二十二話
冬華の言葉に頭を悩ませる暇もなく、テスト前の授業を経て、中間試験が始まり、無事に終えたところで部活に行くと、佐々木くんが何やらスマホを見せてくる。
「先輩の好きなバンドのコラボカフェ、行きましょうっ!」
コンクールの結果を聞きに行った時に話していたお礼というものだろうか。コラボカフェについては、先に関西でやっていたので私も知っている。こちらの地域では、行ける範囲ではあるけど少し遠出になるし、行きたいけれど一人で行く勇気はなかったので、正直嬉しい。
「うん、行こうか。ありがとう」
日程的にはまだ先になるので、交通費などのお小遣いを貯めておく余裕はある。私が佐々木くんの誘いを承諾すると、彼は小さくガッツポーズをした。どうしてもお礼がしたかったのだろう。
ほかの部員は、私たちが夏休み中に佐々木くんの作品の制作を見ていたのを知っているので、もはやひそひそと話すことはなくなった。
何を目的とするわけでもなく、それぞれまた作品の制作を始める。私は、不得手とするデッサンでもやってみようかと、キャンバスを用意して椅子に座る。部室には石膏があるので、それをモチーフに描いてみる。
大きくアタリをとって、比率を見て、明暗をざっくり分ける。そして、細部の描き込みに移る。見たままを描くのが苦手な私には、かなり難しい。美術をやってない人からすればそれなりなのだろうけど、ほかの部員たち、特に佐々木くんのものと比べるとかなり劣る気がする。キャンバスの前で頭を悩ませていると、柴崎先生が私の肩に手を置いた。
「近距離で見続けてると崩れに気付けないから、数分おきに離れて見てみるといいわよ。頑張ってね〜」
放任主義の柴崎先生が、珍しく私にアドバイスをくれた。私は言われた通りにキャンバスから離れて絵と石膏を見比べ、全体の違和感に気付く。
すぐに修正しては離れて見るを繰り返して、なんとか部活の時間内に及第点で仕上げることが出来た。まだ部内では見劣りするけれど、今までの私のデッサン画と比べるとかなりクオリティが上がっている。
自分自身の成長を少し感じて、けれどまだまだ佐々木くんには及ばないのでもっと練習しようと決意し、キャンバスを片付ける。
私にしては珍しく、下校時刻の放送が流れ始めるまで部活に残ってしまった。慌てて帰り支度を済ませ、校門から飛び出す。
帰宅して自室に入り、コラボカフェの内容を改めて確認する。コラボカフェという割には、価格はやさしめだ。何を食べようか今から決めておかないと、その場で悩んでは佐々木くんを待たせてしまう。そして、コラボグッズの方も見てみる。お小遣い的には、マグカップとコースター辺りが無難だろうか。大切にしまっておくのもいいけれど、日常的に使えるものがいい。
どうせなら、メインとデザートと飲み物を注文したいけれど、何種類かあるので目移りしてしまう。メニュー名はどれもバンドにある曲名からとっているので、好きな曲で決めてもいいのだけど。まぁまだ時間はあるのだし、じっくり考えることにしよう。
夕飯に呼ばれたので、リビングへ行って食事を済ませ、お風呂に入り、ベッドに潜って先程と同じようにコラボカフェのサイトとにらめっこをしているうちに、いつしか眠りについてしまっていた。




