六話
帰宅していつも通り今日の授業で出された課題を終わらせ、あらかじめ出されている膨大な量の夏休みの課題に少し手をつける。国語の選択課題として、レポート、問題集、読書感想文とあり、読書感想文については本の指定はないため、好きな作家の小説で書こうと思う。
それにしても、夏休みの課題に、コンクール作品に加えて、後輩の作品のアドバイスという任務まで与えられてしまった。今年の夏休みは、忙しくなりそうだ。と言っても演劇部の冬華の方は、秋のコンクールに向けて私以上に忙しくなるようで、夏休み中に遊んだりは難しそうだ。少し寂しいけど、仕方ない。もともとそんな頻繁に学校以外で会うほどの距離感ではないのだし。
私は冬華が好きだけれど、幸いなことに依存までは行っていないので、健全な友達関係を続けることができている。
冬華以外にこれといった友達がいない私は彼女を親友と思っているけど、あれ? これって冬華以外に友達がいないから自動的に親友と思っているだけなんじゃ――とよぎったところで考えるのをやめ、課題に集中するようにシャーペンを走らせる手を少し早めた。
それでも、冬華は私のことをどう思っているんだろう、という疑問は、消えなかった。
まだ始まってもいない夏休みの課題に疲れてキリのいいところで手を止め、秘密のスケッチブックの中からコンクール作品を選ぼうと、開いてみる。
部屋が汚れるリスクを避けるため、スケッチブックの中身はすべて鉛筆で描かれたものだ。過去の私が音楽を聴いてインスピレーションをもらい、下描きに留めている作品たちに色をつけることを想像し、慎重に選ぶ。
コンクールとなると、作品にタイトルをつけなければならないことも考え、ぱっと思い浮かんだのは「新世界」だ。それに合った絵がなかったかとめくっていき、頭に浮かんでいた絵を見つけた。これにしよう。
下描き程度なら家でもできるので、早速手をつけようとして、一応時計を確認すると二十一時だった。先にお風呂に入ってしまおう。
浴室へ向かう途中で、母に呼び止められる。
「紬が最後だから、栓抜いてお風呂洗っておいてね」
「はーい」
入浴後に浴槽を洗う時間を考えると、今日中に下描きを済ませてしまうとして、就寝はだいたい二十三時半頃になるかな。いつもより遅い時間にはなるけど、夏休み中のことを考えると少しくらいの夜更かしはしておいて損はない。先延ばしにして、後の自分に恨まれるよりましだ。
髪や身体を洗い、湯船に浸かって、作品の構想を練る。下描きはスケッチブックに既にあるので、加筆修正するか否か、どんな色を塗ろうか、再構築の余地も考える。そうこうしているとすぐに時間は過ぎて、のぼせてしまう前に湯船から出て身体を拭き、浴槽を洗って髪を乾かし終えると自室に戻る。
スケッチブックの絵を見ながら、お風呂の中で構築していたものを画用紙に写す。新世界というタイトルは、お世話になっているバンドの初期のミニアルバムから来ている。そのアルバムの曲たちをもとに、私なりの解釈を乗せて鉛筆を走らせる。
下描きができたところで、時計は二十三時半の五分前をさしている。ほんの誤差だけれど、想定していたより早く終えることができた。
画用紙を片付けて布団に入ると、普段より夜更かししたためか、考え事をする間もなくすぐに眠りにつくことができた。




