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元アラフォーが皇女に転生?!元暗殺者の少年を拾ったので育てます!  作者: 桜月ふたば
第一章

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31/61

EP31. 皇女vs現役暗殺者


シュッ

男が視界から消えた。

風の感触と殺気で、私はすぐ体勢を変えた。


―右から来る! ―


キイィン! 

ミシッ……

一撃で結界の表面にひび割れが出来たのが見えて目を見開いた。

結界を盾のように使ってしのいでいく。


「やるねぇ。おばさん」


―こいつ……強い―


「おいおい! 守りばっかじゃねぇか! ほら、ほら! 」

それから、私は男から次々と攻撃をしてくるのを防ぐのに必死だった。

焦点が合いにくい。魔法を放ってもすぐかわされてしまう


―動きが読めないわ―

まともに戦ったことが無い私は、経験不足を痛感していた。


「へぇ。じゃあこれはどうかな? 」

男は手のひらから強い光を放つ

パァア――

―こいつ、魔法が使えたのか―

「――ッ」

発光した光の眩しさから、私は目をギュッとつぶってしまった。

次に目を開けた時、男は懐に入り込んでニヤリと笑っているのが見えた。


グサッ!

……ドサッ

お腹に鋭い痛みが走った。

ナイフを引き抜かれ、同時に崩れ落ちた私は地面に倒れた。


「所詮、素人のあんたが俺に勝てるとでも? ハハッ!」

「サーシャ!! 」

少年の声と結界を叩く音が遠くに聞こえる。


「……クッ」

刺された所が熱い。うずくまった私の呼吸は荒くなった。


―少年もこの痛みを感じてたのか―


「アハハッ、一撃入れただけで喜んじゃってさ」

私は痛みを堪え、笑いながら立ち上がる。

少年が笑っている姿や、いじらしい姿の瞬間が脳裏を過っていく。


―この子を守ると決めたじゃないか。笑え。そしてこいつを叩き潰せ―

握りしめた拳を胸にトントン叩くと、体の奥から魔力が溢れ出てきた。

まるで、縛られていた魔力が解放されたみたいに……。


ビュゥウウ――

私から突風が吹き荒れ、体は熱いのに心がどんどん冷たくなっていくのが分かる。

まっすぐ男を見つめた私は、手をスッとかざした。

ザザッ――


「面白れぇ」

突風に、ふらついた男の足が数歩後ろに下がったが笑っている。


「お前を消す」

私が低い声で呟くと同時に、魔法陣をババッと複数同時展開させていく。


「ガハッ! ゲホッゲホッ」

口から赤いものが流れるが、不思議と痛みも感じなかった。


【危険! 体が耐え切れません】

【維持結界解除を推奨します。行いますか】


―しないわ。ふざけないで―


ドドドドドッ!! 

魔法陣から放たれた光は男を捕えようと連続で発射される

男の頬と腕にかすり傷しかつけれなかった。


「ガキ一人居なくなるくらいで、本気になるなよ」


男の一言を聞いた私は、『プチッ』と何かが頭の中で弾ける音がした。


ブワッ――

ズッズズ……


私を包んでいた光の魔力から、漆黒と紫色の魔力に変わる。


「サーシャ!! 」

「な、なぜお前がこの力を――! 」


―私にも分からないわ―


『消えろ』

『悲しい』

『許さない』


黒く紫色の光は、か細い声を発しながら帯状に形成し

クモの糸のように男を囲んでいく。


「やめろ! お前……何者だ」


黒い光が男をまとわりつき、徐々に包み込んでいく。

ガハッと男が血を口から吐いた。


「ロキ、お前を探してる奴は他にもいる。楽しかったぜ……相棒――」

ズズッと完全に男は黒い球体に飲み込まれた。


私は最後の力を振り絞り、

グッと力を込めると開いた手をギュッと握りつぶし拳を作った。


「散れ」

黒い球体は外側から、ピキピキッと割れていき


パァァァアン!!

爆発音と共に爆風が辺りを大きく降らし、

パラパラと宙へと舞う黒いチリに変わった。


「ハァハァ……お、終わった」

私は全身の力が抜け、膝から崩れ落ちその場に倒れた。


ダダダッ――

「サーシャ !! お前、血が――」

「大丈夫よ。帰ろう」

「大丈夫な訳ねぇだろ!! 喋んな、血がやべぇんだから! 」


―守れてよかったわ―

震える手で転移ボタンに触れ、いつもの部屋に戻ると

家に帰れたという安心から、私の記憶はそこで途切れた。


     ◆


「サーシャ! 起きろ! 嫌だ、死ぬな!」

いくら揺さぶっても、目を開かない。

青白い顔になっていくサーシャの手にそっと触れるがとても冷たい。


―ベッドに移動させてやりたいが、力が足りねぇ―


「俺なんかを助けなくてよかったのに……何でお前は――

外に出るんじゃなかった。お、俺が全部悪いんだ……ごめん」


呼吸はかすかに聞こえるが、弱くなっている気がする。


ボワッ……

サーシャの全身が柔らかい光に包まれ、光の小さい粒子が上へ昇っていく。


「え、なんだ? いやだ! 」

俺はサーシャへ覆い被さるように抱きついた。


撫でてくれた優しい手、声

今まで過ごしてきた思い出が駆け巡る。


―この人だけは、失いたくない―


抱きしめていた体が、徐々に小さくなっていくのを感じた俺は

サーシャの顔をゆっくり見つめようと体勢を変える。


サラサラと 髪が銀髪になっていく姿を見て目を大きく見開いた。


「え……」

上から下へ光が強く光ると、徐々に大人から知らない女の子の姿になっていた。


ガタッ

驚きと動揺で俺は、サーシャから離れた。

「誰だ? どういうことなんだ」


暫く呆然としていたクレールは、大きく首を振り静かに少女を抱えた。

ベッドに寝かせ、近くにあった布で口元の血を拭いた後、

刺された腹の傷を確認したが傷口はなくなっていた。


「お前……俺をずっと騙してたのかよ――」

白い布をグッと強く握りしめ、自分の頬を噛んだ。

綺麗な髪、目を閉じてもわかる整った顔。貴族みたいな子供。


―でもこいつは命をかけて俺を助けてくれた。それは事実だ。―


「あぁぁぁ! もう! どうなってんだ! 」

混乱が止まらず、頭を両手で抱え込む。


「うぅ……。ハァハァ――」

苦しそうな呼吸と表情が視界に入る。


「俺は、なんて無力なんだ……」

小さく呟やた俺は、汗を拭いてやろうと思いキッチンで水を桶に入れた。


ザーー


「何も出来ないクズじゃねぇか」

両手を付き溜息をつくと、視界に森で採っていたハーブが目に入った。


―そうだ、薬草を―――


「少し出てくる。すぐ戻るからな!」


俺は飛び出すように家を出て、森へ向かって走り出した。


     ◆


「あら、起きたわね。おはよう、お嬢ちゃん」

綺麗な紫色と赤いメッシュが入った長い髪。

紫と黒い細身のドレスに身を包み、漆黒色の長い棒を持っている。


―私は死んだの? ―


見渡すと黒く長い絨毯と上には、黄金色のシャンデリアが輝いていた。

意識がはっきりしだした私は、女性へ話しかけた。


「あの、少年は?!」

「無事だから安心して」


コツコツッと地面に音を響かせた女性は、微笑みながら一歩ずつ私へと近づいて来た。


「改めて、初めまして。私は闇の女神よ。あなた、無茶したわね」

「闇の女神様……?」


「上から見てて、少し助けちゃったのよ。あのままなら街が消えてたから」

「え?! 」

「あなたのお節介な性格。私、嫌いじゃないわ」


私は小さく首を傾げて、自分の両手と目の前の女神を交互に見た。

―あの黒い光は、一体なんだったの―


「最後、男を包んだ黒い光は……。女神様が? 」

「いいえ。あれは、あなたに残っていた闇煙。

何かと反応して暴れたのね」


長い髪を片手の指で遊びながら女神は言った。


「あの少年の呪いはもしかして」

「そうよ。あなたが予測してる事は当たってるわ。2種類かけられてた」


―呪いの一つは暗殺ギルド、もう一つは……。―

私は俯き、溜息をついた。

女神は目を細め、杖で地面を数回カンカンッと叩く。


「この先、あの少年を一生守ると誓えるかしら? 」


私はまっすぐ女神を見つめ、口を開いた。


「一生は分からない。でも決めたの、守るって」

「そう」

少しの沈黙の後、闇の女神は杖を小さく振るった。


「とりあえず、あなたに少し加護を与えとくわ。あとこの子と契約なさい」


ポンッ!


「また会えた! 歌のお姉さん !」

「あの時の妖精さん!」

あまゆいの種を渡してくれた妖精が目の前に現れ、フワフワと宙に浮いている。


「私、妖精ではないの」

「え? 」


パァア――

トスッ


宙に浮かんでいた妖精は、光に包まれると

地面に降り立った猫の姿に変わった。

トコトコと私の足元に来て、膝にピョンッと飛び乗ってきた。


「我、色々変えれるのだ! 」

―口調も声も変わるのね―


「この子は一体……? 」

私は子猫を撫でながら、女神を見上げる。


「とある監視と私の手伝いをしていた子よ。あなたに授けるわ。

優秀だから、今後はサポートしてくれるでしょう」


「ありがとうございます。大切にします」

「主! よろしくな! 」

ゴロゴロと子猫の声を聞きながら、女神を見つめたままの私は頭を数回下げた。


「またね。お嬢ちゃん」

闇の女神が目を細め、杖を大きく地面を叩く音が響くと

私は瞼を閉じた。


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