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元アラフォーが皇女に転生?!元暗殺者の少年を拾ったので育てます!  作者: 桜月ふたば
第一章

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EP2.  朝食に毒を盛られましたが、チートスキルで回避しました

「声を荒げて申し訳ございません。

その野菜。嫌な予感がするので……食べないでもらえますか?

念の為、詳しいものに調べさせてください」


椅子へ静かに座り直した私は、一斉に向けられた視線が恥ずかしくなり目を伏せた。

根拠もない。頭の中で警報音が鳴ったことも、野菜が光って見えたことも説明できない。


それでも、どうしても止めなければならない気がした。


「誰か、この野菜を調べてくれ」

陛下はすぐ側に居た執事へ命じた。


「娘が初めて自ら声を上げたのだ。よほどのことなのだろう」

その言葉に胸を撫で下ろす。


―よかった、信じてもらえたみたい―


「アイビー、他に気になることはないかい?」

「いえ……。それだけです」


そう答えた瞬間、頭の中で鳴り続けていた警報音が消えた。

どうやら最悪の事態は避けられたらしい。


しばらくすると、一人の老人が食堂へ入ってきた。

片手に長い杖を持っている。魔術師だろうか?

老人は野菜へ手をかざす。

すると一種類の葉が宙に浮かんだ。


ジュッーー 。パラパラ……

次の瞬間、目の前で紫色から黒く変色し崩れ落ちた。

老人は体の向きを変え、深々と頭を下げる。


「陛下。大変申し上げにくいのですが、これは毒草の一種で間違いありません」


ガタッ!

「なんだと?! 」

陛下は大声で叫ぶと同時に怒りに満ちた表情で、椅子から勢いよく立ち上がった。


「即座に症状は出ません。しかし一定量を摂取することで、体を蝕む類の毒です。

発覚しづらく、長期間の使用を前提としたものでしょう」


老人の声が低くなり重く響く。

「直ちに原因と主犯を調査いたします」


バリンッ!!

「ころす……絶対にころす…」

陛下が握ったグラスが砕け散った。


「わが娘にも同じ草を出しやがって……。クソが……! 」


―ひっ!血が出ないほど手の皮厚いんかい!こわい……―



「陛下……皇女様の前でございます」

陛下の後ろに居た執事の恰好をした初老の男が口を開いた。


「ゴホンッ。そうだな、声を荒げてすまない」

すると先ほどまで鬼のような顔をしていた陛下が、一瞬で笑顔になった。


「助かったよ、アイビー! 」

目を輝かせながら、こちらを見つめる。


「本当に可愛くて賢い娘だ! 我が娘は最高すぎる! 」


―さっきとの温度差がすごい。でも、良い人みたい―


「悪い奴らは、パパがこの拳でお仕置きしておくから安心するんだぞ!」


―拳……強そうね―


私は、さっき砕け散ったグラスを思い浮かべ苦笑いをした。

老人が騎士へ何かを耳打ちし、部屋を出ていこうとした瞬間。

入口付近にいたメイドの一人が目に入る。

彼女の手は小刻みに震え、顔色も明らかに悪い。


―もしかして、あの人?―

でも、証拠はない。私が見たのは震えている姿だけだ。

余計なことを言うのも違うだろう……。私は黙って視線を外す。

その後は、当たり障りのない会話をしながら朝食を終えた。


部屋に戻ってきた私にメイドがやってきた。


「本日の授業は、朝食の一件で一日無いことになりました。

自由にお過ごし下さい。」

それだけ告げて部屋から出て行った。


「ふう~~疲れたあ……」

―毒殺未遂とか聞いてないよ、なんなんだ……この世界は―


「神様いるなら説明してよー!」

私は、天井へ向かって叫んだ。


その時。

パチンッ!


音が鳴った瞬間、目の前が真っ白な世界になった。


「えっ!?」

慌てて周囲を見回していると、少し離れた場所に小さな女の子が見えた。

緑色の長い髪に透き通るような白い肌。

しゃがみ込んで泣いている。


「大丈夫?」

近くに歩み寄り、後ろから声をかけた。


「ご、ごめんなさいぃぃ……」

私と目が合った瞬間、さらに泣き始める。


「えっ!? と、とりあえず泣き止もう?あなたの名前は?」

すると少女は慌てて涙を拭いた。


「私は緑の女神、ファーリルと申します。

私が悪いのです……。

皇女様が辛そうだったから、あなたを器に入れたのです……」

俯いて、また涙を流している。


―え、器? 何を言っているの? ―


「女神……?私は、元の世界には帰れないの?」

ファーリルは小さく首を横に振る。


「……。帰れません」

私は思わず額を手で押さえ天を仰いでいると、ファーリルは青ざめた。


―予想はしていた。でも実際に言われると……―


「そっか、それじゃあ仕方ないね」

私は、微笑むと女神はキョトンとして固まっていた。


心残りは、ガチャ引きたかった事くらい。

それ以外は意外と思い浮かばなかった。


両親も、もういない。一人暮らしと仕事の往復。

だからだろうか?自分でも驚くほど冷静だった。


「今の状況を説明してほしいな」

ファーリルは何度も頷いた。


「もちろんです!」


そうして彼女から、この世界の話。ルイーナ王国や皇女の話を聞いた。


「お母様は、私が幼い頃に亡くなっているの?」

「はい」

魔物討伐で母が命を落とし、皇女は心を閉ざした。

それから父は、娘を守ることだけを生きがいに……という事らしい。


――朝食の様子を思い出し、なんとなく納得した。


―だからあんなに溺愛してたのか―


「皇女様は生まれつき特別な祝福を受けています」

「祝福?」

「はい。全属性への適性です。

ただし光と闇は隠蔽されていますので、他人には見えません」

「そうなんだね。なるほど」


女神が言い終わると、手を差し出した。

淡い光が集まり、一枚の薄い板になる。スマホに似ている。


「それと、こちらをお渡しします」

タブレットのような、スマホのような物を差し出された。

「スマホ?」

「いえ!違います」

見れば見るほどスマホだった。


「今後必要な情報はこちらで確認できます」

受け取った瞬間、画面に文字が浮かぶ。異世界なのに文明レベルが高い。


「詳しい説明は少しずつします」

ファーリルは真剣な顔になった。


「急がなくても大丈夫です。

まずは、この世界で生きることに慣れてください」


その言葉を聞いた私は、静かに頷いた。

確かにその通りだ。初日から情報を詰め込まれても覚えきれない。


「分かった」


まずは生きる。そして少しずつ、この世界を知っていこう。

そう思った瞬間。

先ほどまでいた空間から、瞬時に私の部屋の景色に戻った。


私の中で、異世界生活への不安よりも期待の方が大きくなった。

手元には一枚のタブレットだけが残されている。


「……まずは異世界生活か」

画面を開く。すると右上に赤い通知マークが表示されていた。


【未確認のお知らせがあります】


「ん?」

私は何気なく、そのアイコンを押した。

画面いっぱいに金色の文字が表示された。


【ログインボーナスを受け取れます】



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