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元アラフォーが皇女に転生?!元暗殺者の少年を拾ったので育てます!  作者: 桜月ふたば


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EP.43 初めまして、10人の子供達

リリーのしっぽが私の顔を撫でて目が覚めた。


「おはよう、リリー帰って来たのね。」

「うむっ!主、おはようー。」


暫くして…

「おはようございます、皇女様……あら?」

「どうしたの?」

「身支度が……ほとんど終わっております」

「え?」

 鏡を見ると、髪はとかしてあり、顔も洗い、寝間着もきちんと畳まれている。

 ……無意識だった。


クレールと暮らしたあの家では、自分で動くのが当たり前だったから

身体がもう覚えているらしい。


「お着替えだけお手伝いしますね」

「お願いするわ」


リリーが窓辺からぴょんと降り、近づいてきた。

「主、今日は沢山の子供達に会えるぞ!」


しっぽをフリフリしながら話しかけてくる。


「…?」


朝の食卓へ行った時、意味が分かった。


10人の子供達が壁に沿って一列に並んでいたから…。

表情が暗く、緊張している様子でソワソワしている。


「おはよう」

「…。」


「おい!皇女様に挨拶しろ!」

使用人の男が近くに居た子供を小突いた。


びくっと小さな少女が震える。


―こいつ誰?!ぶん殴りたい。―


「おっおはようございます。」

「座って頂戴。」


「皇女様。恐れながら、このような小汚い平民以下の子供が

一緒の席にすわるなど…。」


「え?皆、綺麗よ? 」


その言葉を聞いて皇女の方を見つめる子供達。


「私や国王が今まで民を蔑んだ事があったかしら?無いわよね?」

「それは…そうですが…。」


「この城で働いてくれている皆の事、尊敬していたのに

そういう対応されるど…ぶんな…  とても悲しいわ…。」


ぶん殴りたくなるが出ちゃいそうになるのを飲み込む。私偉いわ。


「…。申し訳ございません…。」


バタバタッ 足音が近づいてきた。


「おはようございます。皇女様。遅れてしまって申し訳ございません。」

ルーカスが分厚い紙の書類を抱えて走って来た。


「おはよう…。この子達は…?」


「先日、陛下が奴隷関連の事件で救出した子供達です。

親元に行けない者が一時的にですが城で保護する予定です。」


「そうだったのね、座って一緒に食事をしましょうか。」

「…でもっ…。」


「大丈夫。皇女様はそういう怖い方ではありません。座りなさい」

ルーカスが一言発すると、子供達は座り出した。


席に着き、料理が運ばれる。

焼きたてのパン。果物のジャム。サラダ。温かいスープ。卵料理に果物。

けれど誰も手をつけない。


「どうしたの?嫌いなものでもあった?」


小さな男の子が震えながら言った。

「…大人が先に食べて、食えって言われるまで待つんだ」


「そうしないと殴られちゃうの…」別の子が続ける。

 胸が締め付けられた。


「そうだったのね…。でも私が一人でいる時は違うわ」


それでも手をつけない子供達を見て

 私はパンをちぎって一口食べる。


「これでいいかしら?皆、あたたかい内に食べて?」


やがて、一人の少女がそっとスープを口にした。


その瞬間、子供数人が…ぼろぼろと涙を流し始める。

「美味しいよ……あったかい……」


それを見て、他の子供達も次々と食べ始めた。

暫くして、私が口を開く。


「過去起きた事は変えられないけど、

未来は自分の手で変えていけると思っているの」


「はっ!綺麗事いってんじゃねーよ。」


突然、低い声が響いた。年長の少年だった。

腕に古い傷跡があり、目つきが鋭い。


「おい!」「皇女様に何てこと言うの?!」

と使用人が怒鳴るが、私は手で止めた。


「続けて」

空気が張り詰める。


「悪いが、俺らは人間以下の扱いされてるのが普通だったんだ。」

腕を組みながら、まっすぐ私の目を見て言った。


「だから何?暗い過去があるから仕方がないと…

これからも言い訳を背負って生きていくの?」


「あんたには分からないだろうな」

「毎日、暴力や暴言の世界で生きてきてないんだから」


「そうね。分からないわ。」

「…。」

「でも、分からないまま、知ろうとしない人にはなりたくはないわ。

困っている人が居るのに、見て見ぬ振りとか出来ない性格なの。」


「人生に正解も不正解もないわ。」


「…。俺らとお前じゃあ、スタートが違うんだよ!!」

テーブルを力強く叩いた少年。


…クレールを思い出した。最初の頃、こういう目で態度だったなと…。


「今から言う事は、強制でも命令ではありません。

自分達で選択して?」


椅子から立ち上がった私は周りを見渡しながらゆっくり話す。


「働きたい者は仕事を与えお金を得る。

学びたい者には学ばせる。城から出たいなら出させるわ。」


子供達が一斉に私を見る。


「選ぶのはあなた達よ どうする?」


しばらく沈黙が続き、一人の少女が手を挙げた。


「私は…文字とか計算を学びたいです。でもお金も貯めたい。」

「俺は働きたい。外に出ても働けるように」「私も…」

「私は料理!」

「俺は野菜を作ってみたい!」

子供達がぽつりぽつり話し出し、一気に声が増える。

止まっていた時間が、ようやく動き出した気がした。


「今後の事はルーカスと相談しながら決めるといいわ。」


椅子に座り直そうとしたその時。


扉が勢いよく開いた。


「大変です!!」

兵士が青ざめた顔で飛び込んできた。


「何事なの?」

「陛下が…陛下が…!」


「落ち着きなさい。ゆっくり息を吸って、吐くんだ。」


過呼吸になりそうな兵士の背中を優しくなでるルーカス。


「陛下が、襲撃を受けて倒れられました…」


パパは、反発を起こした貴族の手下と戦闘になり… 

魔力を使ってしまって、意識不明らしい。


城の皆と私はざわざわしている。

「…。私は陛下の元へ向かいます。昼前には間に合うでしょう。」

ルーカスは部屋からすぐ出て行った。


「私も、部屋に戻ります…。」

「皇女様?」


「私……少し用事を思い出したの」

リリーが机の下でしっぽを振っている。


私は振り返り、にっこり笑った。

「朝ごはん、皆はちゃんと食べるのよ」


自分の部屋へ走る速度が上がっていく


―パパを、助けに行かなきゃ。―


私は自分の部屋へ着いた後、すぐサーシャに変身した。


「じゃあ、後はよろしくね。」


「はい。マスターご安全に…。」


「今日はリリーも一緒だから大丈夫よ^^」


「うむ!我強いゆえ大丈夫だ!」


リリーは人型に変身して一緒に着いてってくれる事になった。

獣姿だと家や店に入りにくいからだ。


ルーカスより先に着いて、アイテムを使わなければ…。


「よし!リリー行くよ!」

「うむ!」

光に包まれ目的地へ向かった。


ワープから少し離れたところへ走っていると大きな屋敷が見えた。

父が滞在しているという別邸。


周囲には兵士の姿もあるが、どこか様子がおかしい。

「警備が少ないわね…?」

「どうしたんじゃろ?」


私はアイテムBOXから、特殊な形状の淡い黄色の花を取り出した。

眠りの花。


香りを吸えば、数分で眠りに落ちる。制限時間は3時間未満

「増産」 


花が一気に十倍へ増えていき、花吹雪を起こすように風魔法で花びらを散らしていく。


ふわり、ふわりと屋敷の窓や通路へ流れ込んでいく。

見張りの兵士が一人、また一人と崩れ落ちた。


結界魔法を私と一応リリーにも膜を張るようにかけてから、パパが居る部屋を探す。


「主!陛下が居る部屋は奥の場所だ!」走り出すリリー

大きい扉、左右の兵士は眠っている。


「…。パパ。」

部屋に入ると、大きいベッドにパパが寝ている。


横には血のついた衣服が、壁にかけられていた。

大きく裂け、焼け焦げ、ところどころ黒ずんでいる。

ボロボロの切り刻まれた布が、事の大きさを物語っていた。


泣きそうになるのをこらえながら、パパの頬に手を添える。


顔色は悪く、呼吸も浅い

苦しそう…。


ステータスと体をスキャンした。


ギリギリまで魔法を使わずに戦ったのだろう。無数の切り傷が背中と足に集中していた。

魔力が…ほぼない。 私が倒れた時と一緒だ。


先に傷を治すことにした。淡い光が父の傷を包み、裂傷が少しずつ閉じていく

アイテムBOXから万能薬を取り出す。

前世の点滴のようにイメージをして、抽出した液を体内へ送り込む


ステータスのMPが、ゆっくりと回復していく


―お願い!上手くいって!―


50%過ぎたあたりで、パパの目がゆっくり開いて私を見る。

「…アイビー…?」


その声を聞き、心にグッときて泣きそうになる。でも今の私はサーシャ。


「いいえ。私はただの平民ですよ。水を取り替えに来ました。」

父はかすかに笑った。


「ははっ…そういう事にしておこう」

笑うとパパはまた眠りについた。


「リリー…私だってバレ…てないよね?」

「…さあな。可能性は高いかもな…」

リリーが、辺りを見回し始める。


「…人間共が…来る」


「え?なんて? 後、30%…もう少しだわ!」


「そこをどいてもらおうか」

背後から低い声が響いた。

振り返ると4人の仮面をつけた男達が並んでいた。


「なぜ眠らなかった」

リリーが私を隠すように前に出た。


「悪いが、俺らは毒に耐久があるもんでね。」

「誰の差し金だ!」

「言えねぇな!」

二刀流の男が切りかかって来た、


私は床へ手をついた。

―拘束―

光の鎖が二人の足を絡め取り、そのまま転倒させる。


残る2人が私へ迫る。

「死ね!」

「サーシャ!」

その時、私の後ろから、雷撃が飛んだ。


 ビリリリィィイ!バチッ!

男達は悲鳴と共に黒焦げになって倒れた。


私は振り返る。 パパは静かに寝ている。

「…パパ…?寝ながら…??」

無意識なの?もしかして、半分起きてる?


心なしか、パパの口元がニヤッと上がった気がした。

私は、すぐに倒れた男達の懐を探った。 出てきたのは貴族の紋章。


「やっぱり内通者か…。」

 私はそれを父の手に握らせる。


「証拠、ちゃんと残しとくから…パパ、遅くなってごめんね…。」


パパの手の上に自分の手を重ねる。


「大好きだよ。早く帰ってきてね。」

かすかにパパの手が動いた気がした。


―100% 治療を終了します―

システムの声がした。


近くのノートの紙を破り、殴り書きする。

「主、字が踊っているぞ?」ニヤニヤしているリリー

「急いでるの!」


1階の兵士が集まっている所へ、拘束した状態の刺客と紙を置いてきた。


「これで大丈夫かな…。動揺してたから、靴だけ子供の時と同じになっちゃったよ」

平民の恰好に紫リボンがついた、かわいい靴…今気づいた。


「主、そろそろ帰らないと」 

天井を見上げているリリーが急かしてきた。


「そうだね、城に帰らないと。」


風魔法でまき散らしていた花を集め、BOX収納する。


私はその時、何も気づかなかった。


―まさか、天井裏でルーカスに見られているとは…。

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