EP20. 光が残したものと、新たな不安
次に目が覚めたのは馬車の中だった。
「陛下!良かった。 陛下がお目覚めになったぞ!!」
この大きい声は騎士団長だな
「他の魔物は?兵士達は無事なのか?」
「ご安心ください。死亡者0。他の兵士達が全滅させたと報告がありました。」
「そうか、よかった。」
さっきまで皮膚が焼けるように熱く、鋭い痛みが走っていたのに
今は何も感じない。
「王都へは距離がある為、討伐場所から近い街へ向かっております。
そこで負傷した兵士含め治療と休むことになりました。」
「あぁ。賢明な判断だ。助かったぞ、騎士団長。ありがとう。」
「…陛下…。私の力不足で、陛下に怪我を負わせてしまった事…大変申し訳ございません…。」
「いや、よい。私は同じ状況になったらまた同じ行動をするだろう。」
「よく一緒に戦ってくれた。団長も少し休め。」
「はい…。このご恩は必ず…。」
街へ着くとすぐ陛下や負傷した兵士の治療が開始された。
「陛下。この度は、街を救ってくださり、本当にありがとうございました。」
市長が頭を下げた。
「完全に治るまで、こちらで静養されて頂ければ幸いです。」
「魔物被害で、あまりお食事等、色々と不足しているかもしれませんが…
精一杯のおもてなしを致します。」
「気にするな。大変な時はお互い様だ。これから、世話になる。」
「はい、これから医者が来るかと思いますので。その時に、陛下の怪我の状態をお話するかと思います。」
「分かった。」
市長は一礼をすると部屋から出ていき、入れ違うように医者が入って来た。
「陛下、お初にお目にかかります。この治療院で医院長をしておりますネイと申します。」
「この度は、我が兵士含め世話になった。して、我の怪我の状態を聞きたい。」
「はい。 診断結果ですが、一番は魔力が枯渇に近い状態です。
負傷していた背中中心の傷は、かすり傷程度かと診断しております。」
「…。背中の傷は、かすり傷…だと?」目を見開きながら言う。
「ひっ! はっはい…。」言い方の地雷を踏んだと思ったのか怯える医師。
「そなたを怒っているのではない。私は、戦闘中に魔物からかなりのブレスを浴び
皮膚が焼けるような痛みを感じていたからな。
不思議に思って聞き返してしまったんだ。」穏やかな声で医師に言った。
「…。そうだったんですね。恐れながら、ひっかき傷のようなものしか目視できず…。
魔力で内部も一応確認させていただいたのですが、異常は見つかりませんでした。」
「陛下。今、痛みは感じていらっしゃいますか?」
「いいや、全くだな。ただ起き上がれないほど体が鈍りのように重たい。」
「もし、また痛みを感じるような事があればすぐおっしゃってくださいね。」
「他の兵士の方々も、もっと深手を負っていたとおっしゃられていたもので…
道中、何か処置して治癒されたのかな?と思ったのですが…。
ここに来た短い移動時間を考えると、難しいかと。我々も、どうも不思議で仕方がないのです。」
カルテらしいメモをペラペラめくりながら 首をかしげる医師。
「今、大事なのは魔力をしばらく使わないよう安静にして頂いて
毎日、魔力があるものが治療しますので魔力補給を少しずつする形になるかと思います。」
「あぁ、分かった。よろしく頼む。城に戻ったら全員分の治療費を払おう。」
「いえ!めっそうもございません! 市長からお話があったかはわかりませんが
我々は、魔物に何十年も苦しめられたのを救っていただいたのです。
お支払いするのは、我が国だと私は思っている位ですので!」
あわあわしている医者。
「気持ちだけ受け取ろう。また後日その話は市長と進める。
他の兵士の治療もよろしく頼むぞ。」
「はい!おまかせください!」
医者は一礼して、目覚めた違う兵士へ向かっていった。
―あの攻撃を受けてかすり傷…。信じられないが本当だ。―
「城に帰ったら一度、話し合わねばならない事が沢山ありそうだな。」
最後に戦った時の白い鳥。あの鳥がまとっているのは光属性。
妻と同じ光の色だった。 覚醒しているのか…?
娘がもし、このスキルを持っていると周りの者に知られたら…
妻のように戦場へ、一緒に行かなくてはならなくなるかもしれない。
戦場へ行かないにしても、利用しようと企む貴族や家臣も出てくるだろう…。
絶対に守らねば…。娘には、辛い思いをこれ以上させたくない…。
魔物壊滅のニュースは瞬く間に広がっていった。
「皇女様!陛下率いる討伐隊が魔物を壊滅させたと報告がありました!」
「パパ!パパは無事なの?」
「…。」
「ねぇ…。」
「はい。陛下は無事です。ただ、魔物の主と闘った時に負傷してしまい
今は近くの治療所で治療しているそうです。」
「…傷は深いの…?」
「詳細は分かりません。」
「…でも生きているなら…ひとまず良かったわ…。」
少し安心したが、負傷がどの程度なのか…とても心配になった。
「皇女様、陛下は帰還まで数週間かかる見込みです。」
「そうなのね、教えてくれてありがとう。下がっていいわ。」
ふとメイドが持っていた新聞が気になった。
「その新聞、私見てもいい?」
「これはルーカスに渡すものだったんですけど 大丈夫ですよ。」
「読み終わったらすぐ返すね。」
メイドが出て行った後、新聞に目を通す。
表紙の見出しには
「隣国王が数十年の暗闇を打ち払った!!」と大きく書かれていた。
パパや討伐部隊が魔物を倒し、兵士の死亡者が0人という偉業を成し遂げたという事と
助かった国民が感謝をしているという記事だった。
市長のインタビューや他の人の感謝の言葉が飾られていた。
「パパ、すごいよ…。」
あの溺愛モードのパパからはあまり想像できなかったが、さすが国王。
私のパパはカッコイイ!
「怪我が少しでも軽いものでありますように…。」
新聞のページをめくると、尋ね人の掲載が目に入った。
そこの描かれていた肖像画には、あの少年に似ている…。
「これってあの少年じゃ…。」
隣国の第二王子だった。髪や目の色。ほくろの位置も同じだった。
「だから文字の読み書きが出来るんだ…。」
「でも元暗殺者になって殺されそうになっていたのに…どういうことなんだろう?」
―あの少年は自分の事を暗殺者だといった後は何も自分の事を語らなかった。―
「訳ありかと思っていたけど、これはかなり複雑ね…。」 新聞をトントン軽く叩きながら呟いた。
とりあえず、新聞部分をタブレットで写真を撮っていく。後で細かい部分まで読みたいから。
一通り読んで早めにメイドに返さなくては…。
記事には、数年前から探しているらしい。懸賞金もかなりの額を提示していた。
暗殺者ギルドはこの事を知らないとは思えない…。
もし、少年を変化させたら、隣国に帰った時に証明もできなくなるし…。
帰ったとしても少年がまた何か不幸な事があったら嫌だし。
頭の中がぐるぐると色んな考えが過る。
「どうしたらいいのよ。」新聞を閉じた。
―このままじゃ、きっと何かが起きる。―
メイドを呼び。今後は新聞を私にも配達するよう頼んだ。




