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元アラフォーが皇女に転生?!元暗殺者の少年を拾ったので育てます!  作者: 桜月ふたば
第一章

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25/61

EP25. はじめての友達



「申し訳ございません! 本当に申し訳ございません……」

何度も謝る母親の声が、芝生が広がる地面に響く。


「デイジーから直接謝罪をされ、私は受け入れました。

この件はこれにて終わりにしましょう」


「ですが……」

やっと見上げた母親に私は微笑んだ。


―これ、罰を受けないと納得してくれないのかな―


「そうね……では、この焼き菓子をいくつか頂けない? 

あと、その猫を作った工房の住所を教えてくださらないかしら? 」

私は、デイジーの胸元にある猫のブローチに視線を向けながら話す。


「それだけでよろしいのですか……? 」

目を大きく見開いた母親は驚いた。


「ええ」


「はい! この件はこれにてお終い! 」

手をパンッと叩くと、私は母親に近づき笑顔で手を差し出した。


「さぁ、お立ち下さい」

「寛大なお言葉……。あ、ありがとうございます」

「この猫のデザインは、どなたがされたのかしら? 」

「依頼した異国の工房です」

「そう。教えてくれてありがとう」


―これで絞れたわ。落ち着いたら、その工房へいかなくては―

それから、私達はデイジーの部屋に移動して行った。


ガチャッ

「ここがデイジーのお部屋なのね」

案内された部屋を見渡すと、大きなぬいぐるみや

机の上に数字が沢山書かれた書類があった。


「この書類の束は……? 」


「工房の帳簿ですわ、といっても私が管理しているのは一部ですが

店に空き巣が入ってから、屋敷で帳簿は管理してますの」


一番上の書類には、訂正線と数字がいくつも書き足されている。


―こんな幼い子が帳簿を……すごいわ―


「すごいですわ! 手伝われているのね」

「女は必要ないとお父様から言われましたが、工房の皆さんの役に立ちたくて」

照れくさそうに笑みを浮かべるデイジー。

その書類の隣に、封筒が束になっているのが目に入った。


「この封筒もお仕事の? 」

「そ、それは――! 」

慌てたデイジーは、封筒を勢いよく引き出しにしまった。

私が首を傾げていると、我に返ったデイジーは頭を下げた。


「これは、婚約者からですの」

顔を上げたデイジーの頬は、少し赤らんでいた。


―あらら、可愛らしい―


それから部屋のソファーに座った私達は二次会のお茶を楽しんだ。

好きな本の話から、話題は恋愛話に移る。

デイジーは紅茶を一気に流し込んだかと思うと、少し目を閉じて話し始めた。


「私の婚約者は、別の方をお慕いしていますの……」

そう切ない声で切り出したデイジーは、

婚約者と嫌がらせをした令嬢が以前婚約していたという話をした。


「その二人は、今も会っているの? 」

「分かりませんわ……」

デイジーは首を小さく振った。


―家柄重視のこの世界。子供達は生きにくいわね―


「皇女様。婚約者はいらっしゃらないのですか? 」

「ええ。まだその話は出ていないわ」


コンコンッ

「皇女様。向かえの馬車が到着しました」

扉の向こうでメイドの声が響いた。


「あら、もうそんな時間」

「皇女様。あのっ――」

立ち上がった私に、デイジーは呼び止めて手のひらを差し出した。


「これは?」

手のひらを見ると、黄緑色の宝石が輝いていた。


―高そうな宝石。でも、とてもキラキラしていて美しいわ―


「異国の宝石ですわ。小さいですけど、今日のお茶会の記念に――」


―いやいや、小さくないよ? 前世ならショーケースに入ってるよ?! ―


「ありがとう! 嬉しいわ! 」

「実は、もう一つ持っているんですの。お揃いですわ」

宝石箱からもう一つを取り出し見せてくれた。


「もし、よろしければ……そ、その……私とお友達になってくれますか?」

「もちろんよ」

私は微笑みながら、令嬢の手を握った。


また手紙を書くと、お互いに約束して2人のお茶会は幕を閉じた。

見送りの時、デイジーの母親から紙袋いっぱいのお菓子と、工房の住所の紙を受け取った。


私は帰りの馬車に乗り込み、手を振ると

デイジーが笑顔で大きく手を振り返した。

その令嬢の頭を、愛おしそうに撫でる母親。


―いいなぁ。お母さんが居て―


帰りの馬車の中、貰った宝石を見ながら前世を思い出していた。


私の両親は転生する数年前に亡くなっている。

先に父が亡くなり。2年後に母も空へ旅立った。


―天国で二人は、笑いあって過ごしているだろうか……?―


「私この世界で頑張るから、見守っててね。」


窓から空を見上げながら、小さく呟いた。

オレンジ色の空が徐々に夜の色に染められていった。


     ◇


「もう一回! 」

「またですか……」


アイテムBOXの奥底にある一軒家。

影武者1号と2号は、ボードゲームで遊んでいた。


「また負けたぁああ!! 」

「片付けますよ」

カードを片付け始める1号は疲れている表情をしていた。


―これでもう50回は同じゲームをしている―


「えー。つまんなーい」

頬を膨らませジッと2号を見る1号。


「お茶にしますから、残りを片付けて下さい」

キッチンに向かった2号は、無数の棚の端の引き出しを開けた。


「この家は不思議です。キッチンにも各部屋にも沢山の収納棚があります」


―以前、1号が脱出してから毎日。

城で出されたお菓子は、ここに入るようになりました。

マスターはお優しい人です。―


焼き菓子を盛り、皿をテーブルに置いてから

お茶を沸かしていると、後ろからサクッという音が聞こえ振り返った。


「こら! つまみ食いしない!」

「ふぁ! 何で分かったの」


―もう、1号は子供みたいです。理解が出来ない事ばかり行う―

2号は溜息をついた。


コトッ

マグカップを2つテーブルに置くと、1号は目の前のお菓子を輝いたような目で見つめている。


「食べましょう」

「いただきまーす! 」


一通り菓子を食べ終わった1号が口を開いた。


「そういえば、あの鍵がかかってる部屋に何があるか知ってる?」

「あの部屋は、私も入れないから知りません」


「ふーん。今度さ、一緒に――」

「部屋の前に行かないし、開いたとしても入りませんよ? 」


―この流れ、以前もありました。またマスターにご迷惑をかけてしまう―


「まだ最後まで言ってないじゃん!! 」


私達は普段、マスターが出し入れしやすいように

日々、整理整頓をしている。

キッチンで使う物は、キッチンの大きい収納棚へ。

服や宝石類は、二重鍵が付いている収納箱へ。


だが、この地下室の部屋だけ私達は入れない。


「でも……一体あの部屋に、何が収納されているのでしょうね」


私達は、地面を見つめながらお茶を飲んだ。


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