は巧みにサーシャの声で洗脳しようとしてくる。

クレールの瞳の色が変わり、目を大きく見開く。


「……消えろ」

膨大な魔力が渦巻き、何本の束になり魔物を貫いた。


ピィィィィギュゥァァァアアア…

内側から放射線状に伸びた光が、魔物をチリに変え消えていく。

カランッ

青色の魔石が落ちた。

「ハァハァ…。」

俺は石を拾おうと触れたが、足元がふらついてしまう。

「クレール様!!」

倒れかかった俺を後ろからラークが支えた。


「…お前、罠にかかるの早いんだよ。クソが」

「申し訳ございません…。かなり大きい魔石ですね。」

「ああ。俺は鑑定できないが、かなり大きいな。」

「…帰るか」

「はい。近くの町に一旦寄りましょう。怪我の処置をしなければ」

「…。わかった。それまで肩貸せ」


洞窟を出る二人。

冷たい風が吹き、茜空が木々を照らしていた。


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