二十五話
あの日から、あまり眠れない日が続き、背中を押されたのにも関わらず踏み出す決心もつかないまま、期末テストを終え、三者面談を迎えた。私は美大に進学希望ということを改めて伝えて、母と担任からの了承を得て、進学組に進級することが決まった。冬華は、その他組に。
もうすぐ冬休みが始まる。三学期は、短い。そして春休みを終えると、冬華とは別のクラスだ。高校生活はあと一年あるとはいえ、冬華と過ごせる時間は、もう、残りわずかだ。
部活での佐々木くんは、驚くほどに今まで通りだ。なので私も、努めて今まで通りに接するようにしているが、ぎこちなさが出ていないか不安になる。
演劇のコンクールをすべて終えて時間ができた冬華から、クリスマスに一緒に遊ぼうと誘われた。私はもちろん、誘いに乗る。
プレゼント交換をしようということなので、私はいい匂いのハンドクリームのギフトを贈ることにした。
美術コンクールで特別審査員賞を受賞したということと、クリスマスに冬華と遊ぶということで、私も多めにお小遣いをもらったので、高校生でも行けるくらいにはリーズナブルだけど、ちょっとおしゃれなイタリアンのお店に行くことに決まった。
そして、冬休みに入り、約束のクリスマス。
夏休みの自称デート同様、私は前日から服を用意したりボディケアを施して、顔にはナチュラルメイクにプチプラの新作のリップを塗った。
前回と違い、いつもの分かれ道で合流してお店に行くことになっている。冬華から、もう家出るねーとメッセージが来たので、私も出かけることにする。
曲がり角から、前回以上に可愛い冬華が姿を現した。
「やっほ、紬。今日も可愛いじゃん」
「あ、ありがとう、冬華も、……可愛い」
なんだか照れくさくて、俯いて言葉を絞り出した私を見て笑う彼女は、寒い寒いと言いながら私の手を握った。
冬風で冷えた手が、沸騰してしまうくらい熱くなっていくのを感じる。冬華の手を、それで温められたらいいのだけど。
手を繋いだまま、イタリアンのお店に到着する。今回は予約していたので、時間通りに着いた私たちは個室へと通される。
上着やマフラーを外して、それぞれパスタと、シェアする用のピザと、飲み物を注文して、待ち時間にプレゼント交換だ。
せーので開けると、冬華からのプレゼントは、今日冬華がつけているものとおそろいのマフラーだった。また意味を勘繰ってしまう前に、ありがとうと伝える。
「わ〜、ここのハンドクリームいいよね! 私好きなんだ〜、ありがとう!」
私からのプレゼントも、冬華は喜んでくれたようで、一安心だ。
そうしているうちに料理が来て、高くはないけど安くもないパスタやピザを堪能する。
「なんかさ〜、この一年で紬、結構変わったよね」
上品にパスタをフォークで巻きながら、冬華は言う。
「え、そうかな? ど、どこが……?」
「んー? 佐々木くんだっけ、と関わるようになってからかな?」
冬華の口から佐々木くんの名前が出ることには、慣れない。心臓が跳ねる。
「なんかこのまま佐々木くんと付き合ったりするのかなって思ってたりしたんだけど……って、告白でもされた?」
付き合ったり、の時点で思わず咳き込んでしまい、核心を突かれる。私は、無言で頷く。
「あーね、だから最近元気なかったのね。紬は全然意識してなかったってわけだ」
「うん、まぁそんなところかな……」
ドリンクを一口飲んで落ち着いたところで、冬華はそっかそっかとにこにこしながらピザを口にする。
結衣なら、付き合っちゃえばいいのに〜! なんて言いそうなところを、冬華は言わないし、何故か笑っている。
ずっとずっと思っていたけど、本当に冬華は、ずるい。




