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元アラフォーが皇女に転生?!元暗殺者の少年を拾ったので育てます!  作者: 桜月ふたば
第一章

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24/61

EP24. 二人だけの茶会と森の再生


「皇女様。着きました」

「ありがとう」


馬車からゆっくり降りると、目の前にはメイド数名とデイジーが出迎えてくれていた。


「本日は、お招き下さりありがとうございます」

「こ、皇女様。先日は、本当に申し訳ございません」


頭を下げる令嬢とメイド達。ドレスの裾を上へとあげた令嬢の手は震えていた。


―……かなり怯えられてる―


「どうぞこちらへ、ご案内いたします」


メイドの後ろを歩いていくと、屋敷の中は絵画や宝飾品が付いた花瓶、

白い陶器の置物がいたる所に飾られている。


ガチャッ……ギィィイ――


フワッ――

メイドが通路に面した大きな扉を開けると、風と共に花の香りが広がる。

中庭の中心には立派な噴水と、周りに赤いバラが咲いていた。


「とても綺麗な庭ですね」

「はい! ここは普段私が良く過ごす場所の一つですの! 」

先程まで怯えていた令嬢は、パァッと明るい表情に変わった。


カチャッカチャッ――


椅子に腰かけると、目の前に、メイドが美味しそうな焼き菓子や飲み物を置いていく。

紅茶とクッキー、果実が乗ったタルト、チョコレートがかかったフィナンシェ……。

どれも城下町で話題の菓子だった。


「私が誘っていたのに、連絡が出来ずごめんなさい」

頭を下げ謝罪をすると、デイジーはカップを置き左右に手を振った。


「い、いえ! 陛下が討伐に向かった話も聞いてましたので、お気になさらず」


私は手を軽く上げると、メイドがデイジーへ箱を差し出した。


―気に入ってくれたいいんだけど―


「これは……? 」

メイドから箱を受け取ったデイジーは、私を見つめ首を傾げた。


「開けてみて」

私が微笑みながら言うと、令嬢は渡した小さな箱をゆっくり開ける。


「か、可愛いですわ!! こちら、どちらでお求めに?」

キラキラした目で、髪飾りと私を交互に見る令嬢を見て私は微笑んだ。


「いえ、知り合いに作らせましたの」

「そうだったのですね! この猫は珍しいと言われてたので気になって」


それから、好きなお菓子や本などの話をした。

私はカップの飲み物を一口飲むと、本題を切り出した。


「お聞きしたい事があるのですが、この猫はどちらでお知りに? 」

「私の誕生日の時に職人に作らせたとだけしか、分かりませんの」


―なるほど、作らせた職人か両親のどちらかってことかな?-


「そうだったのですね。この猫が可愛らしく、気になってお聞きしたの」


「可愛いですわよね! 私の部屋にもあるので、ぜひ見ませんか? 」

「はい! ちなみに本日ご両親は、いらっしゃいますか?」


「……母がもう少しで帰ってくると思いますわ」

笑顔が消え、暗い表情に戻ってしまったデイジーは視線をテーブルに落とした。


「以前もお伝えしましたが、罰を与えることはありません。

軽く挨拶をしたいと思っただけなので」

私がそう伝えると、顔のこわばりが消え安心したような表情に変わった。


「そ、そうでしたのね!」

デイジーは、椅子に座り直して私をまっすぐ見つめ口を開いた。


「皇女様。改めて、ドレスを綺麗にして下さりありがとうございます。

実は、お母様の服をリメイクしたものだったのです」

「大事になさっていたのですね」


―もう一つの質問をそろそろ聞こうかな―


「……言いにくい事を聞いてしまったら、ごめんなさいね。

今まで、嫌がらせを受けたことは?」


一瞬、空気が止まったようにメイドも令嬢も動きが止まった。


「ありますわ」


それから、デイジーが今まで受けた嫌がらせを静かに聞いていた。

ルーカスから受け取った報告書通りだった。


「私はただ、普通に友達として過ごしたかっただけですのに」

令嬢の表情はどんどん暗くなり、俯いていった。


「他人を利用して一人に嫌がらせを行う……。

そういう人、私は本当に嫌いなの。私ならぶっこr――」


「ぶっこぉ? 」

令嬢が首を小さく傾げたのを見て、私は我に返った。


―危ない、素の私が顔を出しかけたわ。―


「コホンッ。いえ、最後の方は忘れてください」

私は微笑むが、周りのメイド達は察したように顔を背けた。


―周りを巻き込んで、嘘や陰口……。どこの世界でも居るものね―


一人のメイドが、後ろに控えていたメイドに耳打ちしていたのが聞こえた。

「奥様が……お戻りになられたようです」


暫くお茶をしていると、遠くから大きな声が耳に入ってきた。


「皇女殿下! 」

大きな声がする方へ視線を向けると、大人の女性が駆け寄って来た。

「お母様!」


「ハァハァ……」


ザッ――

地面に土下座をするデイジーの母親に、私は椅子から立ち上がった。


「あ、あの。頭を上げてください」

「奥様!! 」

屋敷のメイド達も慌てているが、皇女の前では駆け寄れない。


「先日、我が娘が無礼を働いた事。

親として躾が不十分だったと痛感しております。

申し訳ございませんでした」


「お母様……」

デイジーの悲しげな声が小さく響く。

母親は、暫く地面から頭を上げなかった。


     ◇


「芽吹け」

低い声に反応するように大地が揺れる。

ゴッゴゴゴ


ズッ、ズズ……

シュルルッ――!! 


焼かれた更地から、勢いよく一面に緑の植物が芽吹く。


「やはり、あの実は本物ね」

掌を見つめながら小さく呟く妖精王は、森で力を試していた。

アイビーからもらった実を食べてから、

力が以前より出せるようになっている。


「王様すごい! 」

「私達も頑張る! 」

~♪

芽吹いた緑のカーテンの上を、複数の妖精が歌いながら羽ばたくと

蕾がつき始め、すぐ花が咲き乱れて見事な花畑に変わる。


「蕾ちゃん達、手伝ってくれてありがとう」

「えへへ。頑張った! 」

微笑みながら、肩に乗った妖精を撫でていた。

その先に、深く傷ついた植物が視界に入り目を細めた。


「あら、この木もお疲れのようね」


ポォオ……

幹が傷ついている木は、緑の光に包まれ修復されていく。


―このまま力が全部戻ればいいのだけれど―

ギュッと握りしめた手に力を込めていた。


――実を貰った夜の帰り、私は闇妖精と話していた。


「なぜ、あの人間に種を渡したの? 」

「うーん。綺麗な光だったから! 」

「でも、悲しい光も持ってた。」

「あの子、元気がなかったもんね」


妖精はあまり深く考えない。そして、自分の気持ちに素直だ。

でもその分、直感で悪人かそうでないかを見抜く。


―あの人間は、悪人ではないということか―

私が険しい顔をしていると、妖精達は顔を覗き込んできた。


「あげちゃダメだった?」

「ううん。どうせ、私の力では育てれなかったから……気にしないで」


―失った力を取り戻さなくちゃ。でも時間がかかるわ―


――パタパタッ


「妖精王……?」

「大丈夫?」

目を細め、溜息をついた。

物思いに更けていたら、目の前に妖精達が集まって来ていた。


「ご、ごめんなさいね。考え事しちゃってたわ」

笑顔を見せると、妖精達は安心したように何処かへ飛んでいった。

妖精王は大きく首を振る。


「私には、あの子の事情なんて関係ないわ……でも危なっかしいのよ。目の下にクマも出来てるし」


ブツブツと呟き始めながら、他の更地を再び修復している王の背中を

妖精達は首を傾げて遠くから見つめていた。


「今日はこのくらいで大丈夫そうね」

修復がある程度終わり、妖精王は振り返り妖精達に向かって手を振る。


「蕾ちゃん達! 美容液を作りたいんだけど、手伝ってくれるかしら? 」


「もちろん! 」

「いいよ~」


パタパタッ――


一斉に散らばったかと思うと、それぞれ花やハーブの束を抱えて戻り

鍋に入れ始める。


「凝縮」


ブクブクッ――


妖精王が呟きながら鍋に手をかざすと、液体は金色に輝き始めた。

胸元から白い布をめくり、乾燥していたハーブを一つまみ入れると

緑の液体から淡いピンク色に変わる。


「出来たわ」

風魔法でガラスの瓶へ注いでいくと、優しい花の香りが広がった。


「いい香り~」

「完成! やったー! 」

「あの子にも、あげるんだよね? 」

妖精達は嬉しそうに辺りを飛び回っている。


「そうよ。約束したからね」

妖精王は微笑むと、瓶をかごに入れた。


「皆、手伝ってくれてありがと。帰ったらお菓子を食べましょ」

「わーい! 」

「お腹空いた! 」


妖精王と妖精達は風の渦に包まれ、青々とした森から消えた。



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