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元アラフォーが皇女に転生?!元暗殺者の少年を拾ったので育てます!  作者: 桜月ふたば
第一章

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23/61

EP23. 震える小さな手 


サァーー

転移した私は、すぐ家に入らず『あまゆいの木』へ水やりをしていた。


「女神に聞いたら、この木から取れる実だったとはね……」

転移する数時間前、女神へ聞いたらすぐ返答が来ていたのだ。


「それにしても、すくすく育ってくれて嬉しいな」

そっと木の幹に触れ、見上げると風に吹かれた葉が黄金に輝きだした。


「え……? 」


―♪

【膨大な魔力を感知しました注意して下さい】

ジッジジッ――

通知音の後、ノイズが入り混じった。


ブワッ――!

強い風が吹き荒れた後、一人の人物が現る。

紫色に一部だけ銀色の長い髪を風になびかせた男だった。


「あんた、何者なの? 」

低い声で言われたその人物に、ギロリと黄金の瞳に睨まれた私は

体が固定されたように動けなくなった。

一歩ずつ近づきながら、男は言葉を続けた。


「この木は絶滅したはずよ、なぜここで育っているの」


―あれ……? この声って―


「妖精王……? 」


男は足を止めると驚いた表情でジッと私を見つめた。


「あら、この匂いは……あの時の人間? 」


パッ!


……ドサッ

急に体の力が抜けた私は、地面へ転んだ。


「痛たた……」

「やっだ~っ、もう! 早く言いなさいよね! 」

「姿が全然違うから、分からなくて」

苦笑いする私に、妖精王が近づいてきた。


「この姿は、夜限定よ! あなたこそ、何故その姿なのよ」

私の髪を片手で掴むと、妖精王は顔を下に向けて呟いた。


「ゆ……。許せない」

「え?」


「何このゴワゴワの髪! そしてお肌!!ボロボロじゃないのぉ~! 」

両手で頬を挟まれ、ギュムギュム押したり引いたりし始めた。


「あれほど、お手入れは大事って言ったじゃない! 

ちゃんと眠れているの? ご飯食べてるの? ねぇ! 」

頬を膨らませ、怒っている妖精王に私は苦笑いをした。


「ご、ごめんなしゃい」

―頬を挟まれ上手く言葉が出ないわ―

そう思ったその時、突然、妖精王は胸に手を当て苦しみだした。


「くっ……」

「だ、大丈夫ですか?! 」

「問題ないわ……。前に言ったでしょ、全盛期の力は今無いって」


以前、私の闇煙を一部取ってくれた時を思い出した。


「……少し時間が経てば平気になるから」

荒い呼吸の妖精王はその場に座り込んだ。


―どうしよう。家に連れて行く? でも少年に何て説明したら……―


「王様~」

「見つけた! 」

紫色の服に銀色の羽をしている妖精が飛んで来た。


―あの夜、種をくれた妖精に似ているわ―


「大丈夫? 」

「これ早く飲んで! 」

「蕾ちゃん達、私は大丈夫よ」

妖精が持ってきた、花びらを飲み込んだ妖精王は落ち着きを取り戻し

私に話し始めた。


「本題に入るわ。この木はあなたが育てたの?」

「はい。私が育てました」

私は夜の妖精から種を貰ったこと。魔法で水やりをした経緯を話した。


「事情は分かったわ。育てたのがあなたで良かった」

妖精王は立ち上がると夜の妖精を帰し、再び私に体を向けた。


「この実、私に1つ譲ってくれないかしら? 」

「はい! 1つと言わず、いくつか持って行って下さい」

「ありがとう。助かるわ」

目を細めた妖精王は、首を傾げた。


「……あなたは、事情を聞かないのね」

「言いたくないこともあるでしょうから」

私は微笑んだ後、風魔法で実を採ると妖精王に差し出した。


「あなたみたいな人間が多ければ良かったのに」

「え? 」

「何でもないわ。今度、私が使ってる美容液を渡すわ! またね! 」


シュッ!


妖精王は目の前から消えてしまった。


「皆、それぞれ何かしら抱えてるものよ」

―でも、具合が悪そうだった。あの実を食べて元気になって欲しいわ―


いつの間にか木の葉は輝きが止まり、いつも通りに戻っていた。


ガチャッ


「ただいま~」

「おかえり」

私は家に入ると、少年の表情や声がいつもと違うように感じた。

前世の親も、私が何かあるとすぐ察して聞いてきたと思い出し

少し懐かしくなった。


―今日は、何だか元気がない気がする―


「坊や、何かあった?」

「な、何もない! 剣の練習で疲れてただけだ!」

少年は私に背を向け大声で叫んだ。


「てか、その坊や呼びもうやめろよ」

「じゃあ、なんて呼べばいい?」

少年の目線に合わせて姿勢を低くして聞くと


「お前がつけろ」


グッグゥウウウ~~

少年のお腹の音が、私の料理を待っている気がした。


「分かった。とりあえずご飯作っちゃうね」

私は微笑むとキッチンへ向かい、少年は別の部屋に向かった。


ザクッ!

トントントン……

野菜を刻む音がキッチンに響いていく。

私は、少年の名前をずっと考えながら料理を始めた。


―少年の本当の名前を知ってるけど、違う方がいいよね―


頭の中で、様々な単語が駆け巡る。


―光のように透き通った感じで、綺麗な名前が良いな―

名前を閃いた私は、少年が居る部屋へ駆け足で向かった。


「あなたの名前は クレール ! どうかな? 」

「まあ、いいんじゃねぇの?」

私から顔をそらした少年の横顔は、まんざらでもなさそうだ。


「ふふっ。クレール! 」

「んだよっ」

ムスッとして顔をこちらに向ける少年。


「呼んでみただけ~」

「はぁ? なんだよ、それ! 」


後ろから少年の叫び声を聞きながら、再びキッチンへ戻った。


―これから呼び合えるようになるのは嬉しい! ―


~♪

鼻歌を歌いながら料理を作ったのは、ハンバーグ。サラダ。

ポテトフライ。ご飯。野菜のスープ。


「ご飯できたよー!」

私の声を聞いた少年は、自らカトラリーを並べてくれるようになった。


「手伝ってくれてありがとね、クレール」

私はハンバーグを盛り付ける。


「あ、あぁ……」

少しモジモジした少年は椅子に座った。


「いただきます! 」


「これ!うまいぞ! 肉が柔らかい」

「クレール。サラダもちゃんと食べてね? 」


「草……サラダ嫌いなんだよ。草は子供の頃、散々色々食べてきたから」

頬を膨らませながらも、フォークでサラダを刺しモグモグ食べ始めた。


―この間出した胡麻和えは何も言わずに食べてたけど……

今度から野菜は工夫して食べさそう―


ここ何日か見ない間に、少年の顔が少し引き締まったように見えた。

きっと、毎日欠かさずに鍛錬をしているのだろう。


「ごちそうさまでした」

私は先に食べ終わると、明日の朝食を作っていた。

ゆで卵と一緒に、細かく刻んだ野菜を入れて混ぜていく。


「よし! 終わり!」

作り終わったサンドウィッチを冷蔵庫にしまい、椅子に腰を掛けた。


「明日、もしかしたら来れないかも――」

クレールの部屋へ顔を出すと、少年は床で寝ていた。


「あらあら、ベッドで寝ましょうね」


私はクレールを両手でそっと抱えてベッドに移動させた。

布団をかけると、手がかすかに震えているのが目に入る。

私はそっとその手を包むと、少年の体がビクッと跳ね

強く手を握り返してきた。


「大丈夫だよ」

小さく呟くと、クレールはスヤスヤとした寝息に戻る。


―のびのび育ってね―

私はクレールの頭を撫でると、家を静かに出た。



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