EP37. 闇夜の襲撃者と解き放たれた力
「おい!本当にここら辺なのか?」
「あぁ、あの子供が居ると依頼主が言っていた。」
我は、暫くこの黒づくめの男達を観察していた。
全部で6人。 素人は2人。 子供目的としては、かなり慎重な配置人数だ。
― 一人だけ離れている奴は何なんだ? ―
こいつだけ、殺気がない。
「よぉ。こんな夜更けに迷子か?」
「なっ お前魔物か?!」「猫が喋ったぞ!!」
「迷子なら、出口に案内してやるが…?」
「毛玉!何してんだ!」
…!!
「こいつだ!黒髪に赤い目!!」男達が一斉にざわつき始めた。
「なぜここに来た!!帰れ!」
「居なくなったから…てかこいつら誰なんだよ!」
リーダーだと思われる男が、1歩前に出る。
「これはこれは、殿下お初にお目にかかります」
「あなたを消すように依頼主から頼まれ、馳せ参じました。」
「は?俺はただの平民だぞ?何言ってんだ?」
「冥土の土産に少しだけ話してやろう。
お前は、グリード国の第二王子カイルだ。
その赤い瞳。不吉の象徴だから、呪いをかけて野に放ったんだよ。王妃がな!!」
「…?」
「最近、第一王子が亡くなったから。王国中があんたを探してる最中さ。」
「呪いの痕跡を辿っていた時、解除された場所付近に居ると魔術師が言ってたんだ」
「あんたも中々しぶといねぇ。」「おい!余計な事を言うな!」
他の仲間が止めに入る。
「ま、そういう事だから。すまないが…ここで天国へ行ってくれ。」
「ガキ!これを!」毛玉から剣を投げられた。
「んっ」
「雑魚猫とガキだ、ささっと片付けるぞ!」「そうだな!俺、雑魚猫の方をやるわ」
キィイン…!!
男の剣を少年が受け止める。剣が重い…
「我を…雑魚だ…と?!カッチーン!我、こいつら殺す!!」
「うあぁぁぁ!!!」「ひぃ!ぎゃああああぁぁ!!」
雑魚と言っていた男達数名が闇の魔法で溶けていく
「フン!」
「毛玉!何ブチギレ暴走してんだ!」
「侮辱には苦痛を!!それが礼儀だ!! 」
フスフス息を立てている。
「初めて聞いたぜ…。」
「次、くるぞ」
「わかってるよ」
ブチギレた毛玉と少年は順調に倒していった。残り4人
「協力者が居るはずだ。森の先も探せ。」
2名の黒い男達がサーシャの居る方面へ走り出す
「チッ!行かせるかよ!!」
「ガキ!主は、我に任せろ!」毛玉師匠が後を追って消えた
リーダー風の男とずっと離れていた男が立ちはだかる。
左右で攻撃を交わしていたが、あきらかに片方は手を抜いている
ズサッーーーー 地面に転がる少年
「可哀想だとは思ってるぜ?来世で幸せにな!!」
男が剣を振り下ろしている最中。
片方の男が後ろから剣で男を後ろからまっすぐ貫いた。
「…!!お前! …いつから…。」
「最初からずっとだ。」
男は、リーダー風の息を確認し終わってから少年へ近づいて行った。
「来るな!なんだお前!」
剣を振り回していたが、男に剣を弾かれ…宙に舞って地面に刺さる。
「ずっと…お会いしたかったです。」
仮面を外した男は泣いていた。
「…お前、敵だったはずじゃ…。」
男は少年の前で膝をつきながら話し出した。
「私は、以前あなたの護衛騎士だった。 ラークと申します。」
泣いている男が護衛騎士で?…俺は王子…?訳が分からない。
「…!悪いが、その話は後だ!今は家にいかなきゃ」
俺は走り出した。
「お供します。」
深い森を2人で走る
―サーシャ…無事でいろよ。―
毛玉が見えてきた。
「サーシャ!毛玉!!」
「悪い。一人はやれたんだが…。」
毛玉の横には一人男が倒れている。
だが目の前には…。
青白い顔をしたサーシャが、ぐったりと男の腕に抱えられていた。
「まだ殺してねぇよ。気絶させてるだけだ」
ヘラヘラ笑っている男。
師匠の攻撃で仮面が半分壊れていた。
「この嬢ちゃん、売ったら高くつくだろうからな! ガハハハ!!」
「ゲス野郎…。」
ぐったりしているサーシャの首に男が刃物を突き付けた姿を見た瞬間
パキッ…パキパキパキ… 俺の心臓から何かが壊れる音がした。
何かが、内側から大量にあふれてくる…。全身が熱い、クソ熱い…。
少年の首筋に紋章が赤く浮かび上がったのを見逃さなかった師匠。
「ようやくか…」
「殺す…。」
少年の目は赤から黄金色に変わり、瞳孔が開いた。。
膨大な魔力が吹き荒れ、木々が揺れる。男の顔色が変わった。
「な、なんだこの力……!」
「こっこいつがどうなってもいいのか!」
「うるせえ!!」
少年の姿が消え 男の右腕が宙を舞った。
「う”ああぁぁああ!!?」男の悲鳴が響く
毛玉師匠はサーシャを闇の力で安全な場所へ移動させた。
「ま、待て! 話せば…」
「死ね…クソ野郎」
少年は手の平をかざし、男に光を放つ。
爆発音と共に男は吹き飛び、散り散りになった。
爆風から主を守るように大きくなる毛玉。
「…でっ殿下…。」
元護衛騎士は驚きのあまり一歩も動けなかった。
風が収まり、静寂だけが残った。
ハァハァ…
少年は肩で息をしながら、自分の手を見つめる。
―何だったんだ、今の…本当に俺の力か…?―
俺はサーシャの元へ駆け寄る。
「おい!起きろ!サーシャ!」
呼びかけてもぐったりしたまま。抱きかかえ、ぎゅっとする。
―ごめん、二度もお前を危険な目に合わせちまった…―
さっきまで敵を殺した手が、今は怖くて震えていた。
「弟子、安心しろ!主は大丈夫だ。家に一旦戻るぞ…あとそこの男も一緒に入れ。
我は…後片付けをしてくる。」
「あぁ…。ラーク、家に入るぞ。」
初めてガキ以外で呼ばれた気がする。
「はい。」
ベッドにサーシャを寝かせたあと、遅れてくるように俺の手と膝が震えだした。
「…殿下…。」
「今の名前はクレールだ。」
「とりあえず座れ、今までの事あいつが寝ている間に知りたいんだ。」
「分かりました。」ラークは静かに話し始めた。
少年が生まれた時は普通の容姿だったが、数カ月経った時に突然 赤目と黒髪に変化した。
魔術師の診断は、先祖返りと災いが起きる前兆という過去の歴史と重なった。
「そいつは俺の子ではなかった。処分しろ。」
俺が2歳になる前に、国王が宣言した後
王妃が兵士に告げ、俺は魔物が居る森に捨てられたそうだ。
「私は、森であなたを救出したのち…遠くの街にいた、平民の家族に託しました。
その後、戦争に私が参戦した為。金を数年送ることが出来なかったのです。」
―あの育ての女が言っていた、いきなり金が入らなくなったのはこういう事だったのか…。―
「なんで今更…俺を探していたんだ?」
「戦争から帰った後、すぐ様子を見に向かいましたが…住民はおらず。
そこからずっと探していたのです。」
「第一王子が亡くなったのは何故だ。」
「他国へ視察に行った際に、平民の子供から貰ったブドウで毒殺されました。」
…!!
「それは何年前だ?」
「1年以上前です。馬車の中で食べろと子供に言われたそうで…そのまま」
― …もしかしたら…いや…そうじゃなくても…俺がやった任務じゃねぇか…。―
話を聞くほど、少年の顔は沈んでいく。
「弟子よ。過去はもう変えられぬ。大事なのはこれからどうするのかだ。」
師匠がいつの間にか足元に居た。慰めるように、しっぽを俺の片足に絡めてきた。
「…わかってる。」
「続けろ。」
その後、黒い男達の話に繋がった。
サーシャが俺を助けてくれた日、呪いが壊れ場所が分かった。
強力な呪いが解かれたとなれば、覚醒したか。強靭な協力者の元に居ると思われ
暗殺隊が結成されたという流れだ。
「…事情は分かった。話してくれてありがとな。」
「今、城内は王子を戻す派と暗殺する派で…かなり混乱しています。
戻るのは危険です…。」
「あぁ、戻ろうとも思わねぇよ。」
ガサゴソと胸元から古い布で出来た小袋を取り出す
「こちらは、殿下に渡すはずだった物です」
中身を取り出すと、紋章入りのネックレスが入っていた。
「王族で生まれた者にだけそれぞれ違う形の物を作らせます。殿下のものです。」
「…。」
「クレール…?」
後ろから、か細いサーシャの声がした。
慌ててネックレスをポケットにしまい。駆け寄る。
ケホッケホッ
「水持ってくるから、待ってろ。」
「……クレール、行かないで」
無意識に服の裾を握る小さな手。
「黒い男が襲ってきて…。」
プルプルと震えて泣き始めた
「全部終わったから大丈夫だ。」
小さい体を抱き寄せ、頭を撫でながら落ち着かせる。
「ぅ…ひっぐ‥。 黒い男…!!」ラークを見て怯えるサーシャ
「違う、こいつは味方だ。」
「…。本当?」
「あぁ。」
ドカッ!!
師匠の飛び蹴りが少年の頬にヒットする。
ニッニ”ャ”アアァー!!
「我の主に、いつまでくっついてんだ!」
「痛ってぇな!毛玉!!」
そのまま主の膝を独占するように座る毛玉。
「フン!我は、結界を張り直してくる。お前らは一旦休め。」
師匠はサーシャから撫でてもらいながら
主~♪我、頑張ったぞ~ もっと撫でよ!と喉を鳴らしている。
「…。毛玉、早く行かないのか?」
「もう少ししたら行く。」
窓から見える空は朝焼けに染まっていく最中だった、
サーシャを寝かせた後、男を二階のベッドに連れていき
俺はサーシャの側に座り、そのまま眠ってしまった。




