EP24. 震える小さな手
夜になり私は少年が居る家へワープした。
「ただいま~」
「おけーり」
今日はタックルなしなの?どうしたん?
少年が明らか元気がない。
「えっと、坊や? 何かあった?」
「は? なっ何もないし! 剣の練習で疲れてただけだし!」
少年は私に背を向け 怒鳴るように言った。
「…てか、その坊や呼び…もうやめろよ。」
「じゃあなんて呼べばいい?」 少年の目線に合わせて姿勢を低くして聞く私。
「…。名前無いからお前がつけろ。」
「分かった。ちょっとまってて考えるから。」椅子に腰かけて考え始める私。
少年は別の部屋でテレビを見始める。
―ん~新聞でこの少年の本当の名前を知ってるけど…-
絶対違う名前の方がいいよね…。
満月に出会って、少年の目は赤色で…。 頭の中で色んな単語が駆け巡る。
月も、赤い目も 光のように透き通った感じで綺麗だから
少年が居る部屋へ駆け足で向かった。
「ねぇ!決まった! あなたの名前は クレール ってどう?」
「まあ…いいんじゃねぇの?」プイッと私から顔をそらした少年はまんざらでもなさそうだ。
ちょっとニヤけてるじゃない まったく!素直じゃないんだから!
「ふふっ クレール!」さっそく名前を呼んだ
「んだよっ」 ムスッとして顔をこちらに向ける少年
「呼んでみただけ~♪」 私はそのままキッチンへ今日の晩御飯を作りに向かっていく
「はぁ?なんだそれ!」後ろから少年の叫びが聞こえる。
「…いい名前ありがとうな。」
「ん? なんて言ったの?」よく聞こえなかったので、振り返って聞き返す。
「なんでもねぇよ!腹ペコだから料理早く作ってよ!」元気に手足をじたばたしながら言う少年。
「はいはい!待っててね^^」
―名前が決まって、これから呼び合えるようになるのは嬉しいな―
少し少年との距離が近づいた気がして心がなんだかあたたかくなった。
鼻歌を歌いながら料理を作っていく私。
今日はハンバーグを作った。子供が好きな料理の1つだと思っている。
「できたよー!」私が言うと、少年はカトラリーを並べてくれた。
「手伝ってくれてありがとうねクレール。」私はハンバーグを盛り付ける。
「あぁ…。」少しモジモジした少年は椅子に座った。
「いただきます。」 少年も何だかんだ言いながらも手を合わせるようになった。
「…!! なんだこれ!うまいぞ! 肉が柔らかすぎる!うまい!」
美味しそうに食べてくれて良かった。
「クレール。サラダもちゃんと食べてね?」
「草…サラダ嫌いなんだよ。草は子供の頃、散々色々食べてきたからさ」
ぷくーっと頬を膨らませて いう少年。
いや、今も十分子供だよ?
そうか、野草を色々食べてきたと…。複雑な気持ちになる。
「…。私が料理で出す野菜は、栄養がある野菜だから!半分でも食べて?」
ジー…。私とサラダを交互に見ている少年。
「しょうがねぇな。我慢して食ってやる。」
ハンバーグは大口だったのに、サラダの一口はすごく小さく食べてる。
小動物みたいで可愛い。
「食べてくれてありがとうね! またいつかハンバーグ作るね!」
「毎日でもいいぜ!」
「ふふっ、毎日はさすがに栄養偏っちゃうよ?」
「チェッ」
ここ何日かで少年は少し引き締まったように見えた。
暗殺者の鍛錬は知らないけどハードそう。
「他に何か欲しい物とかある?」
「ん~特にない。」少し考えてから少年は答えた。
「…。サーシャの仕事って何の仕事してんだ?」
―…皇女で毎日バタバタしてますとか言えないな―
「私は、田島食堂で今度働く事になってるんだよ。それまでは色々他の人の手助けを毎日やってるのさ。」
嘘はついてないぞ?
「毎日遅い時間だし。最近は毎日来ない日もあったから…。
その…仕事が大変な事やってんのかって思っただけだ。」
「あらっ 心配してくれてたの?とても嬉しいわ。クレールは優しいのね」
「ちげぇって!」視線が斜め下を落として 声を荒げる少年。
「最初の方で毎日来るって言ったけど、ごめんなさいね。
やらなくてはならない事が最近は沢山あって。
ここに来るのが数日に一回になってしまって…。」
「その…なんだ、体には気をつけろよ!若くないんだから!」
少年なりの不器用な心配している言葉を聞いて
まさか、目の前のおばさんが実は年下の女の子だと分からないだろう。
「そうだね、若くないから無理せず手助け頑張るよ。」
少年の頭をわしゃわしゃ撫でる。
「うああぁ!触んな!調子のんな!」
「これからも、間隔が開いて中々会えなくなると思う。連絡手段とか色々考えておくね。」
笑いながら少年に伝える。
「別に連絡なんていらないし!俺は一人でも平気だし!」
「はいはい^^」
私の笑い声と少年の不器用なやり取りでその日は過ぎていき
少年が眠っているのを確認した時 布団から出た手がかすかに震えていた。
私はそっと包む
少年の体がビクッと跳ね、手の力が強くなる。
「…大丈夫だよ。」
手の震えが収まってから私は城へ帰った。




