EP31. 少年と城下町へ
俺は魔法をかけてもらい、久々の街に来ていた。
サーシャはいつもとは違う少し良い生地の服と
いつもつけていないアクセサリーをしてきた。
理由を聞いたら
いい店の店員に、なめられないようにしたと言ってた。
「早く!早く!」
その場で駆け足する少年。
「あら、サーシャ!その子は?」
「親戚の子なんです。 ほら、挨拶して?」
「こん…にちは。」
「可愛いね~。 ほら、これ食べな!」
ふわふわの小さいパンを貰う。
「ありがとう。」
「ちゃんとお礼が言えるなんて、いい子ね!」
店のやつは皆、笑顔を俺に向けてくれた。
「お代はいくら?」
「いいんだよ!今後もよろしくねって事で!」
「お言葉に甘えさせてもらうね。今度沢山また買いにくるから!またね!」
「あいよ!またね!」
― 明るい空の下で街を歩いたのは何年ぶりだろうか。 ―
人と話すのがこわい。でもサーシャが悪く思われないように演じなくては
「今日はこの野菜が安いよ!」
商店通りを通る度、色んな人達がサーシャに話しかけていた。
「今日、天気が良くて良かったわね^^」
「あぁ。」
―なんで俺照れてんだ?-
きっと、途中からはぐれないようにとサーシャが手をつないで歩こうと言ったせいだ。
俺はこの手が好きだ。あたたかくて、優しい手。
だんだんと、本当の姿の時とは態度が全然違う店の人達に
反吐がでる気持ちを抑えながら歩いていく。
でも初めて人の目を気にしないで歩ける嬉しい気持ちもある。
複雑な感情がうずまいていた。
目的である一軒の服屋に入る。
「いらっ…しゃいませ」
平民の恰好を見て、挨拶があっさりしている。
―俺、こいつ嫌いだー
上から下を見てきて、ふざけやがって…。
だが店員は、サーシャのネックレスを見ると態度をガラッと変えてきた。
「子供用の服をいくつか見せてほしいのだけど。」
「ご案内致します!こちらへどうぞ。」
―なるほど…こういうことか―
「これと、それも。 あと秋冬の物があればいくつか見させてほしいわ。」
「なぁ、なんで今 夏前くらいなのに先の服も買うんだ?」
「時期がずれているのを今買うとね、 値切りやすいのよ^^」
小声で言ってくる
それから俺は着せ替え人形のように沢山洋服を着た。
秋冬用は結構大きめのサイズを買ってくれた。
「あなたの髪はとても綺麗ね~王子様みたいだわ」
途中、服屋の店主がほめてくれたが、何も響くものはなかった。
サーシャは金貨を数枚出した。
「残りはチップで。この子にお菓子や飲み物を出してくれてありがとうね。」
「いいんですか!?ありがとうございます!!」
「またお願いします!ありがとうございました!」
何度もペコペコお辞儀をする店員を後に店を出た。
「沢山クレールの服が買えてよかった!」
両手に紙袋を沢山持ったサーシャは疲れてそうだ…。
「ん、持つよ。」
「ありがとう^^でも大丈夫!」
「あ、このお金で向こうで飲み物買って待っててくれる?
その間、私収納してくるから。」
「分かった。」
― 魔法で収納を見られる訳にはいかないよな―
屋台の飲み物を二人分買って、噴水が見えるベンチに座った。
「遅い! あいつどこまで行ってんだ? お!これは中々うまい」
レモンとハチミツと、後何か果物の角切りがいくつか入っている、
……!!この気配。
俺は固まったまま動けなかった。
「なぁ、ここら辺で黒髪に赤目のガキ見かけなかったか?」
「さぁねぇ。見たことないわね~」
そして、聞き慣れた声
ハァハァ…息がうまくできない。
―やめろ…。嘘だ。―
心臓がうるさい。
気配を隠しながらの歩き方の癖。 あいつだ…
飲み物を持っている手に力が入る。
「クレール!お待たせ!」サーシャが走って来た。
「…。 早く帰ろう…。」
「どうしたの?串焼き食べたいっていってじゃない?」
「いいから!また、後で話すから。頼む…。帰ろう…。」
サーシャの手を取り俺は引っ張るように走り出した。こいつだけは巻き込みたくない。
黒づくめの男は走り出しだ少年と女の背中を見ていた。
「どっどうしたのよ…!!」
「うるさい!とにかく、今…やべえんだよ!」
ザッザッ 土の音を出しながら急ぐ。ワープ場所までもう少し!
「みーつけたぁ。」
ニヤァと笑みを浮かべ 私と少年の前に飛び出してきた男
「おばさんまた会ったね。あと、相棒もな。」
「…。」
あの黒づくめの男だ…。
「あら。お兄さん久しぶり。」
本能的にサーシャは少年を自分の後ろへ庇う形になる。
「そのガキが、俺が探してたガキだよ。」
ゆっくりこちらに近づいてくる。
足音が全然しない。 幽霊みたいだ。
「何言ってるんだい?黒髪でも赤目でもないじゃないか。」
「気配を消すような歩き方の癖。耳の形。あと俺は微量だが魔力の色が分かるんだ。」
「間違いない。お前、やっぱり生きてたんだな。ロキ。」
「ロキ…?」
「あぁ。話してなかったのか?こいつはロキ。
俺は暗殺者でこいつの世話してたんだ。
こいつ、自分の母親を殺すようなヤバイ暗殺者のガキなんだぜ?」
大きい声で笑いながら言う男。
「やめろ!! こいつには関係ないだろ!」
「だったらなんなのさ。何か事情があったんだろうよ」
「あとこいつ、この国の王族に毒を何回も仕込んでたんだぜ?
悪いことは言わねぇ。そのガキを俺に渡しな。 そうすればあんたの命だけは保証するぜ。」
―あの毒草…少年も絡んでたの?-
「嫌だね!渡しても兄さんの事だ。どうせ私もこの子も消すんだろ?」
「やっ・・やめろ…サーシャ!こいつにしたがえ…俺はどうなったっていいから。」少年は震えている。
「へぇ…。そんなにそのおばさんが大事なのか」ニィっと歪んだ笑みを浮かべた
「じゃあ、おばさんから消そうかな~!」
男は笑いながら、光る鋭い刃を腰から引き抜いた。
「お前ん中入ってた追跡の呪いが消えたって組織から聞いてよ。
死んだと思ったが死体がねぇ。ずっと会いたくて、毎日聞き込みしてたんだ。
会いたかった。会いたかった会いたかった!!…ロキィィイ」
狂気の顔で男が迫って来る。
―あの黒い物は暗殺者ギルド絡みだったのか―
魔法で刃物を無効化できない…この男のスキルは何なの…
防御結界を瞬時に何十層にもかける。
「硬いな。小賢しいことしないで、直接戦おうぜ?面白くないだろ?」
へらへらと笑みを浮かべながら、結界の周りをゆっくりと、ぐるぐる回り始める男。
「…。俺を出せ…。これは元々俺の問題だから」
少年は服の裾を掴みながら震えが止まっていない。
「…。何言ってるの?一人じゃない。私が居るから、大丈夫よ」
震えている手に自分の手を重ねる。
私は結界から一人で出た。
「分かったよ。だが、お兄さんと私だけで戦うのはどうだい?」
「ハッ いいぜ?遺言書く時間をあげようか?」
ナイフで遊びながら笑っている。
「暗殺者なのに、優しいじゃないか。でも必要ないよ。」
ドンドン!!
「おい!サーシャ!やめろ! 俺だけで戦うから!!だからこの壁消せ!
お前が入ってろ!」
「聞いてるか?!そいつはお前じゃ無理だ!!」
結界の中を力一杯叩いても、びくともしない。
「クレール! 私を信じて^^大丈夫よ」安心させようと微笑んだ
その時
ー!!
パラッ 頬横の髪が数本切れて舞った。
男がその隙をついて襲ってきたのだ。
パンッ! 私が張った結界に弾かれ、少し距離を離した男。
「なんだい?随分、卑怯じゃないか。」
「ただじゃれてみただけさ。」
「さ、戦いを始めようじゃないか^^」
―クレールを泣かせ…殺そうとした、この男を絶対に許さない!―




