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元アラフォーが皇女に転生?!元暗殺者の少年を拾ったので育てます!  作者: 桜月ふたば
第一章

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16/61

EP16.  つまみ食い妖精達とオネエ妖精王



「クシュン」

熱が出て数日経ったが、完全にはまだ治っていなかった。


コンコンッ


「皇女様。お着換えをお持ちしました」


「ご気分はいかがですか?」

「喉は平気になってきたけど、体が重たくて」


メイドは手を額に当てると首を横に小さく振る。

「まだ熱が下がりませんね……ルーカスに相談してみます」

そう言い残し、部屋から去っていった。


パタンッ


「……はぁ。自分に治癒をかけたけど治らなかったな」

そう呟きながら、タブレットを操作し始める。


「あれ? また画面が……」

ガチャ画面だけが、以前より表示される色が薄くなっていた。

『ある一定のレベルになれば、ガチャは不定期』

女神の言葉が脳裏によぎりながら、今日もガチャを回そうと指を置いた。


―♪

【∞ 豪華な宝玉(大)】

あらゆる願いを1つ叶えることが出来る。

嫌いな人を消すのもよし!世界を滅ぼすのもよし!


「いやいや。最後の文おかしいって!しない、しないから! 」

慌てた私がスライドしようと触れると

【実行しちゃう?】


「……しちゃう?じゃないのよ。ノリ良すぎでしょ」


―このシステム作った人どうした?! 話きこうか? ―

心のなかでツッコミをいれながらBOXにしまい、溜息をついた。


「たまに変な説明の物が出るんだよな……」

水飲もうとベッドから降りようとした瞬間、光が横切った。


「はぁ……とうとう私は、幻覚を――」


また違う光が横切り、目で追うと……。

目線が止まった先には、複数の妖精が飛び回っていた。

その中に、見たことがある妖精もいる。


「あれ、レイチェル先生と歌ってた妖精……」


サクサクッ

音がした先に目を向けると、机に置いておいたクッキーを

大きく開いた口でかぶりついている妖精が居た。


―え、羽をパタパタしてて可愛い! ―


「クッキー美味しい?」、


ビクッ


食べていた妖精の肩が跳ね、動作が止まってしまった。

ゆっくりこちらに顔を向けるが、その表情はこわばっている。

「……」

「その隣のクッキーも美味しいよ」

「ゴクンッ……。あなたは、私がみえるの?」

「うん」

私が見える人間だと分かると、他の妖精達が一斉にバーッと散らばった。


「捕まえないで」

「どうしよう……」

「見える人間めずらしー! 」


―ありゃ……怯えてる。話しかけちゃダメだったかな―


「私、体調が悪くて寝てたの。皆を捕まえないから安心して?」


「……」

羽がパタパタ鳴る音が室内に響く。一人の妖精が枕横に近づいてきた。

「あなた、病気なの? 」

「うん。熱が中々下がらなくて」


眉毛を下げ困った表情をしている妖精が、仲間の妖精の元へ飛んでいった。

ヒソヒソ何かを話している。


「私、眠るから。お菓子全部食べていいからね」

そう言って布団の中に入ると、妖精が集まって来た。


「この子……やっぱり」

「私達じゃ全部治せないね」

「なんで人間界に闇煙が」


―え、『闇煙』って……もしかして―


「黒くて苦しい煙を見なかった? 」

「触っちゃった? 」

私は布団から顔を出し妖精を見つめた。

きっと何かを知っていると思いながら口を開く。


「黒い煙……触ったというか。絡みついてきたかな」

―少年とパパを治療した時にね―


ブワッー

開いた窓から一瞬、強い風が入って来た。


「遅いわよ~蕾ちゃん達。って、何この人間……」

「あ! 妖精王!」

薄い金色に緑のメッシュが入った髪。

葉の形をした金のピアスを付けている。

男の人の姿だけど、口調はオネエ言葉だ。


「あなた、穢れに触れたのね」

私を見つめる目は、とても冷たかった。


「ねぇ! この子の病気治してあげて」

「この子可哀想だよ」


「嫌よ! 私、人間が嫌いなの」

顔を背けて腕を組んでいる妖精王。

窓から差し込む太陽の光に照らされた髪はとても美しかった。


「綺麗……」

私は思わず呟いてしまい、ハッと口を両手で塞いだ。


「……あら、あなた見る目あるじゃない。

毎日、肌のお手入れを念入りにしてるんだから――」

片目を開けてこちらをチラチラみながら、美容について話し始めた。


「美は一日にしてならずよ!あなたもお手入れはしっかりね!」

「はい! 」

「よろしい! ハッ……あたしったら、なんで人間に……」


妖精が、王の耳へ近づき何やらヒソヒソ話している。


「はぁ……分かったわよ」

やれやれと首を振り、数歩前に出た妖精王は

「蕾ちゃん達が、無断で食べた菓子の謝罪よ」


手をかざし始めると、金色の光にのって花びらと小さい葉が

私の体へと包み始めた。


「わぁ~。とてもいい匂い」

花の優しい香りと、ミントのようなスッとしたハーブの香りがして

そっと目を閉じる。

心地よい冷たい風が、私の体を優しく冷やしていった。


カサッ……

音がして目を開いた。

視線を下に向けると、何枚かの葉が茶色く変色し落ちている。

「闇煙の残骸が取れたわね」

「闇煙? 」

私は首を傾げた。


「禁止されている呪いの1つよ。人間界の薬じゃ治せないわ」


妖精達が嬉しそうに私の周りを飛んでいる。

「よかった! 全部治った! 」

「王はやっぱり、すごい! 」


「勘違いしないで、一部の残骸が取れただけよ」

「え?」

私と妖精達は、王を見つめた。


「あたしの力は今、全盛期の魔力量じゃないのよ――」

妖精王は、俯きながら拳をギュッと握っている。


「それでも、体は楽になりました。ありがとう妖精王」

私は、微笑むと王は顔を背けた。


「さ!蕾ちゃん達、帰りましょう」

「は~い」


妖精達は王の髪や肩へと飛び乗り始めた。


「待って、あなたの名前は? 私はアイビーよ」

「あたしはジゼル。

美容の話なら……また教えてあげてもいいわ」


「治してくれてありがとう。ぜひ今度来てください」

私は頭を下げ、微笑んだ。


「まったく~王は素直じゃないね」

「ぷぷっ」

「またお菓子食べに来るねー」

緑の光に包まれて、王と妖精は部屋から消えた。


「行っちゃった……。それにしても、すごい体が軽い」

両手を上げ、ぐーっと背を伸ばす。呼吸も楽になっていった。

ステータスを見ると通常に戻ったが、魔力値が低い。


「治ったし、田島食堂へ行こうかな」

私はタブレットを手に取った。


「マスター。大丈夫ですか? 」

「うん! もう大丈夫よ」

影武者に体調不良だった事を説明して、私は城下町へ転移した。


カランカラン


「いらっしゃい! あら、疲れたような顔をしてるじゃない」

水を持ってきた女将さんが、心配そうに私の顔を覗き込んだ。

「最近、忙しくて――」


「無理はしないようにね? 今日は何にする? 」

「唐揚げとオムライスで、あの……」


「大盛で」

「大盛でしょ?」


声が重なった私達は、目を合わせた後フッと笑い合った。


「はいよ! お待ちどうさん! 」

「う、うわぁあ~! 美味しそう! 」

一口食べれば、ふわふわの卵とケチャップライスが広がる。


「ん~美味しい! この玉ねぎのスープも最高ね」

おかわりをしたのもペロリと平らげ、お腹も心も満たされた。


「ごちそうさまでしたー!」

今日は、銀貨で初めて支払いをして店を後にした。

転移場所まで歩いていると、親子の会話が耳に入る。


「家に帰ったら薬を飲まないとね」

「えー苦いからヤダ!!」


その瞬間、すっかり忘れていた事に気づき足を止めた。


―ハッ忘れてた! 影武者……今頃―――


     ◇


「完食できましたね! さ、皇女様。お薬飲みましょうか」

「え……」


美味しい夕飯を部屋で食べ終わったら、

メイドに、この土色の塊を飲めと言われている。

―マスターこの薬は何ですか? 聞いてませんよ? ―


いつもなら、食事を置いたらすぐ居なくなるメイドが……。

食べ終わるまで部屋に居る事は不自然だと感じていた。


―これのせいだったのか。―

私は、ジッと薬を見つめたまま口を開いた。


「後で飲みます」

「いーえ。私は飲むまでお部屋から出ません!」

頬を膨らませたメイドは、中々口にしない私を見て首を傾げた。


「どうしたのです? 今日は、甘えん坊さんなのでしょうか? 」

「いえ!決っして、子供扱いをして欲しいわけじゃ……」

薬を半分に砕き始め、スプーンですくったメイドが

笑顔でにじり寄ってくる。


「はい!これなら飲み込みやすいですよ。口を開けて~」

「う“っ……」

初めて口にする泥団子のような薬を、飲み込めず顔をしかめた。

目に涙が少し浮かび上がる。


影武者は、マスターを初めて恨んだ。


―マスター……後で覚えておいてくださいね―


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