EP18. 優しい日常の裏で、確実に迫る追跡者
いつものワープする小道まで鼻歌を歌いながら歩く。
途中、黒づくめでやせ型の男とぶつかってしまった。
「おばさん、ごめんな」
「いえ、私もごめんなさいね。」
「なぁ、この辺りで黒髪で赤目のガキ見たことねえか?」
鋭い目でまっすぐ私をみて男は言った。
ー 冷たい声と目。口角は上がっているのに…怖いオーラを身にまとっている気がして嫌な予感がした。―
ぶつかった時、かすかに血の匂いがしたし。本能的に普通の人間じゃないと思った。
「いいや?私最近ここの町にたどり着いたばかりだし、見かけたことないね。」
「そっか。夜は酔っ払い多いから、きをつけろよ」
「ありがとうね。お兄さんも気を付けるんだよ」
「俺はこう見えて強いから大丈夫だ。じゃあな」違う方向へ男は手をひらひらさせて歩いていく。
― 男は、あの少年を探しているんだ… ― 心臓がバクバクと早くなっている。
黒髪に赤い目はこの町で見たことが無い。皆、髪色は茶色や金髪が多い。
念のため、近くのパン屋に入り買い物して過ごした。
ワープ場所でまたあの男に会ったら怖いし、尾行されているとは思わないけど…
念には念を入れなくては。
思ったより多く買ってしまった。 少年がいる家と城でもお腹空いたら食べる用でいっか。
「まいどあり~もう閉店時間だからおまけしといたよ^^」
「助かるわっ。また来るわね。」
良いパン屋を見つけた。また来よう。
私はワープ場所に行き 少年の元へ行った。
「何日振りだろう?元気にしてるかな?」
家の横に大きい樹木が生えていた
「あれ、この木…前に植えた場所だよね?」木に近づいた。数日で大きくなり過ぎじゃない?
何か実が成っている。風魔法で刈り取り家に持って帰ることにした。
「ただいま~」 部屋の奥からドドドドドドドッ走る音が聞こえた。
「お前!!何日俺を放置してんだよ!!」タックルしてきた少年。
「ごめんね。色々大変なことがあって中々来れなかったの。寂しい思いさせてごめんね。」
「チッ、別にさみしいとか思ったことねぇし!飯が無くなってきたから…」
ゴニョゴニョと口ごもる。
「あ、約束していた木刀渡すわ。」アイテムBOXから木刀を出し渡した。
「うわぁ! やったぜ!! これで明日から剣の練習が出来る!ありがとな!」
無邪気な笑顔で大切そうに木刀を触る少年。 この場面だけ見ればただの子供だ。
「さ、私は冷蔵庫に補充しに行くね」
「なぁ、サーシャの作った飯食べたい。」
「?いいよ。じゃあ先に何か作るね! 今日、町の小道で美味しそうなパン屋さんでパン買ったの」
「…それって田島食堂の近くか?」
「あら、知ってるの?そうそう、私今日初めて見つけたんだよね。」
「…俺。別の部屋へ木刀しまってくる。」
一気に元気が無くなっている少年。 何かあった場所だったのだろうか?-
そう思いながら、私はシチューを作り始めた。
「いただきます。」手を合わせご飯を一緒に食べる。
シチューと切ったパン達で夕ご飯。私はこれで三回目の夕飯。
この体になるといくらでも食べれちゃうのが怖い。
「うんめぇ!」ガツガツと食べ始める少年。
やっぱり手作りの方が美味しそうに食べるな~ 毎日作ってあげたいけど今は無理だし。ごめんよ少年。
「おかわりする!」「はいはい。」
「お前が居ない間、家の外で運動してたんだけど。なんか家の横の木が毎日どんどんデカくなっててさ」
「ああ、さっき家に入る前に見たわ」
「何の木なんだ?」
「分からない。なんか拾った種を何となく植えたら、ああなったんだよね」
―妖精から貰ったなんて言えない ー
「あ、さっきその実を取って来たから。食べてみる?」
アイテムBOXから大きいオレンジ色の実を取り出した。
「…お前食ったことあんの?毒とかないのか?」
「毒があれば直感でわかるから、この実はそういうのないから大丈夫だと思う。」
そう、朝食に毒草が紛れ込んでた時。警報音と毒草が光った。
でもこの実は何も反応しないのだ。
包丁で食べやすい大きさに切り。先に私が食べて見せる。
「ん~っ。ん”?!」目を大きく見開いた
「ちょっ!おま!!大丈夫か?!」椅子からガタッッと立ち上がる少年
「すごい美味しい…!!」
「紛らわしいんだよ、クソがっ!!」椅子に座り直し、少年も果物を食べ始めた
「本当、これうまいな!」
「でしょ?」
みずみずしい果汁。桃とレモンを合わせたような 絶妙な果物の美味しさだった。
ただ、スイカみたいに小さい種が少し多めに入っている。
私は、切った時に出た小さな種を少し洗いアイテムBOXに入れておいた。
「また食べようね!」「うん!」
それから久々に少年と話し、一緒にパズルをして遊んだ。
少年が眠った後、冷蔵庫を確認し不足している食材を購入して補充し
タッパーに今日のシチューと、軽く作った料理をいくつか冷凍庫に入れた。
手料理を温めれば、また少し違うかなと思ったからだ。
片づけは魔法で一瞬で終わらせた。本当に魔法って便利。前の世界でも使えたらよかったな。
そういえば、この少年。平民かと思ったけど、読み書きができるよな?と思った。
「どこかの貴族の子だったりしないのかな?」少年宛に置手紙を書いていた。
「木刀喜んでくれてよかったな~」
部屋の明かりを消してから城へ私は戻った。
私のベッドで、影武者2号が眠っている。
変身を解いた私は、影武者をBOXへ入れる前に起こした。
「こんばんわ、ごめんね寝ているところ。 今日はありがとうね」
「いいえ、マスター、これが私の仕事なのでお気になさらないで下さい。」
やはりこの影武者2号は言葉も表情も固い。
「変わりはない?」
「マスターが出かけた後、メイドが来て飲み物の瓶を補充しに来たくらいです。」
「そう、分かったわ。何も変わりなければいいわ。ご苦労様」
そういい終わると、影武者2号をアイテムBOXへしまった。
「今日は、あの少年を探しているであろう人物が危険そうだったから
早めに変化の魔法で少年を変身させないといけないわよね。」
「明日、図書館へ行って必須の あまゆいの実がどんな実なのか調べないと。」
明日やることをメモに書いていく。転生した後も日本語の読み書きができるのは便利だ。
そう簡単に分かる人も居ないだろうし。
私は書き終わると、自分のステータスを確認した
魔力量が少なかった状態から、大分回復している。
今日、結構食べたもんな…。さて、もう眠らなきゃ。
冷たい布団に入り目を閉じた。




