EP13. 妻を失った王、再び迫られる選択
「おせぇよ」 ドアを開けた少年は、目をこすりながら、むすっとしている。
「ごめんごめん!美味しいお菓子持ってきたから一緒に食べよ?」
お茶会では全然食べれなかった田島さん作のデザートを持ってきたのだ。
「夜ご飯も食べた?」
「あぁ。ちゃんと使えたぞあの箱。まぁまぁ、うまかったぞ 」
「それはよかったわ。変わりはない?」
「んぁ・・・なんもねぇ。この絵が動いてるやつが面白かった。サーシャは?」
「仕事で色々あって疲れたかな~」
ー今日あったお茶会の事言えない―
「大人も大変だな~、これうまいな!気に入った!」
エクレアをほおばりながら、モゴモゴ話す少年
現在深夜0時
「異国のお菓子らしいよ。美味しいよね!」
美味しいものは世界を救うって位美味しいデザートを食べた。
「あのさ、木刀ほしいんだけど。体が鈍っちゃって。」
「分かった。ただ始めるのは来週からにしてね?念のため。来週になったら用意するわ」
「分かったよ!絶対だからな!約束」
「はいはい^^そろそろ眠いんじゃない? 」
「あぁ、寝る」少年は少し寂しそうな顔をしながらベッドへ向かった
「また明日来るからね」「…うん」
申し訳ないけど今日は早めに帰らせてもらおう。
時刻は深夜2時を回っていた。
帰ろうとした時、ふと妖精さんからもらった種を思い出した。
城で埋めるのもあれだし、ここに埋めてくか!
ザッザッ 石で土を掘った後、貰った種を埋めてから城へ帰った
~~ その頃、隣国のアーティ国では ~~
焚火の音が静かに響く
討伐中のテントが立ち並んだ中で 騎士団長が陛下の
テントへ向かった。
気配に気づき、野営テントから顔を出す。
「陛下、失礼いたします。魔物の規模が大体分かってきました」
「話せ。中へ入りなさい。そこで話そう。」
「はい、最初に報告が上がった場所と真逆の方向に大きく2ヵ所 魔物と発生源があります。」
「あと2ヵ所か…。」
「はい…。現在負傷している兵士含め全員で全箇所を巡るのは、些か厳しい状況かと…」
「…そう簡単には行かないか…」
「大分、討伐できたと思ったんだが 一旦城に帰るしか道はないのか」
「長期戦になるほど不利になるかと…」
「負傷している兵士の数は?」
「おおよそ15名、重傷者は8名です、」
「分かった。検討しよう。だが明日だけは発生源付近に行き 壊滅まで持っていかねば
また辺りは魔物で溢れかえってしまいかねない。そこは分かってくれ」
「もちろんです陛下。 明日でここの場所は終わらせましょう。お休みの所失礼しました。」
「あぁ。報告感謝する。生きてみんなで帰るぞ。」
「御意」
騎士団長が去った後
胸元からペンタントと娘が作ってくれた白いツル?という鳥のようなものを取り出した。
ペンダントを開けば左右に妻と娘の写真が張り付けられている。
ー さて、どうしたものか。数人兵士が負傷したものの、死者をださず討伐が出来ていた。―
この場所でこの規模なら1ヵ月もかからず帰れると思っていた矢先だった。
「アイビーに会いたい。城の皆は大丈夫だろうか」
剣の手入れをしながら ぽつりと呟いた
「このまま進むか、一旦城に戻って立て直すか。」
発生源はその場所の一番大きい魔物。主を倒せば周囲の魔物は消える。
それが明日含めて3体という事。小さな魔物を含めたら出来たとしても
2ヵ所行けるか行けないか程度
若い頃なら、有無を言わさず全部を壊滅する為に突き進むだろう。
大量の兵士を犠牲にしても。
だが、そのせいで過去に私は愛する妻を亡くした。
私が引き返していれば、妻を失わずに…アイビーをあんなに辛い思いをさせずに済んだのに。
「過去の私は…愚かだった。自分の力を過信していたんだな。」
妻は元王族直属の農家の娘だった。
幼いころから城に親と野菜を納品していた為。いつしか話すようになり
家臣や親には、関わらないようにと反対されたが
森に一緒に遊んでいた所。魔物に襲われそうになった私に
幼かった妻が覚醒し魔法で俺を魔物から守ってくれた。
王族ではないのに魔力量がかなり所有しており、治癒能力にも長けていたのだ。
それがきっかけで婚約。結婚。そして同時に一緒に討伐へ行く戦友として共に歩んできた。
過去に戻れるなら 自分を半殺しにしても…途中で止めさせるのに
~~あれはまだ、アイビーが2歳になったばかりの頃だった。~~
北部地方へ討伐要請があったため、いつものように向かった時の事。
全討伐予定は全部で2ヵ所だった。1ヵ所は難なく討伐できた為 最後の場所へ向かう時も大丈夫だろうと思っていた。
騎士団長や周りから、一旦、引き返し。
物資や他の兵を補給してからという意見を完全に無視した
そして最後の場所で主を倒したと思った。
安心して背を向けた瞬間、最後力を出した主は動き出し俺に牙を向けた。
魔物の雄叫びを聞いて、振り返った時には全てが遅かった。
「!!」
目の前でスローモーションのように倒れる 我妻。
その時、騎士団長が魔物の主の息の根を止めてくれた。俺は妻を両手に抱えたまま動けなかった。
私をかばうよう形で妻は致命傷を負ってしまった。全部俺のせいだ。
「あなた…が怪我してなくて よか…た くっ。」
苦痛に顔がゆがみ、どんどん顔色が青白くなっていく妻
「今、治してもらうから 大丈夫だからな」
「誰か!回復担当の者!医者、誰でもいい お願いだ!助けてくれ!」
「陛下…恐れながら…治せるものは先ほどの戦闘で死亡してしまいました。」
「なんだと?! 頼む…助けてくれ…」涙が止まらない
妻の手が俺の片頬を包んだ
「…あなた… いいのよ、これも…運命よ」血の海が広がっていく。
「違う!運命なんかじゃない!俺が…俺が…」
「あなた…アイビーを、この国を…お願いしますね。」
妻は小さく微笑んで その手を下した。 もう二度と愛らしいその声は聞こえなかった。
私の腕の中で息絶えた妻の顔が数年たった今でも鮮明に思い出せる。
「なあ、妻よ。私はどうすればいいのだ。
いつまで経っても終わらない…いたちごっこの魔物討伐に気持ちが弱ってるようだ…。
生きていたら何て話してくれるんだろう」
頬に一雫の水がこぼれた。
~~~~~~~~
時刻は早朝5時 辺りはまだ薄暗く、薄い霧に包まれている。
「整列!!」
騎士が一斉に並び、騎士団長が兵士達の前に数歩進んで止まる。
「本日は魔物の発生源を壊滅させる! 気を引き締めていけ! 負傷した兵士は後方で待機!
重傷者はこの場に残ること!」
「はい!!」
「皆の者!昨日はご苦労であった。今日は発生源へ向かう。昨日よりも困難になるだろう。
危ない時は逃げろ。皆で生きて帰る。それぞれの家族のもとに…帰るぞ!」
壊滅するぞぉーー!!!」
うおおおぉぉ!!
「出陣!!」
陛下はこの討伐が終わったら一旦城に帰る選択をした。
この兵士達の後ろには愛する家族たちがいる。
俺のような悲しい思いをさせたくないと思ったからだ。




