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元アラフォーが皇女に転生?!元暗殺者の少年を拾ったので育てます!  作者: 桜月ふたば
第一章

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EP21. 酒場でパパと再会


グッ、グゥゥウ~~……

静かな森に、私のお腹の音が響いた。

微笑んでいる女神と目が合い、私は苦笑いをする。


―緊張が解けたら、お腹が空いちゃった―


「森の近くに食堂が数軒ありますから、一緒に――」

女神が言いかけたその時、片耳を抑えて表情が暗くなり始めた。


「無事、終わりました! ……はい。戻ります」


何処かと通信で会話しているように見えた。

時々、私の方を見ながら先程の報告をしている。


「一緒にご飯、行けなくなりましたぁ……」

力なく肩を落とした女神へ私は微笑んだ。


―追加の仕事でも頼まれたのかな? 忙しそう―


「残念ですが、また今度一緒にご飯行きましょ」

「はい! では、また!」


スッと目の前から女神が消えると、私は食堂を探して向かうことになった。

タブレットで検索すると、森から近い食堂は全て【閉業】と表示されていた。


ザッザッ――


砂利道を歩いていると、大きな建物らしきものが見えてきた。


―何よこれ……―


街の入口には兵士はおらず、木の看板はあったが

塗料で簡易的に街の名前が書かれたものが吊るされている。


歩を進めて行くと、複数建物が崩壊しているのが目に入った。

道端にはレンガや瓦礫が集められている。

街の人の声もしない、静かな場所を胸が締め付けられる気持ちで通って行った。


「……ここまで酷かったなんて」

新聞を見た時、勝手に普通の街を想像していた自分を恥じた。


―私はなんて愚かだったの。机の上だけで呑気に考えてたなんて―


夜の街灯が辛うじて辺りを照らす場所に変わると、

少しずつ飲食店から笑い声が聞こえてきた。


「着いたわ」


私は、ゆっくりとドアノブに手をかけた。


カランカランッ

田島食堂とは違う、高音の鈴の音が響いた。


「いらっしゃいませー!お好きな席へどうぞ!」


ガヤガヤとしている店内を見渡す。

周りの飲食店が殆ど営業していないからなのか、

家族連れのお客も多かった。


私は入口付近の隅の席へ座ると、

店の奥から店員がメニューを持ってきてくれた。


「ごめんなさいね。メニューの半分は品切れでね。

ここから下は注文できるよ」


店員が指を置いた先を見ると、魚料理が多かった。


―魚介類は城であまり出ないから嬉しい! ―


「魚介トマトソース煮込みと、バケット、グラタン、赤ワイン……」

いつもと同じように沢山注文していくと、

店員は不安そうな表情で私を見つめ首を傾げた。


「量が結構ありますが、大丈夫ですか?」

「大丈夫です! 」

「途中でお腹いっぱいになったら言ってくださいね! 

残りの注文を止めることも出来ますので」


そう言うと、伝票を持った店員は厨房へ戻って行った。

待っている間、私はタブレットを確認しようと画面に触れた瞬間。

ふと、聞きなれた声がして辺りを見回した。


「皆、無事でよかったな! 乾杯! 」


―気のせいか―


「きっと、疲れているんだわ」

私は小さく首を振り、乾いた喉を潤わすように水を一気に飲み干す。

暫くすると、店員が料理を運んで来た。


「お待たせしましたー!」

「うわぁ~! 美味しそう! いい香りね~」


新鮮な魚介類の味と食感、そしてトマトスープの温かさ。

バケットに沁み込ませ一口、また一口と食べ進めて行く。

夜風で冷えた体が、少しずつ温まっていった。


「ん~~! ワインと合うし最高! 」

目を閉じて旨味を噛みしめていた時、斜め前の席から大きい声が聞こえてきた。


「飲み過ぎですよ! 」

「なーに、祝い酒だからいいのだ! 乾杯ーー! 」

カーンッとガラスの音が小さく響いた。


―酔うと何度でも乾杯する人、前世でも居たな~―


「へっ、いや、ロッドさん!あと一杯飲んだら帰りましょう?」

「えーやだやだー!」 


私は前世での飲み会を思い出して、そのやり取りを聞いていた。

―あぁ、連れの人可哀そうに……―


「分かったよ。一杯な? すみませーーん! 注文いいですか? 」


大柄の男性が後ろを向いた瞬間、持っていたフォークを落としそうになった。


「……! 」

―パパ! なんで?! ―


私は目を大きく見開き、咄嗟に言葉が出そうになるのを必死に飲み込んだ。

髪や瞳の色は変わっていたが、顔はそのまま……。

城の皆が心配しているのに、酒を飲んで笑っている事に心がモヤモヤした。


「ハァ……複雑ね」

私は視線を皿に落とし、苦笑いをした。


―でも、思ったより元気そうで良かった―

再び食べ始めていると、近くの席に居る親子の会話が耳に入って来た。


「ママ、このデザート食べたい! 」

「ごめんね。また今度ね」

「えー。美味しそうなのに」

そういうと、女性は苦笑いをしながら子供の頭を優しく撫でた。


―この街の状況だと、好きな物が食べられない人も居るよね。ー

そっと目を閉じ、森からここに来るまでの街の状況を思い出す。


「これから来るデザート、あの子にあげ――」

小さく言いかけたその時、パパが勢いよく立ち上がった。


ガタッ


「皆の者ー!ここにいる全員の料金は俺が払うぞー! 

お腹いっぱい好きな物を頼んでくれ! 」


店内に居た客は、手を止めて一斉にパパを見つめた。

一瞬静かになった空間にパパは首を傾げたが、明るい声で言葉を続けた。


「魔物はいなくなった!これから皆でまた楽しく生きてこうじゃないかー!」


「うぉぉぉぉおお!! 」

店内から歓声が上がり、店員も驚いた表情をしていたが

拳を天井へと高く上げた。


「ありがとー!」

「すげー!!」

「あの人誰なんだ?」

ざわざわしていく店内。


―偶然? それとも、パパもこの親子が話していたのを聞いてた? ―

私が小さく首をかしげてさっきの子供を見ると、

パパを見ていた顔を女性に向き直した。


「ママ! デザート頼んでもいい? 」

「……そうね、いいわよ。でも今日だけよ? あの人に感謝しないとね」

「うん! 」

子供は笑顔で注文をした後、パパの方を見つめ呟いた。


「おじちゃん、ありがとう 」


その後、どのテーブルにも沢山の料理と飲み物が並べられた。


「乾杯ーーー!!」

「うぉぉぉぉ!!乾杯ーー!」

盛り上がる店内と、料理を運ぶ店員が忙しなく動き回っていた。


「美味しいね」

「お腹いっぱいになるなんて久し振りだ」

「うまい! 夢じゃないよな? 」


色んなテーブルから聞こえてくる声が耳に入ってくる。


―パパ、気づいていたのね―

客のテーブルには、殆ど料理は1品しか頼んでいなかったこと、

子供の分だけ料理を注文し、大人が残った料理を食べていたこと。


―皆……苦しいのに、ここでは笑って過ごしてるんだ―

私はワインを一気に飲み干し、深く息を吸った。


「さ、私も出来る事をしなくちゃね」


お会計の時、店員に3枚の金貨をそっと出した。

「え、多すぎます! 」

「私のお願いを聞いてほしいの――」


その金貨が尽きるまで子供は無料、大人は半額にしてもらう事になった。

街が復興する間、皆が少しでも多く食べれるようにと――。


―偽善者と言われてもかまわないわ。これが今の私に出来る事だから―


「ごちそうさまでした! また来ます! 」

笑顔で軽く頭を下げ、店の扉を出た。

夜風に吹かれながら、転移場所まで歩き出す。


「ご飯をお腹いっぱい食べれるって、幸せなことなのよね」

お腹をさすりながら、暫く歩いていると後ろから声を掛けられた。


「待ってくれ! そこのお姉さん!」

「……」


―気配がなかった。誰なの―

私は足を止めてゆっくり振り向くと、パパと連れの男(おそらく兵士)が立って居た。


「追いついてよかった。忘れ物だよ!」

ノートと小袋を差し出された。


―びっくりした……バレたかと思った―


「ありがとうございます。」

私は二人へ頭を下げ、小銭袋と今後の事を書いたノートを

少し震えながら両手で受け取る。


「何やら異国の言語が書いてあったが、あんた別の国から来たのか?」

「旅をしていて、最近この町に来たんです」


変身しているからバレ無いと思っているはずなのに、

まっすぐ見て話されると悪いことしている感覚になっていた。


―いや、城を抜け出してるから悪いことか……―


「最近、ここら辺は魔物討伐が終わったのだ。

安心して滞在するといい。」


ザッ

パパが数歩前に出て、首を傾げた。


「んー? いや、俺の勘違いか? 

そなた、どこかで俺と会ったことはないか?」


―あります……娘です! って言えないけどね―


「い、いえっ!似た顔の人なんて、きっと沢山いますわ! 」

動揺が隠し切れずに、声が上ずってしまった。

苦笑いをした私を見て、別の男がパパの肩に手を置いた。


「お待ちください。言い寄られたと思って、怖がってるじゃないですか! 」


―ナイス!勘違いフォローありがとう!―


「ああ、そんなつもりじゃ……気分を悪くしたなら済まない。

俺の勘違いだったようだ」

パパは焦った声で両手を左右に振っている。


「いえいえ! 皆さんもお気をつけてお帰り下さい」

「あぁ。またどこかで! 」

「だから、そういう所ですってば! 連れがすみませんでした」


互いに頭を下げ、それぞれ別の道へ歩き出した。


「ハァ……まだ心臓がうるさいわ」


―でも、いい部下の人が側に居るなら安心したわ―

私は焦ったパパの姿を思い出し、フッと笑みを浮かべた。


「早く帰って来てね。パパ……」


小さく呟くと、転移場所まで歩く速度を上げていった。


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