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元アラフォーが皇女に転生?!元暗殺者の少年を拾ったので育てます!  作者: 桜月ふたば
第一章

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13/61

EP13. 熱の向こう側に落ちていた知らない記憶


「皇女様!起きてください」

メイドの声で瞳を開くと、視界がぼやけていた。

―あれ、体が熱い……喉が痛いな―


「……ん”ん”! ……は”い”」

「皇女様?! 失礼します」

ガラガラな私の声を聞いたメイドは、そっと額に手を当て始めた。


「熱があるじゃないですか! 」

「誰か! 医師を! 皇女様が!! 」

メイド達が慌てた様子で部屋から出て行った。


―ここ数日の疲れが出たのかな―


「ケホッケホッ……。あ”ーやっぱ話すと喉痛いな」


しばらくして医者がやって来た。私が起き上がると、手を前に出して静止させる。


「皇女様。診断しますので、そのまま寝ててください」

緑の光が私を包み始めた。

医師の目線が、左から右へ往復し文字を読んでいるように見えた。


―すごい、私の診断スキルと同じことしてる―


「風邪のようですね。あと睡眠不足と表示されています」

医師が診断結果を私に話していると


「陛下が不在の中、お茶会で気苦労もあったのでしょう……」

「皇女様。おいたわしや……」

数人のメイド達が、私のベッドを囲んで話している。


「皇女様。処方する薬を毎食後に飲んでください。

メイドに持たせますゆえ、ゆっくり養生してください」

「は“い”」


「執事のルーカス様へ報告しに行ってまいります」


医者とメイドは部屋から出て行った。


パタンッ

扉が閉まる音が静かに響くと、私は起き上がり溜息をついた。


―やりたい事が沢山あったのに……風邪を引くなんて―


タブレットを出しログインガチャ回した。


~~~♪

【LR 真実の剣:自動修復】

―これ、少年にいいな―

アイテムBOXへ移動すると、通知音が鳴った。


――♪

【メールが届きました】

―緑の女神からだ! ―


―体調が悪そうに見えたのでメールしてみました!

お話があるので、元気になったら会える日を教えてほしいです。


追伸

よければ食べてくださいね―


添付が付いているボタンが光る。

押してみるとタブレットから、小さい光が出たあと姿を現した。

ふよふよと、金平糖みたいな形の塊が宙に浮かんでいる。


「飴?一応食べれるって事だよね?」

恐る恐る口に入れた。

わたあめみたいな、優しい甘さの飴だった


「おいひぃ」

喉のキリキリとした痛みが和らいだ気がする。


口の中で、コロコロと舐めながら

少年が欲しがっていた木刀のページを見ていた。

通販は食材だけではない。娯楽や雑貨、武器など様々だ。



―お!これ良さそう―

スクロールをしている手が止まった。

子供用の木刀。軽くて練習にピッタリらしい。

私は、木刀と真剣も両方カートに入れた。


―風邪移すとまずいし。今日は少年のところへ行けないな―


コンコンッ 


「昼食をお持ちしました。こちらは医者が言っていた薬です」

配膳されたトレーには、お粥みたいな皿と

その横に泥団子を小さくしたものが乗っていた。


薬の色と薬草の匂いに一瞬少し目をつむった後、空を仰いだ


―うぅ、飲みたくない。後で、こっそりアイテムBOXに入れて……―


「こちらの薬を飲むまで、私はこの部屋から出ませんので」

「……!」

私は、目を見開きメイドを見つめた。


―え、心を読まれた?―

メイドは笑顔でお茶の準備をし始めた。


―逃げられないわ……この薬は、そうチョコレートよ!個性的なね!―


私は、何度も薬を菓子だと思い込むように心の中で唱えた。

ご飯を食べたあと、メイドに監視……見守られながら薬を飲みこんだ。


ゲホッゲホッ

―クッソ苦い!まずい!無理ぃぃ-


苦さで顔が歪みながら、水をガブガブ飲む。


「熱が下がっても3日は、こちらの薬を飲まなければなりません。

苦いかもしれませんが、頑張ってくださいね! 」


私は、涙目でゆっくり頷いた。

―さっきの金平糖みたいな飴、取っておけば良かった……―


「皇女様、苦い薬を飲んだ後のお口直しによろしければ こちらをどうぞ」

白い包を差し出され、私は首を傾げた。


「ルーカスには内緒ですよ?」

ウィンクをしたメイドは、そっと白い布の包を私の目の前で広げると

、マシュマロが数個入っていた。


―うおぉ! このメイドは女神様だ! ―


私は、笑顔で何度も頷いた後マシュマロを口に入れた。

―美味しい! 口の中が苦味から甘さへ塗り替えられていく―


「あ”り”がと”」

「ふふっ、それでは別の仕事に戻りますので 失礼致します。」

メイドが部屋から出ていくと、

机の上に残ったマシュマロをアイテムBOXにしまった。


―早く治さなくちゃ……あの薬をもう飲みたくないし―


ベッドに再び入り、目を閉じた。


「おや……」

ルーカスが飲み物の補充をしに、皇女の部屋に来ていた。

蹴とばされた掛け布団と、豪快に大の字になって眠る皇女を見て

フッと口元が緩む。


「早く良くなってくださいね」

布団をかけ直したルーカスは、ふと机の上にあるノートを見つめた。

「熱があるのに、書き物をしていたとは……勤勉ですな」


開かれたページを閉じようとした時、日本語で書かれていた文章が目に入る。

手が止まり、ハッと息をのんだ。


「……この文字をどこで……」

紙の文字に、そっと触れた手が微かに震えた。

ルーカスは目を細め、暫くページを閉じられなかった。


     ◇


私はその頃、夢を見ていた。


真っ暗な空間に一人ぼっち。

光の元へ歩いていくと、空間が明るくなりガラッと変わった。

「どこよ、ここ。うぅ――頭痛がする」

こめかみを抑えながら、辺りを見渡すと走っている小さい女の子が見えた。


―私と同じ姿。でも、幼いわね―

ガゼボの周りには、薔薇やダリアなどが咲いていた。

雨が降った後だったのだろう。朝露がキラキラと輝いている。


「ママ!! 」

「アイビー走ったら危ないわ」

「えへへ。抱っこしてー」


ママの足に飛びつき、笑顔で見上げている。


―幼い頃の私ね。か、可愛いわ―

私はすぐ後ろで見ていたが、誰も気づかない。


「よいしょぉ~。重たくなったわね」

抱っこして微笑む王妃。


「パパも、抱っこしたい! おいで!」

パパが手を広げているが、首を横に振る少女。

「やー! ママがいい! 」

「振られたわね」

「ああ。ママには敵わないな」

3人の笑い声が、ガゼボに響いていた。


パッ

『え? さっきと場所が違うわ』


「ママ……」

声の方へ視線を向けると、猫のぬいぐるみを抱えて部屋の隅に座り込んでいる。


「皇女様。ご飯をお召し上がりになってください」

「……いらない」

首を大きく横に振り、俯いていた。


「はぁ……」

溜息をついたメイドは部屋から出ていった。


―ここは、私の部屋ね―

見慣れた家具と絵本がある。


「私が、いい子にしてなかったから死んじゃったんだ」


『そんなことないから!』

思わず肩に触れようと手を伸ばしたが、自分の手がすり抜けた。

『あ……無理なのか』


バンッ!

その時、扉が勢いよく開かれた。


「皇女様!いいかげんになさってください!! 」

―誰だ。この女は―


「王妃様は、最後までご立派でした。

皇女様もいつまでも塞ぎ込まないで気丈にふるまいなさい!」


―は? こいつ何言ってんの?―

私は、女を睨みつけ少女を後へ匿うように前に出た。

女へ手を広げ威嚇する。


『あんただって、親が死んだら落ち込むだろうし

切り替えなんてすぐ出来ないでしょうが! 』

聞こえないと分かっていても、怒りで叫んでしまう。


「ごめんなさい」

幼い皇女の消え入りそうな声が後ろから聞こえた。


パッ 

また空間が切り替わった。


「皇女様って、見た目だけ似てるだけよね」

「王妃様みたいにもっと――」


『なんなのこいつら……まだこの子は子供なのよ? 』


怒りで握った拳が震える。

広い廊下に居たルーカスへ走り出す少女。


「パパはいつ帰ってくるの?」

「もう少しで帰ってきますよ」

「そうなんだ……」

「ねぇ、おとっているってどんな意味なの? 」


ルーカスがその言葉を聞いた瞬間。

険しい顔になり、少女の両肩に手を置いた。


「誰にその言葉を言われたのですか? 」

「え……な、なんでもない」

少女はルーカスの顔色が変わったことに驚き、自分の部屋へ走っていった。


―そうか、親が立派だから比較され続けてたのか―


それから、いくつもの空間が切り替わった。

最後の空間に切り替わった時、初めての夜の場面だった。


「ママ。私をお空へ連れて行ってください。ここはとても悲しい場所だよ」

少女は窓から見える星に願いを伝えている。


『……』

言葉が出なかった。ただ、私は触れられないと分かっていても

少女を後ろから抱きしめていた。


―辛かったね。よく耐えた。あなたは劣ってなんかない。素敵な女の子よ―


緑の女神が、辛そうだったから器を変えたって言ってたのを思い出した。

『きっと、女神はこの子が過ごしてきた時間をずっとみていたのね』


パチッ!


「ハァハァ……」

夢から目覚めた私の頬には、涙が流れていた。




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