二十三話
テストの返却が終わり、そろそろ進路を考え始めなければいけないことを担任から告げられる。うちの高校では、三年生は進学組とその他組でクラスが分かれる。私は美大に進学希望なので進学組、冬華はと言うと、少なくとも進学する気はないらしい。となると、自動的に三年生に上がると冬華とはクラスが分かれてしまう。人あたりのいい冬華のことだ、進級すれば私の他に友達が出来て一緒にお弁当を食べることはなくなるのだろう。ずっと、このままいられればいいのに。
新たな悩みの種が生まれたところで、コラボカフェが開催された。佐々木くんとの約束通り、一緒に行くことにする。
メッセージでやりとりをして、今日がその約束の日だ。整理券が必要らしいので、少し早めに行こうとなり、駅で待ち合わせをしている。
悩みを紛らわせるため、駅まではこれから行くコラボカフェのバンドの音楽を聴きながら歩く。改札の前で、佐々木くんと合流した。
私は男性ファッションには疎いけれど、きっと学生御用達のリーズナブルな服屋さんの服を綺麗に着こなしている。
電車内で、佐々木くんはあれから全アルバムを買ったことと、そのなかで特にお気に入りの曲の話をしてくれて、沈黙で気まずくなることはなかった。
バンドの話をしているうちに、あっという間にコラボカフェに到着し、整理券をもらう。早めに来たため、時間になるとすぐに店内に通してもらえた。
私はあらかじめ決めておいたオムロールと、フラッペと、オペラケーキを注文する。佐々木くんは、えび天サラダと、バンドのキャラクターを模したサンドイッチと、シソのジュースを。
店内には、バンドの曲が流れているのはもちろん、ライブで撮影された写真が壁に飾られて、映像も流れていて、このバンドが大好きな私にとっての幸せ空間だ。ランチマットとしてバンドのアー写が用意されているので、これは使わずにファイルに挟んで持ち帰ることにする。店側もそれを想定してのものだろう。
映えに興味のない私でも、ここではさすがに写真を撮る。店内を見回したり、写真を撮ったりしているうちに、料理が運ばれてきたので、その写真も残しておく。
「こんなに浮かれてる紬先輩、初めて見ました。一緒に来られて良かったです」
佐々木くんは笑いながらそう言って、いただきますと手を合わせる。私は急に恥ずかしくなって、俯きながら手を合わせる。
料理を口に運んで、咀嚼する。予想以上に美味しい。佐々木くんはと言うと、バンドのキャラクターを模したサンドイッチには食べるのがもったいない、と困ったように、けれど意を決して食べている。表情を見るに、彼の方も美味しそうだ。
料理を食べ終えて食器を下げられ、しばらくするとデザートのオペラケーキが運ばれてくる。例に漏れず写真に収めて、口に運ぶ。これも美味しい。佐々木くんは、シソのジュースをゆっくり飲みながら微笑ましそうに私を見守っている。なんだか気はずかしいので、食べる手を早めて完食してしまうところで、彼はお手洗いに席を立った。
安堵の息をついてフラッペを飲み干したところで、佐々木くんが戻ってくる。
「会計済ませたので、コラボグッズとか見に行きましょうか」
「えっ、そんな、悪いよ」
「入選祝いにお小遣いいっぱいもらいましたし、ほら、お礼させてくださいって言ったじゃないですか」
そう言われては、出すものも出せない。私は、心からありがとうと伝えて、席を立った。




