EP3. 魔法覚醒で壁をぶち抜きました
「皇女様。おはようございます」
「……おはようございます」
朝が来てしまった。
メイドがタブレットを踏んでいたが、すり抜けて透明になっている。
どうやら、私以外の人には触れられないみたい。
ぐーっと伸びをして椅子に座ると、身支度が今日も始まる。
―やっぱり夢落ちじゃなかった―
少しだけ希望を持って眠ったが、変わらない朝を迎えた。
やはりこれからこの世界で生きていかなければならないらしい。
「はぁ……」
鏡の前で溜息をついた。
昨日、注意したメイド達は私の部屋には居ない。
新しいメイドが身支度の手伝いをしてくれている。
―自ら別の場所へ異動したって聞いたけど、私そんなに怖かったかな―
◇
食卓へ向かうと、厳重態勢が引かれていた。
数人の兵が入口に立って居る。
―あんな出来事があったばかりだし、仕方ないよね―
見渡すと、昨日気になっていたメイドの姿が見えなかった。
「――それで、アイビーはどう思う? 」
ハッと我に返ると、食卓でパパが何か私へ質問を投げかけていた。
「えっと、はい……。いいと思います」
「そうか! お茶会でお友達が沢山できるといいな! 」
私は口にスプーンを運ぼうとした手を止めた。
―ん? 何ですと? ―
「気が変わらないうちに数日後、執り行うことにしよう!
おい、ルーカス! 招待状を送るようメイドに手配を」
「かしこまりました。すぐ手配いたします」
パパの横に立っていた執事のルーカスが、部屋から去ろうとした時
ガタッ
「……待って!」
私は、椅子から勢いよく立ち上がった。
「参加者は私が選びたいんだけど……ダメでしょうか? 」
「分かった。それでは、茶会はアイビーとルーカスに任せよう」
少し驚いた表情をしたパパとルーカスは、二人で顔を見合わせている。
この前、女神から聞く限りだと、私は母の死から消極的と聞いていた。
色んな人から心配されていたんだろう。
―差し出されるだけじゃなくて、自分で出来ることは自分でやりたい―
「お友達が沢山できるように頑張ります!」
「うむ! だがな、頑張りすぎなくていい。自然体で挑みなさい」
頭を優しく撫でながら笑顔でパパは言ってくれた。
「はい! 」
笑顔で返事をしたけど。
―友達ってどうやって作るんだっけ―
大人になってからは、仕事かゲームを通じてしか関係を築いてこなかった。
顔合わせからの友達作りなんて、何年もしていない。
正直、お茶会も友達作りも不安だった。
それからパパは執務へ。
私は午前に歴史、午後は魔法の授業が待っていた。
歴史の授業では、王族が代々魔物を討伐してきたという話を聞く。
聖女や召喚勇者のような存在は、この国にはいないらしい。
「ランクロッド陛下は、最年少で魔物討伐を成し遂げました。
歴代屈指の魔力量を持つ人物です――」
―私のパパ、強すぎる……。―
聞きたかった母の話は出なかった。
そのことだけ、少し引っかかりながらも授業は終了となった。
「はい。本日の授業は以上で終わりです」
「ありがとうございました」
グゥウ~~~……。
自分の部屋へ歩き出すと、お腹の音が通路に響いた。
―お腹空いた~。昼食は、部屋に持ってきてもらおう。―
部屋に戻ると、サンドイッチを頬張りながらタブレットを開く。
ステータス画面には現在ポイント「20」。
その下に新しい項目が追加されていた。
《創造系スキル解放条件:総合スキル50以上》
上限がいくつあるのかも、よく分からない。
画面を見ながら、溜息をつく。
―攻略サイトとかこの世界には無いし……まぁ、やるしかないか―
昨日の点滅していた赤いマークから、ガチャ画面に移動する。
そこを押すと、ルーレットボタンに切り替わった
「昨日、ログインガチャ回せなかったんだよね……」
呟くと同時に、指が自然に押していた。
――♪
【ログインボーナスを受け取りました】
【SSR:∞アイテムBOXポーチ(透過可能)を獲得しました】
「SSRって……∞マークついてて凄そう!」
透明化できる収納アイテム。試しに触れると、何もなかったように消える。
「え! すごい!」
引き出しにあった日記帳や、花瓶、大きなクマのぬいぐるみ……等
試しに色々出し入れしてみる。
「おおー! 本当に色んな大きさが入るんだ! 」
コンコンッ
「皇女様。次の授業の時間です」
「あ、はーい! 今行きます! 」
メイドの声を聞いた私は、引き出しの一番下にポーチを閉まった。
「……もう行かなくちゃ」
もっと試したい気持ちを抑え、私は次の授業へ向かった。
「ごきげんよう、皇女様」
「ごきげんよう先生」
魔術のキートン先生。
毒草の件で調査すると言っていた老人と
同じ星の形をした銀色のバッジを胸に付けている。
ハーフエルフとメイドから聞いていたが。
エルフの特有の長い耳ではなく、人間の容姿をしている。
室内にある黒板には、すでに沢山の数式が書かれていた。
―数学苦手なんだけど、授業についていけるかな―
「前回はマナを放つ練習でしたが、宿題はやってきましたか?」
「宿題……?」
―どうしよう。入る前の記憶はないから分からないよ……―
動揺して目が泳いでいると、先生は一歩前に出て真剣な顔に変わる。
「では、マナを1メートル放ってみましょう。手を前に!」
言われるがまま、手をまっすぐ前に出す。
なんとなく、前の世界のイメージがよぎった。
―えっと、一箇所に集めて……放つ―
シュゥウウ――――
どんどん風と光が絡まり、手の前に集まってくる。
「皇女様? そろそろもう……」
先生に言われて、放とうと手をグッと前に出した。
―あれ? 放てないし、止まらない……! ―
「皇女様もう大丈夫ですよ! 止めてください」
「いや、止め方が分からないんです――」
手を下ろそうと抗ってみるが、固定されるように固まっていて動かない。
キィィインッ!!
私が作り出している塊みたいな光へ先生が魔法で阻害しようと、
魔法を何度も放つ。
「何故なんだ!クッ、ダメだ……弾かれしまう」
先生の呟いた声を聞いた私は心の中で叫んだ。
―誰か――これ止めて――! ―
「危ない!! 」
キートン先生が大声で後ろから叫ぶと、部屋全体が発光した。
思わず目をギュッと瞑る。
パァン!!
弾けるような音と、手からの衝撃破で後ろに倒れ込む。
「いたた……え?」
目を開くと、部屋の壁は綺麗に消えて青空が広がっている。
【ポイントを獲得しました】
その瞬間、通知音が頭に小さく響いた。




