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元アラフォーが皇女に転生?!元暗殺者の少年を拾ったので育てます!  作者: 桜月ふたば
第一章

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36/61

EP36.  闇夜の襲撃者と解き放たれた力

家から少し離れた森の奥地。

影に溶け込んだ毛玉は、木の上から様子を見ていた。


「おい! 本当にここら辺なのか? 」

「ああ。この石が反応してる」

男の一人が、ポケットから石が赤く光っているネックレスを出した。

数名の男達が首を傾げる。


「それにしても、ここら辺をグルグル周っている気がしないか? 」

「確かに。さっきもこの道に出た気がするぞ」

「そうか? 夜だから道も分かりにくいのだろう」


―なんだ、この男。強いはずなのに、とぼけて言っているのか? ―


複数の男の中で、ひときわ大きい体格をしている一人は

主の家が無い方へ行こうと言い出した。

しかし、他の男達は首を縦には振らなかった。


―まぁ、よい。数が多いから少し減らすか―


ザッ――!

ドゴォ

「グハッ……」


一人の男が倒れ、またその横に居た男も倒れた。

毛玉は急所を確実にとらえ、素早く倒していく。


「な、何が起こっている?! 皆、離れるな! 」


数名バタバタと地面に倒れていく姿に、残った男達の顔は青ざめていった。

毛玉は、睨みつけながら男達の回りを影で移動していく。


「よぉ。こんな夜更けに迷子か? 」

「な、何か声が聞こえる! 魔物か?! 」

「何を言ってるんだ? 何も聞こえねぇぞ? 」


辺りを一斉にキョロキョロと見渡しているが、

一人を除いた男達は目の前の子猫に気が付かない。


ズッズズ……

トコトコ


月明りに照らされた子猫は、影から現れると男達の前に姿を見せた。


「お前ら、見えねぇのか?! 目の前に猫が居るだろうが! 」

「ほう! 我を見れるとは! 貴様。闇の加護持ちか? 」

「さぁな! 言う訳ないだろう」


腰から、短刀を引き抜いた男は笑っていたが

周囲の仲間は、何もない空間へ刃を向ける仲間を見て

余計に混乱し始めた。


「おい! 何をさっきから――」

「気でもおかしくなったのか?! 」


「俺がこの猫を片付ける」

片手を横に出し、仲間達を静止させるように一歩前に出る男。


「迷子なら、出口に案内してやるが」

ニヤリと口元を上げた毛玉は、腰を低くし男を睨みつける。


「ふざけるな! 」

ダッ――

男が毛玉へ斬りかかろうと走り出した、その時。


「毛玉! 」


「弟子! 」

大声に振り向いた毛玉は、尻尾から紫色の球体を瞬時に作り

刃を向けた男へと放っていた。


バンッ

「ガハッ……つ、強い」

男は木の幹へ投げ飛ばされ、ぐったりとしたまま気を失う。


「毛玉、こいつらは――」

クレールの瞳を見た男達はざわめき始めた。


「こ、こいつだ! 黒髪に赤い目!! 」


「ッチ! なぜここに来た!! 帰れ! 」

「お前が居なくなったから、探しにきたんだよ」


リーダーだと思われる男が、1歩前に出て綺麗なお辞儀をした。

顔を上げると、目を細めクレールを見つめる。


「これは、これは。カイル殿下、お初にお目にかかります。

あなたを消すよう依頼主から頼まれ、馳せ参じました」


「は? 俺はただの平民だぞ? 人違いだろ」

「お前は、グリード国の第二王子。

王妃様に捨てられた哀れな殿下でございます」

クレールは首を傾げると、周りの男達は笑いはじめる、


「第一王子が亡くなり、王国中がお前を探してる。

お前、呪いをどうやって解除した」

「絶対、仲間が他に居るだろ」

他の男も話し出すと、毛玉とクレールは焦るあまり目を細めた。


―まずい、主の存在を知られてはならぬ―

毛玉は、クレールの足に尻尾を絡ませた。


「おい、弟子! そやつの言葉は、もう聞くな」


ジリジリとクレールに近づく男に気づいた毛玉は言葉を続けた。


「これを使え! 」

毛玉が身を震わせると、宙に剣が浮かび上がる。

クレールはその剣を掴み、腰を低くして構えると

男達が周りを囲み始めた。


「とっとと片付けて帰るぞ」

「そうだな! 俺、雑魚猫の方をやるわ」

ダダダッ!


キィイン……!

男の剣を少年が受け止め、両者は後ろへ飛び下がる。


「今、我を雑魚と言ったなぁ?! 」

毛玉は、シャァーッと威嚇した。

前足をタンッと踏みしめると、地面から無数の黒い光の帯が

男達へと絡みついた。


「何だ、これ?! うあぁぁぁ!!」

「ヒィッ! ギャァアア! 」

雑魚と言っていた数名が、闇に消え去る。


「フン! 口数にも及ばん! 」

「毛玉! 何、暴走してんだ! 」


「侮辱には苦痛を!!それが礼儀だ!! 」

フスフス息を立てている毛玉を見たクレールは、地面に溜息を吐いた。


「ハァ……。そんなの初めて聞いたぜ」

「次、くるぞ」

「ああ」


それから毛玉と少年は、順調に倒していった。


「協力者が居るはずだ。森の先も探せ」

敵の二人が、サーシャの居る方面へ走り出す。


「ガキ!主は、我に任せろ!」

毛玉が後を追って目の前から消えた。

リーダー風の男と、ガタイの良い男がクレールの前に立ちはだかる。

左右で攻撃を交わしていたが、あきらかに片方は手を抜いているのに気づいた。


ズサッ――

体勢が不安定になったクレールは地面に転がる。


「可哀想だとは思ってるぜ? じゃあな」


男が剣を振り下ろしている最中。

片方の男が、後ろから剣で男をまっすぐ貫いた。


「ハッ?! お前が、なぜ――」


ドサッと地面に倒れた男は二度と動きを見せることはなかった、

ガタイの良い男は、倒れた男の首付近を触った後

ゆっくりとした足取りで、クレールへと近づいて行く。


「来るな! なんだ、お前! 」

剣を左右に振り回していたが、男に弾かれ宙に舞った剣が地面に刺さる。


ザッ――

ガタイの良い男は、クレールの前で膝をついて仮面を外した。


「やっと、お会いすることが出来ました」

「誰だよ。お前、敵じゃないのか? 」

男は静かに涙を流し、小さく頷いた。


「私は、以前あなたの護衛騎士だった。 ラークと申します」

突然、王子や護衛騎士という単語を聞いていたクレールは

更に混乱して眉間にシワを寄せた。

だが、すぐ我に返り毛玉とサーシャを思い出す。


「! 悪いが、その話は後だ! 」

「お供します」


深い森を2人の影が、流れるように家へと向かっていく。

開けた平地に変わると、目の前に毛玉が見えてきた。


「サーシャ! 毛玉!! 」

「悪い。一人はやれたんだが――」

ハァハァと、息が上がったクレールとラークは

子猫の横に横たわる男を見つめた。


「前を見てくれ」


クレールは毛玉から視線を移し、言葉を失くした。

そこには、青白い顔をしたサーシャが男の腕に抱えられている。


「遅かったじゃねぇか。まだ殺してねぇよ」

ヘラヘラ笑っている男の仮面は、半分壊れている。


「この嬢ちゃん、いくらで売れるだろうな! ハハッ! 」

「クソ野郎が……」

「おっと、動くなよ? 」

ぐったりしているサーシャの頬に、男が刃物を当てようとした姿を見た瞬間。


クレールの体の奥底で、何かがパリンッと壊れる音がした。

―内側から大量に溢れてくる。これは一体? ―


少年の首筋に紋章が赤く浮かび上がったのを見逃さなかった毛玉は、

目を細め小さく呟いた。


「ようやくだな」

ドクンッ……ドドドッ

クレールの体に大きく響き渡る鼓動が早くなると、

瞳が赤から黄金色に変わり瞳孔が開いた。

膨大な魔力が吹き荒れ、木々が揺れ始める光景を目の当たりにした

敵は顔色が変わり、焦りだす。


「こ、こいつがどうなってもいいのか! 」

「うるせえな、黙れよ」


シュッ――


クレールの姿が一瞬で消えたかと思うと、男の右腕が宙を舞った。


「あ? う、うわぁぁああ!! 」

男の悲鳴が、森へと響き渡る。

毛玉は、サーシャを魔法で自身へと引き寄せ静かに地面へと下した。


ザッザッ……

一歩ずつ、男を睨みつけながら近づくクレールに

男は絶望の表情で叫びながら後ずさりをしている。


「ま、待て! 話せば――」

「だから、黙れと言ってるだろ」 


いつもの感情的なクレールではなく、冷たい表情と低い声で男に言い放つと

手の平をかざし、男に赤黒い光を放つ。

爆発音と共に男は吹き飛び、塵となり消えた。


ビュゥウウウ――

ボフッ!!


吹き荒れる暴風の中、瞬時に巨大化した毛玉は

サーシャとクレールを包み込んだ。


「温かい」

ラークはフワフワの毛に埋もれながら、

暴風で飛んでくる石から守るようにサーシャをギュッと抱き寄せた。


「ほぅ。主を守るとは」

毛玉は、ラークを見つめペロリと舌で舐めた。


「!?」

「これで我の姿や声が、聞こえるようになっただろ?」

「あなたは一体――? 」


毛玉は何も答えずニヤリと笑みを浮かべた。

暫くすると、風が収まり静寂が戻る。


ドサッ


「カイル様!! 」

「待つのだ」

ラークが駆け寄ろうとすると、巨大化した毛玉は尻尾で行く手を防いだ。


ふらふらと膝から崩れ落ちたクレールは、

肩で大きく息をしながら、震えている自分の手を見つめていた。


―あれは俺の力だったのか? ―


ハッと我に返ったクレールは、立ち上がりサーシャの元へ駆け寄ると

毛玉から静かにサーシャを抱えた。


「おい、起きろ。サーシャ」

呼びかけても、ぐったりしたまま返事は返ってこない。


―クソッ。二度もお前を危険な目に合わせちまうなんて―


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