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元アラフォーが皇女に転生?!元暗殺者の少年を拾ったので育てます!  作者: 桜月ふたば
第一章

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28/61

EP.28  暴れ馬vs第一皇女


パラッ


「うぅ……。終わらないわ」

私は自室で、第二回目お茶会リストの確認と参加者の絞り込みをしていた。


朝食の時に、ルーカスから言われた言葉を思い出す。


『皇女様。リストは、ご覧頂きましたでしょうか? 

二回目のお茶会は、いつなのか問い合わせが多く――』


そして、追加のリストの束を笑顔で渡された。


「お茶会が好評だったのは、ありがたい話だけどさ」

チラリと減らない書類の束を見て、私は溜息をついた。


「この100人以上から絞るの大変だよ……」


―もうこの際、今回は女子限定にしちゃおうかな? ―


私は、デイジーと仲違いしたエリーナに印をつけ

その他は取り巻きではなさそうな令嬢を何人かに印をつける。

それからメイド長を呼ぶと、印をつけたリストの束を渡した。


「皇女様。かなり今回小規模ですね。」

「えぇ。人数が多すぎても、お話できないからね」


―参加者が今回12人だから大丈夫でしょう―


部屋の入口から見えたのであろう、机の上にある残りの書類を見た

メイド長は目を大きく見開いた。


「いつもながら、すごい量ですね」

「だよね」


「陛下には、この書類の3倍を渡していました」

「え! 3倍?! 」


メイド長は何度か頷いた。


「そりゃあもう、ルーカスは元――ッ! 」

笑顔から一気にハッと、『やらかした! 』という表情に変わった。


「元、何? 教えて」

「い、いえ。私は別の仕事がまだありますので、失礼いたします」

「あ、ちょっと――!! 」


パタンッ

メイド長は、逃げるように消えてしまった。


「気になるじゃないの!! 」

私は、静かに閉じられた扉に向かって叫んだ。


「はぁ…これ以上考えても無駄ね。今日のガチャ回そうかな」


モヤモヤを抱えたまま、タブレットの画面に触れると

【本日のガチャはありません】


「え? 」


ポチッポチ……

何度も別の所から切り替えて押しても、変わらなかった。


―とうとう、引けなくなってきたのね―


「分かってたことだけど、思ったより早かったわ」


残念な気持ちになりながら、そっとタブレットを机の引き出しへしまい

次の授業の支度をして部屋から野外へ歩き出した。



「皇女様。ごきげんよう」


今日は、乗馬の授業。本来、王族で女性の場合は必要ない。

でも、いざという時。この世界には車もバイクもない。

魔法以外の移動手段として、乗馬を習いたいと前からパパに話していた。


サクッサクッ

芝生の上を歩きながら、先生と馬小屋へ向かいっていると

振り返った先生は不安そうな声で口を開いた。


「皇女様。本当によろしいのですか? 」

「ええ」

「無理だと思ったら、すぐ仰ってくださいね」


「ヒヒーンッ」

徐々に馬の鳴き声と、乾いた草の香りが強くなってきた。


「この中から、皇女様が気に入った馬をお選びください」


馬小屋に到着した私が中に入ると、

軍事用の馬を除いた10頭の馬が両側の柵にそれぞれ立っていた。

どの馬も、毛並みや目が綺麗で大人しい印象を受ける。


―うーん。ピンとこない―


それにしても気になることが、1つある。

奥から、ガタガタッとバケツが転がる音が何度も聞こえてくる事だ。


「……」

「皇女様! そちらは――!」


コツッコツッ……

革靴が馬小屋の中で、小さく響く。

私は、騒がしい音の方へ歩き出していた。


一頭の馬が、バケツを蹴り飛ばし。

寝床に使われている草を、まき散らしながら暴れている。


「おやめなさい」

―どうしたのよ。この馬―


ブルルルルッ!! ガタッ!ガタガタッ!

さっきよりも大きく暴れ始めた馬に、私は首を傾げた。


「皇女様!そんな近くにいては危険です!! 」


私は先生を静止させるように、手を斜め後ろへ下げた。

先生の叫び声を背に、私は更に先へと歩みを止めずに進む。

ついに目の前まで移動して話しかけた。


「あなた。いい度胸してるわね」


馬は私を見下ろし、明らかに馬鹿にしたような目と

フンッと言わんばかりの表情で勢いよくそっぽを向いた。


カッチーンッ!

私の中で、久しぶりに導火線に火が付いたようなゴングが鳴った。

―へ、へぇ。そっちがその気なら……―


ダンッ!!

私は、片足を思いっきり地面に踏みしめた。

周りの馬が、一斉に耳をピクピクさせて静かになる。

両手で柵をガシッと掴むと、馬がビクッっと体が動いた。


「おい。今すぐお前を、調理してやろうか? 

私、大好きなのよ馬刺し。お酒にも合うし」


馬の目をまっすぐ見つめ。真顔のまま首を傾げた私は低い声で囁いた。


「……ヒィン」


馬が、か細い悲鳴を上げたかと思えば、急にバケツを足で蹴るのを止め。

トコトコと静かに部屋の隅っこへと移動していく。


コトッ

乗馬の先生は驚きのあまり、手に持っていた乗馬用の帽子を地面に落とし立ち尽くしている。


「う、嘘だろ……5人掛かりでも大変だった馬を……。

皇女様が近づいたら、大人しくなるなんて」


「私、この馬にしますわ!」

私は、笑顔で振り返って伝えると乗馬の先生は駆け足で近づいてきた。


「な、なぜです!? 」

「一番、元気だから! 」


――少し時を巻き戻そう。


私は、この馬の声が途中から全て聞こえていた。


「おい、おい!へなちょこ馬野郎共!なんで大人しい振りしてんだ!

馬なのに猫かぶりかよ! 」

「外で走れる時間なのになんで俺を閉じ込めてるんだ!!クソが!! 」


「今日の餌もクソまずかった! もっとうまいもんよこせ! 」

「なんだ、このチビ。偉そうに!

気に食わねぇから威嚇して、さっさとこの時間終わらせてやる! 」


「やべえ……このチビ。只者じゃねぇぞ、こわっ」



―女神様。馬の声って聞こえるんですね―


飼育員兼、乗馬の先生が近くにいたから、会話は出来なかったのだ。



「こちらの馬がいいかと思ったのですが」

一番きれいな馬をお勧めしてきたが、私は首を横に振った。


「いいえ。この馬でお願いしますわ」

「外に出しますので、少々お待ち下さい」


何度も振り返って、チラチラと止めるなら今だよ?と言わんばかりに見てくる。


「やったぜー! 俺だけ外ー! はいーお前ら残念!! 」

しっぽをブンブン振りながら、リズムに乗るように登場してきた。


―この馬……煽るねぇ―


「先生。乗る前に一回近くに行きたいわ。」

「少し離れてなら……危険だと思ったら、すぐ離れてくださいね? 」


私はゆっくり馬に近づく。


「んだ?! チビ! お前まだいんのかよ! 

子守りは別の馬にしてもらいな! 」


少し暴れ始める馬。 先生が手綱を握り直す。


「やはり止めましょう! この馬は危険です! 」


「こんにちは、お馬さん」


次の言葉から私は囁き声に変えた。


「私と友達になってくれるなら、

美味しい食べ物を沢山あげれるんだけど。どう? 」


馬の耳がピクピク反応している。


「本当か? 嬢ちゃん。嘘じぇねえだろうな? 」


ブルルルッ 低く鳴いているが、もちろん私にしか聞こえていない。


「先生に怪しまれたくないから、撫でながら話すわよ?」

「チビお前! 俺の声分かって……いいだろう」


私は小さな手で馬の顔をゆっくり撫で始める。


「なぜだ……奇跡が起きている」

その光景が信じられない先生は、それ以上何も言葉が出てこなかった。


「餌の件は本当よ、不味かったってあなたから聞いたし。

餌はずっと不味いの?」

「あぁ。軍事用の馬の食べ残ったやつとか混ぜられてよぉ。

クソ不味いぜ」


「そう。私はアイビー、この国の第一皇女よ。あなたは?」

「俺は番号で呼ばれていたから名前はねぇ。あるとしたら3番だ」


「次会う時、名前を私が決めて良いかな? 」

「勝手にしろ! それにまだお前を信じてないからな! 

餌まともなのよこせよ! 」


それから先生と一緒に、大人しくなった3番の背中に乗り何周か走った。

途中、途中で馬の鳴き声が草原に響いた。


「おい! 嬢ちゃん! 聞こえてんだろ? 無視すんな! 」

「餌! 赤い甘い奴とか入れてくれ! 後、紫のあまいやつとか! 

後な……」


餌のリクエストをひたすら語りかけてくる姿に、私は笑いを必死に堪えていた。


授業が終わると、私は厨房へと向かった。


―馬の餌は、軍事用と普通使い。どの位大差があるのかしら―


「こちらです」

ずらっと並んだカゴの中を一つ一つ覗き込んだ。


―どういう事? 全部、均等に入っているわ―


「ねぇ、この餌は間違いないの? 」

「はい。何かありましたか? 」


「私の専用馬が、普段使いから決まったの。

餌を運ぶ時は、普段使いからにして欲しいと運ぶ人に伝えて頂戴」


「後、リンゴとブドウをおやつに与えてほしいわ。1週間に数回で良いから」

「分かりました。そのように伝えておきます」


―これでとり合えず、様子を見ましょう―


その後、軍事用の係員が交代させられたという話が

私の耳に入るまで時間はかからなかった。



「食事が美味かった! 嬢ちゃん怖かったけど、話せて良かったぜ! 」

3番は翌日から太陽の下、元気に走り回っていた。



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