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元アラフォーが皇女に転生?!元暗殺者の少年を拾ったので育てます!  作者: 桜月ふたば
第一章

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30/61

EP30. 二人でいざ、城下町へ!


サラサラの深い紺色のスカートに、トップスは細かい刺繍が入った白いブラウス。

胸元には、雫の形をした赤いルビーの石が付いた金色のネックレス。

鏡の前でヒラリと一回りした私は、小さく呟いた。


「よし。これくらいでいいでしょう」

「いいえ、マスター。足りません」

影武者の声に振り向くと、両手にはフリフリのドレスと豪華なティアラを持っていた。


「いや、城下町でそれ着けたら狙われちゃうから! 」

私は首と手を左右に大きく振った。


「ならば! こちらを! 」

片手をそっと引き上げられると、大きな一粒ダイヤの指輪をはめられた。


「店の者にマスターがなめられたら、後で私が駆逐します」

目がすわった影武者のオーラは熱かった。


―うーん。燃えてるねぇ―


「口を閉じてください」

素直に私がそっと口を閉じると、唇の上を何かが塗られた。


スッス――

「女の闘いは、リップからです」


―どこでそういう言葉を覚えたんだろう―

私は苦笑いを浮かべながら、感謝の言葉を告げた。


「普通に買い物するだけだからね。あ、そろそろ行ってくるよ」

そっとダイヤの指輪を外し、机に置くと急いで転移をした。


今日は、クレールと一緒に城下町へ初めて行く日。


「楽しみだわ」


いつもの家に到着すると、もう玄関前にクレールが立っている。


「お待たせ」

「ああ。お前、今日気合入っているな」

「お化粧も少ししたからね。さぁ! 私の手を取って」


クレールはそっと手を私の手のひらに置くと、フワッと光が二人を包み森から消えた。


「早く!早く!」 

その場で駆け足をしながら、私に満面の笑みを向けてくれるクレールが

まるで子犬のように見えて思わず私は微笑む。


二人で手をつなぎながら中央広場まで歩いていく。

青空には白い鳥が王都へ向かって飛んでいった。


「晴れて良かったね」

「ああ。本当に」

クレールは城下町が見え始めると、辺りをもの珍しそうに見ていた。


「あら、サーシャ! 今日はお化粧してるのね。そちらの子は? 」

「親戚の子なんです。ほら、挨拶して? 」

「こん、にちは……」

笑顔で見つめられるのが慣れていないクレールは、

一言だけ発するとサーシャの後ろに隠れた。


「人見知りだね。私の子供もそうだったわ~」

店主の女性は微笑みながら、クレールへ温かい眼差しを向けていた。


―クレールの手が震えているわ―

自分の洋服から伝わってくる微かな揺れに私は気づいた。

そっと、自分の手をクレールの揺れている手に優しく重ねた。


「また買いに来るよ。では……」

「あいよ! またね! 」


店の女性に別れを告げ、私達は最初に服屋へ向かう。

2人の革靴の音が、街の石畳とぶつかる音がカツカツッと小さく響いていく。

クレールは手をつなぎながら、空へと目線を向け物思いに更けていた。


―明るい空の下で街を歩いたのは、何年ぶりだろうか? ―


「今日はこの野菜が安いよ!」

「これ、新作の総菜だよ。持って行って」


商店通りを通る度、色んな人達がサーシャに話しかけている。

その間、俺はサーシャと手をつないでいる場所をジッと見ていた。

いつもなら、自ら振りほどくのに……。

まるで守られているかのような安心感に包まれている気がした。


―こいつの手は温かくて、落ち着く―

そう思いながら、フッと口元が緩んだ。


カランカランッ


目的である一軒の服屋に入った俺達は、扉の向こうの豪華な店の作りに驚いていた。


ガラスの鳥や天井には、キラキラ輝く宝石が付いているシャンデリア。

床には、ふかふかな赤い生地に金の刺繍が入った絨毯が広がっている。


―まるで、小さい城の中みたいだ―


「いら、いらっしゃいませ……」

平民の恰好を見た店員は、服を畳む手を止め俺らを下から上へ視線を運ばせていく。


―俺、こいつ嫌いだ―

思わず繋いだ手に力が入ったが、サーシャが軽く握り返してきた。

まるで『大丈夫よ』と言っているかのように……。


店員は、サーシャの胸元に光るアクセサリーを見た途端。

態度をガラッと変えてきた。


「お客様、どうぞこちらへ」

「子供用の服をいくつか見せてほしいのだけど」


シャッ

「どうだ? 」

「似合う!」

シャッ

「買います。買わせてください! 」

シャッ

「か、可愛い! 」


クレールがカーテンを開け新しい服を見せる度に、

テーブルに積みあがっていく子供服と靴。

そして、店員のテンションも積みあがっていった。


「あと秋冬の物があれば、いくつか見させてほしいわ」

「はい! よろこんで! 」

店員は二階へと走り出した。


―あきらかに買い過ぎた。金は大丈夫なのか? にしても、疲れたぜ―

ぐったりしたまま座り込んだ俺の隣に、サーシャも腰を掛けた。


「なんで今、夏前なのに先の季節に使う服も買うんだ? 」

「時期がずれているのを今買うとね、値切りやすいの」


それから俺は、今度は秋冬用の服をまるで着せ替え人形のように

沢山洋服を着ていく。

秋冬用は、なぜか結構大きめのサイズを買ってくれた。


「王子様みたいだわ」

途中、服屋の店主がほめてくれたが何も響くものはなかった。


会計になった時、サーシャは小袋から金貨を数枚出した。

「残りはチップで。この子に菓子や飲み物を出してくれてありがとう」

「いいんですか!? ありがとうございます!! 」


数歩歩いたサーシャは振り返り、目を細め店員に告げた。


「一つだけ。身なりで判断するのは店員としては失格よ」

「……も、申し訳ございません」


―サーシャ良く言った! スカッとしたぜ! ―

俺はニヤリと口角が上がってサーシャを見上げた。


何度も頭を下げる店員を背に、俺らは次の場所へと向かう。


「沢山クレールの服が買えてよかった! 」

「買いすぎだぞ、全部俺の服ばっかりじゃねぇか……」

「いいの! 言ったでしょ? クレールの服を買うって」


両手に紙袋を沢山持ったサーシャと俺は、視界に入った

噴水近くのベンチに荷物をドサッと置いた。


「このお金で、向こうの飲み物を買って待っててくれる? 

その間、私収納してくるわ」


「分かった」


―魔法で収納を見られる訳にはいかないよな―

屋台の飲み物を二人分買って、噴水が見えるベンチに座った。


「遅い! あいつどこまで行ってんだ? 」

俺はベンチに置いた飲み物を飲み始めた。


ズズーッ

「お! 冷たくて甘いぞ」

レモンとハチミツと、何か果物の角切りがいくつか入っている、


―……!! この気配。―


「なぁ、ここら辺で黒髪に赤目のガキ見かけなかったか?」

「さぁねぇ。見たことないわね~」


聞き慣れた声が後ろから聞こえてくる。


ドクッドクッ……


―嘘だ。嘘だと誰か言ってくれ― 


飲み物を持っている手に、自然と力が入る。


「お待たせ! さ、美味しいご飯食べに――」

サーシャが走って来た。


「帰ろう」

「どうしたの? 」

「いいから! また、後で話すから。もう帰ろう」


サーシャの手をグイッと引っ張った俺は逃げるように走り出す。


―こいつだけは巻き込みたくない―


黒づくめの男は、走り出す少年と女の背中を横目で見ていた。


「どっどうしたのよ……!! 」

「うるさい!とにかく、今ヤバイんだよ! 」


ザッザッ――

転移場所までもう少しの時、男の低い声が後ろから聞こえた。


「みーつけたぁ」 

ニヤッと笑みを浮かべた男は、私と少年の前に飛び出し立ちはだかる


「おばさんまた会ったね。あと、元相棒もな」

「あら。お兄さん久しぶり」

本能的にサーシャは、少年を自分の後ろへ庇う体勢を取った。


「そのガキが、俺が探してたガキだ」

顎をクレールの方へ向け終わると、ゆっくりこちらに近づいてくる。


「何言ってるんだい? 黒髪でも赤目でもないじゃないか」

「気配を消すような歩き方の癖。耳の形。

あと俺は微量だが魔力の色が分かる」


「間違いない。お前、やっぱり生きてたんだな。ロキ」


「ロキ……?」

「あぁ。話してなかったのか? 

こいつ、自分の母親を殺すようなヤバイ暗殺者なんだぜ?」

大きい声で笑いながら言う男。


「やめろ!! こいつには関係ないだろ!」

俺が叫ぶと、サーシャは手を広げて前に出るのを阻止してくる。


「だったらなんなのさ。何か事情があったんだろうよ」

「へぇ、動じねぇのか。悪いことは言わねぇ。そのガキを俺に渡しな。

そうすればあんたの命だけは保証するぜ」


「嫌だね! どうせ私もこの子も消すつもりだろ? 」

「や、やめろ……サーシャ。こいつに従え俺はどうなったっていい」


「……そんなに、そのおばさんが大事なのか」


トントントンッ

リズムよく、その場で軽く飛ぶ男は歪んだ笑みを浮かべた。


「じゃあ、おばさんから消そうか~ 」

飛ぶのを止めた男は笑いながら、光る鋭い刃を腰から引き抜いた。


「お前にかけた追跡の呪いが消えたって組織から聞いてよ。

ずっと会いたくて、毎日聞き込みしてたんだ。

会いたかったぜ…ロキィィイ」


ダッ――


―早い。これが実力のある動きなのね―

私は、男の刃物に魔力を放つが無効化できなかった。


「ハッ! 細工をしようとしたって無駄だ」


キィィィ――ン


パッパッ……

瞬時に何層も重ねたドーム型の結界が刃をはじき返す。


「硬いな。小賢しいことしないで、直接戦おうぜ」

笑みを浮かべながら、結界の周りをゆっくり回り始める男。


「俺を出せ。これは元々俺の問題だ」

「何を言ってるの? 一人で抱え込まないで。私が居るじゃない」

震えている手にサーシャは手を重ねた後、

ドンッとクレールの両肩を後ろへ押し出した。


「行ってくる」

「待て、行くな――!」


ブォンッ

サーシャは結界から出て、数歩前に進んだ。


「お兄さんと私だけで戦うのはどうだい?」

「ハッ! いいぜ? 遺言書く時間をあげようか? 」

ナイフで遊びながら、こちらを見つめ笑っている。


「暗殺者なのに、優しいじゃないか。でも必要ないよ」


ドンドン!! 

「おい、サーシャ! やめろ! 俺だけで戦うから!!この壁消せ! 」

「聞いてるか?!そいつはお前じゃ無理だ!!」

力一杯叩いても、びくともしない結界の中でクレールの叫び声が響く。


「私を信じて大丈夫よ」

安心させようと少し振り返り、微笑んだ瞬間。


「―ッ!! 」


パラッ……

頬横の髪が数本切れて風に舞った。


男がその隙をついて襲ってきたのだ。


パンッ!


ザッ――


私が自身に張った結界に弾かれた男は、飛び上がり後ろに着地する。


「なんだい?随分、卑怯じゃないか」

「ただじゃれてみただけさ」


―私は、この男を絶対に許さない! ―


「さぁ、戦いを始めようじゃないか」

私は深く息を吐き、両手を静かに構えて男を睨みつけた。


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