十二話
夏休みも終盤に差し掛かってきた、とある土曜日。毎日コツコツ進めてはいたけれど、あまりにも膨大な量なものだから、ようやく課題の終わりが見え始めたところだ。ちょくちょく佐々木くんからの呼び出しで学校に赴き、進捗具合を見たりしていたけれど、順調に描き進められている。もう、私のアドバイスなんて必要ないくらいに。
書いている途中のシャーペンを置き、椅子に背中を預けて凝り固まった身体をほぐすように伸びをしたところで、スマホの通知が鳴った。
「明日、部活完全オフだから、課題も写し終わったし遊ばない?」
冬華からのメッセージに、思わず顔が綻ぶ。こんな表情は、彼女には絶対に見せられない。
「いいよ、どこか行きたいところある?」
既読はすぐにつき、カフェのリンクが送られてくる。
「ここのパフェ気になってるんだけど、どうかな?」
リンクを開くと、ページのトップに季節限定の桃のパフェが表示された。美味しそうだ。
「美味しそうだね、いいと思う。そこにしよう」
「じゃあ、十時くらいにお店集合で。なんか噂によるとめっちゃ大きいらしいから、半分こしようね」
サイトを見るに、確かに大きそうではある。女子高生ひとりで食べきれるか怪しいほどに。半分こ、か。
彼女の言葉に深い意味はないことは分かっているけれど、まるでカップルみたいだ、なんて考えてしまう。よくない。
「わかった、じゃあまた明日ね」
そう送ると、彼女からいつものスタンプが送られてきた。
画面を閉じ、リビングに向かう。母に、冬華と遊ぶから明日の昼食は不要だという旨を伝える。
「あらそう、本当に冬華ちゃんと仲良いのね。楽しんできてね」
そう言うと母は財布から二千円取り出し、差し出してきた。臨時のお小遣いらしい。私はありがたく受け取って自室に戻り、クローゼットを開ける。明日、何を着て行こうかと色んな服を引っ張り出して姿見で合わせ、ああでもないこうでもないと悩む。
ようやく決まった頃には日は暮れ、夕食の時間になっていた。引っ張り出した服で散らかった部屋を片付けて夕食をとり、お風呂ではいつもより念入りにトリートメントを施して、母の化粧水を借りて肌を保湿する。明日起きて寝癖がついているなんてあってはならないので、ドライヤーもいつも以上に丁寧に。
――デートだなんて、冬華は思っていないだろうけれど。私にとってはデートも同然だ。それは、前日から既に始まっているのだ。
普段しないようなボディケアまで手をかけていると、あっという間に夜が更けていたので、慌ててベッドに潜る。
今日は、上手く寝つけるだろうか。いつもなら悩み事の方で考えが止まらないので脳がキャパオーバーを起こすが、今は明日が楽しみでしかなく、ドーパミンが出すぎている気がする。現に、全く眠くない。
寝坊するなんてもってのほかだ。私は充電したままのスマホに手を伸ばして、メジャーな動画サイトで睡眠用BGMを流し、目を瞑る。なるべく無心になって流れる音楽に身を委ねているうちに、眠ることに成功した。




