EP35. 毛玉襲来!
シャー!!
「このクソ猫!!」
ガタガタッ!!
「どうしたの…?」目をこすりながら音の方向へ行くと
キッチンで黒猫とクレールが戦っている。
―あれ、闇の女神の時に契約した猫だ!―
あの時は声がちゃんと聞こえていたのに、今は猫の声しか聞こえない。
ゥウウウ”ー!ニャ!!
「あ?!雑魚?!てめぇの方が雑魚だわ!」
「こいつ、サーシャの横にいつの間にか一緒に寝てたんだよ!
ニ”ァニャー!!―ガキ!お口に気をつけな!―
「クレール、猫の話してる声が聞こえるの?」
「あぁ、聞こえる。もうお前が規格外すぎて この毛玉になんの疑問も持たねえ」
「この子、私の使い魔に最近なったの。」
「え?お前の?」
フーフゥー! ニャニャーン!―我は特別なのだ!フン!―
「うん、私、…力がまだ溜まっていないからか、鳴き声しか聞こえないんだよね…。」
猫の耳がピクピク動く。
ニャ!ニャニャーン!!―それは良い事を聞いた!―
「今だ!!」
捕まえようと少年が飛び込んだ瞬間。
シャァーー!!
牙をむき出しにして威嚇しながら少年の手をすり抜け、私に飛び込んできた
「サーシャ!!」
「わあ!」
ポスッ スリスリ 猫は私の顔に近づき、頬ずりしてきた。
「くすぐったいよ~」
デレデレになってしまう私
猫は少年の方を見ながら鳴いた。
ニャニャッ~♪ ―へっ!うらやましいだろ?―
「やっぱこいつ、ムカつく!!」
私の膝まで降り、うねうねとご機嫌の様子でゴロゴロ言っている
ニッニャァ~♪ ―ご主人~大好き~ ―
「可愛い…」もふもふの毛並みを撫でまわす。
「…後で覚えてろよ、クソ腹黒猫が…。」
今度は、少年に猫は飛びつき。ニャアニャア言いだしている、
だが少年にはこう聞こえている。
―ご主人様に何かしたら我は許さんぞ?これからよろしくなクソガキー
「…!!このクソ毛玉!!」
「あら、もう仲良しになったのね^^」
「違う!」
「ニャァ!!」―違う!―
―これから賑やかになりそう ―
「おーい!それはこっちに持って来てくれ!」
魔物が居た森から一番近い村の復興が進められていた。
「本日の治療は終わりです。お疲れさまでした。
「あぁ。ありがとう。」
魔力欠乏と診断され、魔力を毎日補う治療をしているが
元々の魔力量が多かったせいなのか、相性なのか
ある程度までが中々溜まらない…。
それに治療をした後は軽く魔力酔いで気分が悪い。
治療以外は安静にしていろと医者から言われていたが
残ってくれた兵士達と復興の手伝いに毎日出ていた。
街へ行くときは髪色を変える薬を飲む。自身で変えられない程に欠乏しているからだ。
「かぁ~!今日もいい苦味だ!」苦いので一気に飲み干す。
「陛下、今日もそろそろ行きますか?」
「あぁ。昨日の瓦礫を運ばなければな!」
「…無理だけはなさらないで下さいよ…?」
私はある兵士の1人と仲良くなった。
今、一緒に歩いている男。
こいつは、マーティン。マーと最近呼ぶようになった。
マーティンも妻を亡くしている。息子は、私の娘と同じ年らしい。
最近は、たまに仕事終わりに抜け出して酒場へ行く仲になっていた。
「昨日、息子から手紙が来たんです!」
「おぉ!良かったじゃないか!」
「はい、最後の方に、お酒あんまり飲んじゃだめだよって
書いてありました…見透かされてますね」
「ハハッ!そういえば、娘も同じ事書いてあったな…。」
「早く帰りたいな。」
「…ですね。」
「今日は、昼過ぎまで炊き出し。以降は瓦礫撤去か」
「はい。この間の炊き出しも大勢来られましたもんね。」
「…。皆が各自で食べれるように復興すればいいな…。」
「はい…。」
道端にやせ細った子供や大人が何人かいることや
今まで報告が上がっていない状況を色々と目のあたりにしている。
「実際に訪れて己の目で見ないといけない事。今回で改めて認識したよ。」
「そうですね…。それと酒場で聞いた地元の状況も…。」
「その件は、私がぶっ壊す予定だ。」握り締めた拳が強くなる。
この国は王族よりも貴族が強い。 気持ちはわかるが、何のための王族か…。
「陛下、もう少しで着きます。ここからいつもの呼び方にしますね」
「あぁ。」
孤児院が見えてきた。
「おじさん!ご飯食べたら遊んで!」
いつの間にか、子供たちに囲まれた。
「こらこら、炊き出しを手伝いに来てくれてるんだから!無理言わないの!」
シスターが子供を引き剝がす。
「いつもすみません。手伝っていただいて。」
「気にしないでくれ。大変な時はお互い様なんだから!」
この孤児院は、戦争孤児や訳ありな子供達が集まる場所。
皆、親が恋しいはずなのに楽しそうにそれぞれ遊んでいる。
私は大きい鍋に材料を入れたり、搔きまわす役
初日に野菜の皮をむいたら才能がなく…この役割になった。
他の兵士は材料を切ったり、肉を捌く役だ。
料理が出来上がってくると、いつもの配膳場所へ人々が集まって来た。
今日は森で狩ってきた肉と芋類・野草の炒め物とパン。
「ありがとう!」「ありがとうございます。」
並んでいる民達へ、よそっては渡していく。
「あの、ボクのパンは妹にあげてください。」
一人2個のパンを妹に全部乗っけろという少年がいた。
ボロボロの服でやせ細っているが、目は力強かった。
「お兄ちゃん。私は別にいいから」
小さい子は1個のパン。それ以外はパン2個というルールになっていた。
「少年よ、あとで隠れてあげれば良い。」
「…。知らない大人に奪われる時があります。」
「…。今、何と…。」握っていた器具を折ってしまいそうになった。
「…後で話を聞こう。今はすまないがそうしてくれ。」
「はい…ありがとうございます。」
「私の後ろの施設に入り食べなさい。今後も子供だけの場合、
敷地内で食べれるように共有しておく。」
それからすぐ近くに居た部下に耳打ちをして
大人は不可。子供のみ一部敷地内の建物を開放し、そこで食べてもらう事にした。
―何故だ。大人なら子供に、むしろ食べ物を分け与えると思っていたのに―
もう一度、炊き出しに並んでいる大人をよく見た。
…。皆、頬はこけ、細い体。服もボロボロだ…。
―そんな余裕は…ないんだな…。―
胸がキュッと締め付けられる…。こんな状況なのにこの国の王族達は、何してんだ!!
「悪いが、変わってくれるか?事情を聞きに行きたい。」近くの部下に代わってもらう。
「はい、大丈夫です。代わります。」
私は兄妹達が向かった建物へ入っていった。
「お兄ちゃん!美味しいね!」両方の頬を膨らませて少女はニコニコしている。
「あぁ、もうビクビクしながら食べなくていいから。ゆっくり食べろな。」
少し広い庭で子供達が食べている。
―もしや、この中にも…。同じ目に遭った子供が、まだいるのではないか…?―




