十四話
ショッピングモールにたどり着いた私たちは、とりあえずゲームセンターのプリクラコーナーへ向かう。画像をスマホにダウンロードするアプリを使っていない私たちは、プリクラ大好きな結衣が使っている機種を選び、ダウンロードについては冬華から結衣にお願いしてくれると言う。お言葉に甘えてそれぞれ二百円ずつ入れて、あと百円はどうしようか、と聞こうとしたところで冬華がしれっと残りの百円を投入した。
「私が言い出しっぺだから、ね」
冬華と撮れるなら私にとってご褒美だったりするので、別にいいのに、と思いつつ、ありがとうと伝える。
機内に入ると、画面の上にプリクラを撮っている様子を撮るためか、ご丁寧にスマホを置く場所が設けられている。慣れていない私は、多分後悔することをわかった上で動画は回さなかった。記憶の中に刻みこんでおけば、それでいい。
いよいよ撮影が始まる。プリクラ慣れしていない私たちにも優しく、ポーズ指定があるのでその通りにポーズを決める。指ハートだったり、猫のポーズだったり、少し気恥ずかしい。最後に全身を撮るというので、どうしようかと冬華を見ると、にっこり笑って抱きついてきて、カメラ目線に戻す。吐息も聞こえる距離だ、私の心臓の音が聞こえてしまっていてもおかしくない。恐る恐る腕を回し返して、私もカメラへ向き、必死に笑顔を作る。この距離感も、別に変なんかじゃない。結衣だって、よく同じグループの子に抱きついているのだし。自分自身にそう言い聞かせ、感情が忙しかった撮影は終わった。
次は落書きタイムだけど、冬華はプリクラのデコレーションや盛れ具合などにさほど興味はないらしい。もちろん、私も同様だ。一応一枚ずつ確認して、お互い別に何も書かなくていいよねという意見で一致し、終了ボタンを押した。
プリントが終わり、それぞれ選んだお気に入りの一枚と、ダウンロードコードが小さく書かれたすべての写真が出てきたので、コーナーにあったハサミで丁寧に切り取り、お気に入りの一枚のプリクラはその場でスマホケースに挟んだ。冬華はというと、小さく書かれたコードとにらめっこしてスマホに打ち込んでいる。結衣にダウンロードをお願いしているのだろう。
「結衣から送られてきたら、紬にも送るね」
「うん、ありがとう」
プリクラを撮り終えた私たちは、女子高生御用達のプチプラコスメが売っているお店に入ってウインドウショッピングしたり、服屋さんでお互いに似合いそうな服を選びあったりした。予定外の行動なので、実際に買えるお金はお互い持ち合わせていないのだけど。このショッピングモールにはペットショップもあることを思い出した私たちは、かわいい動物たちを見るためにいそいそと歩を進める。
ガラス越しに見る犬や猫たちは、各々自由に過ごしている。ほかのお客さんに見つめられて尻尾を振る柴犬や、見られているのも気にせず呑気に眠る猫など、様々だ。子猫たちは、比較的大きな猫より元気に遊んで、ほかのお客さんにも興味を示していて、とてもかわいい。
「ここで言うのもなんだけど、命に値段をつけるなんてナンセンスだよね」
さっきまでかわいいかわいいと動物たちを愛でていた冬華が、値札を見た途端私に小声で耳打ちしてきた。彼女の主張には、私も同感だ。
「どうせ飼うなら、里親探してる保護犬とか保護猫の方をかわいがってあげたいよね」
高校生の私に命を預かる権利なんて持ち合わせていないので、もしもの話だけれど、本当に飼うことを考えた時に感じたことを私も冬華に耳打ちする。
お互いうんうんと頷いたのを合図に、ペットショップをあとにした。
かなり色んなお店を見て回ったので、もう日が暮れそうな時間だ。私も冬華も特に門限は厳しくないけど、そろそろ帰ろうかという雰囲気になり、私は少し名残惜しく思いながらショッピングモールを出る。
帰り道に、結衣から画像が送られてきたようで、冬華は私とのメッセージにアルバムを作成した。通知は一度しか来ないし、一括保存できるので、ありがたい。
「そういえば、プリ撮ってるとき紬いい匂いしたけど、なんかつけてる?」
「ん、プチプラのボディミストだよ」
まさか抱きつかれるなんて予想はしていなかったけど、つけてきて本当に良かった。
プチプラという単語からメイクの話になり、彼女の使っているコスメを聞いているうちに、ついに分かれ道にたどり着いてしまった。
「今日はありがとね、課題も。本当に楽しかった。可愛い紬も見れたし、ね」
冬華はふふっと笑い、またもや私の鼓動を加速させる。
「こちらこそありがとう、私も楽しかった。残りの課題も、部活も頑張ってね。また、新学期に」
分かれ道で長話をすると、本当に名残惜しくなって帰りたくなくなってしまうので、私は早々に手を振り、自宅の方へと向かう。
「また新学期ねっ!」
冬華も大きく手を振って、彼女の家の方へと向かっていった。
昨日から楽しみにしていた冬華との自称デートは、楽しいまま終わってしまい、急に寂しくなる。早く課題を終わらせてしまって、新学期が楽しみな状態を作ろう。そう決意して、私は自宅の玄関を開けた。




