↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元アラフォーが皇女に転生?!元暗殺者の少年を拾ったので育てます!  作者: 桜月ふたば
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
26/61

EP26. 働く喜びと、あたたかいご褒美


「……ハッ! ハァハァ……またこの夢かよ」

髪をぐしゃっと掴みながら、眉間にしわを寄せた。

たまに酷い夢を見ては、目覚め悪い朝を迎える。


「もう……朝か」

重いまぶたをこすりながら、ゆっくり窓へ目を向ける。

外は、朝の陽ざしが木々の隙間へと静かに差し込んでいた。

俺は頭がボーっとしたままベッドから起きだす。


顔を洗い、他国の文字が刺繍で刻まれているフカフカのタオルで拭く。

鏡を見ながら、サーシャに言われた一言を思い出す。

『あなたの名前は、クレール』


「クレールか……これが最後の名前だといいな」

フッと口元が緩み、俺はキッチンへ向かった。


朝食を作り、テーブルに並べて手を合わせる。


「いただきます」


今日は温めたパンと牛乳、ベーコンと野菜を炒めた物。

『野菜も食べなきゃダメよ』

そう言われてから、何となく一人の時も野菜を口にするようになった。

部屋にフォークが皿に当たる音が小さく響く。


―サーシャが居ない家は、とても静かだ―


「それにしてもあいつ、ちゃんと眠れてんのか? 」

夜来る時は、笑ってるけど疲れていそうな顔をしてるし……。

俺が寝てから帰ってる。


皿を片付け、着替え終わると家を飛び出た。


ガチャ


ダッ――

それから俺は鍛錬時間を短くして、午後はウサギを追いかけていた。


パーンッ!


ズサー……。


「……ッ! 痛ってぇ」

透明な壁に弾かれ地面に転がる。


コンコンッ

「この透明な壁って結界なのか? 」


両手で確かめた後、蹴っても魔法を打っても全て弾かれてしまう。

首を傾げていると、さっき追いかけていたウサギは

その壁をすり抜けて、透明な壁の向こう側へ走って行った。


「いけねぇ! 取り逃がした」


空がオレンジに染まり始めた時、やっと捕まえたウサギと

近くで見つけた野草と木の実を家に持ち帰った。


ザ――


トントンッ


「野営した時に、良く作ってたな」

出来上がっていく鍋を見ながら小さく呟いた。


―たまには俺が料理したっていいだろ。その分あいつが休みをとれ……―


「いや。これは俺が久々に食べたいと思ったからで、

あいつの為とかじゃねぇ! 」


首を大きく振り、鍋をかき回す速度がどんどん上がっていく。


「ッチ! ……骨は一応取っておくか」

鍋からせっせと小骨を取り始め、森で採った木の実をすり潰して入れる。


「出来たぜ」

キノコと肉を塩で焼いたもの。骨と一緒に煮込んだスープ。

フライパンで焼いた簡易的な薄いパン。


鍋に蓋をしたクレールの顔は、満足気に微笑んでいた。


     ◇


今日の授業を全て終わらせていた私は、自分の部屋で準備をしていた。

「マスター。いってらっしゃいませ」

「いってきます! 」


シュッ


「よっし! 頑張るぞ! 」


―今日は、田島食堂で初勤務日! ―


カランカランッ


「あら! サーシャ」

「今日からよろしくお願いします!」

「ああ。今日から、よろしく頼むよ! 清掃と皿洗いを頼む」

「はい!」


与えられたエプロンを着て、奥さんから一通り説明を受けた。

厨房では、店主と奥さんが一緒に協力しながら手際よく仕込みをしていた。


トントン

ジューッ――


包丁の音とフライパンで焼いている音が店内に響き渡る。


―お腹空いて来ちゃったわ―


「さて、開店前に綺麗にしないとね!」

腕まくりをする私は、店内を見渡した。


片手を前に出し、目を閉じると温かい魔力が自分を包んでいく。


―室内だから集中しないと―


一呼吸した後、目を開くと、足元からドア前へ向かって汚れが

高圧洗浄をかけたように綺麗になっていく。


―よく見ると、椅子の高さも違うしテーブルが欠けているわね―


「修復」

私が小さく呟くと、店内のテーブルと椅子がカタカタッと揺れ始めた。

揺れが収まると、白い光に包まれて新品のようになった。

部屋を見渡すと、すべての家具が新品になってしまっていることに気づく。


「あ……。やりすぎたわ」

ゆっくり厨房の方へ視線を向けると、田島ご夫婦が騒ぎ出した。


「あなた! 鍋が!! 」

「見てみろ! フライパンが! 」


ガタガタッ……

厨房から店内へ、田島夫婦がやって来た。


「サーシャ! あなたの魔法なの?! 」

「そうみたいです……張り切りすぎちゃいました」

私が苦笑いすると、夫婦はお互いの顔を見つめてキョトンとしていた。


―どうしよう。何も言わないから気まずい……。―


「フッ、フハハハ!! こりゃすごい! 助かったよ。ありがとうな」

店主は大声を上げて豪快に笑った。それをみた奥さんも笑顔に変わる。


「まさか、これほど魔法が上手だったとはね。ありがとう」

「い、いえ! 喜んでもらえたなら良かったです」


ポッポーポッポーッ♪

鳩時計が開店の時間を知らせた。


「あなた! そろそろ開店よ! 

サーシャさん。外の小さい看板をひっくり返してきてくれる?」

「はい! 」

私は、外にかかっていた看板をOPEN! に変えた。


「いらっしゃいませー! 」

開店してから、お客さんがどんどん入ってきて忙しくなる店内。

私は皿洗いの他に、飲み物を作る役割も与えられ注文をこなしていた。


―忙しいけど、働くのって楽しい! ―


時間があっという間に過ぎ、飲み物を作っていた私へ店主がやって来た。


「一段落ついたから、少し休みな! 賄い何がいい? 」

「ポテトサラダと親子丼と焼肉定食のご飯を――」

「大盛ね? あいよ!」

もう私が大盛キャラだというのが、この夫婦には定着している。


―少し恥ずかしいな。でも待ってました! 賄いタイム! ―


「はい! お願いします! 」

カウンターに座り、ワクワクしながら待っていると、

美味しそうな匂いが近づいてきた。


コトッ

「はい! ご飯はおかわり自由だから沢山お食べ」

「ありがとうございます! 」


目の前に置かれた初の賄い。料理がより一層、輝いて見えた。

親子丼にスプーンを入れ、口に運ぶ。


「ん~! 美味しい」

思わず、そっと目を閉じ静かに頷いた。

半熟玉子と鶏肉の旨味、そしてお店のお米は甘くねっとりしていて

美味しい。焼肉の味付けも最高だった。


―米、米が進むわ~! 幸せ―

私は目を細め、あっという間に食べてしまった。


「ふぅ~ 美味しかった! ごちそうさまでした! 」

私は食べ終わった食器を片付け、仕事に戻った。


店内では、追加注文が増えていた。


「俺も、あの店員が食べたやつを追加で! 」

「私も! 親子丼追加で! 」

「あいよ! 」


「サーシャが美味しそうに食べてくれるから、沢山注文が入ったよ」

嬉しそうに話しかけてくれた店主。

「えへへ。良かったです」


ジュゥ――


―今日は唐揚げが大人気ね! ―

店主がフライヤーに沢山の鶏肉を入れて揚げている。

皿を洗っていると。暫くして、店主が近づいてきた。


「お疲れ!上がっていいよ!」

「はい。これ今日の分。」

小ぶりの紙袋を私の前に差し出す店主に私は首を傾げた。


―あれ、給与は要らないって言ったのにな―


「開けてもいいですか? 」

「あぁ」

入っていたのはお金ではなく、さまざまな色をしたクッキーだった。


「妻が作ったんだ。良かったら食べてくれ」

「はい! 嬉しいです! 」

「お疲れさん! またな! 」


奥さんへお礼を言おうと店内を探すと、注文を取っている最中だった。


―ありがとうございます―

私は心の中でお礼を告げ、店の外へ出た。


心地よい夜の風が、動いて温まった体を冷ましていく。


サクッ!

「これは、抹茶味ね! 優しい味で美味しい~」


―城のクッキーは、高級店みたいな濃厚な味だけど

家庭で作ったような、素朴な味も大好き―


「今度このクッキーのレシピ聞こうかな! 」


私は転移場所までクッキーの音を響かせながら歩いて行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。