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異世界転移ならAとDは大先輩




 空を行く2人の視界には人間の街が見えていた。

近づき過ぎては危険なのでチャティは見通しの悪そうな林を見つけ降り立った。

「さて、私はここまでです。四天王として振る舞い魔王様に貢献するのですよ」

「四天王っぽく振る舞ったら即バレちゃうじゃないすか」

「では」

「あざっしたー」

そうしてトウニを置いて速やかにチャティは飛び立っていった。


 これからどうしたものか、うなだれながら木々の間を縫って見通しのいいところに出たトウニ。

すると視界の橋に凄まじい大きさの火球が飛んでいくのが見えた。

その行き着く先はチャティである。

遠目に見えた有翼人は回避をしようにも広範囲の攻撃になすすべ無く派手に吹っ飛んびそのまま地に落ちていった。

「おいおい、チャティさん大丈夫かな。まさかいきなりやられちゃった?まじかよ。四天王に早くも犠牲者が。もしかして実は弱かったのか。まいっか」

遠くから風に乗って笑い声のような音が聞こえる。

姿は見えないがどうやら誰かが笑っているのだろうことが伺えた。

おそらく火球を放った者だとトウニは思い、近づかないよう街へと向かった。


 意外と距離のあった道のりを経てたどり着いた街は騒然としている。

防壁があり検問らしき物もある。

こっそり近寄って様子を見るつもりがあっさり憲兵に見つかってしまった。

「お前はどこから来たんだ」

「自分すか、自分はちょっと遠くから...」

「ああ、お前追放された口か」

「そっす。世界からも城からもチームからも追放された感じっす」

「よくわからんがどっかの貴族にでも売られたか」

「偉い王様に命じられてここにきたんですよ」

「わかった、もう行っていいぞ」

「はいー。あ、どっかで金稼げるところあります?」

「どこかにはあるだろうが自分で探せ。おれは世話役じゃない」

「ですよね。あざっす」


 街の中は兵士というかゴツい戦士のような人間がひしめいていた。

商店を覗くと大半は飲食と武具を並べており娯楽は酒くらい。

路地の奥もあるようで本当に娯楽というならそっちにあるようだった。

トウニはざっと街の様子を見て回り仕事を探すことにした。

適当な店に入り聞いてみる。

「あの、仕事探してるんすけど、雇ってくれたりします?」

「お前何が出来るんだ?」

「どんなことが出来たら雇ってくれます?」

「そのへんの雑草で最高級の料理を作ったら雇ってやるよ」

「あざっしたー」

めげずに次に行く。

トウニはかつていた世界で言われていた就職は100社巡るものだということを思い出していた。

だが彼は実際にそんなことをしたことはないのでせめて10かな、と思うことにした。


「次はここだな。料理がダメなら武具の販売店だ。すみませーん」

「いらっしゃーい」

「自分雇ってもらえませんか?売り子として」

「お前がいることで客が来るようになるならいいぞ」

「どんなことしたら客が来ます?」

「それを考えて実行するのがお前の仕事だ」

「おお、仕事ゲット?そうだなー。街頭で宣伝とか」

「で、誰が店ん中で販売やるんだ?」

「そりゃ別の誰かっすよ」

「外で何やってるかわからん奴に金払えと」

「そす」

「ぶっ殺すぞ!」

「すませんでしたー!」


 脇にあった斧を振りかざされ急いでトウニは逃げ出した。

他にどんな仕事があるか、どんな条件なら雇ってもらえるのか。

彼はちょっと偏りがある気がする世の厳しさを骨身にしみるほど感じながら街を歩き回った。


 疲れ果てたどり着いたのは兵舎と見受けられる建物だった。

疲れ果てた彼は回らない頭を武器に無謀な交渉に出た。

「あのー、すませーん、ここって何か仕事ありますか?」

「おお、あるぞ」

「まじか。ここは神の国か」

「ほれ、そこの掲示板見てみろ」

「押忍」


男に示された掲示板を上から下までざっと見た後一枚ずつ読んでいく。

「魔王討伐。一生遊んで暮らせるお金があなたのものに。出来てりゃこんなとこ来てねーよ」

ふと、魔王に最も近づいた人間は自分なのではと思いつつ、次の掲示物を見ていく。

「魔王の直近ツインズ。これはもう討伐されてるな。これは魔王の五大将軍、もやられてんな。なんか魔王って、劣勢じゃね?」

「ああそうだ。魔王軍はほぼ壊滅状態にある。だがな滅んじまうとここらの産業が止まっちまうからな。人間同士の戦争に移行しちまうから殺さないようにしてんだ」

「うへー、ヤクザなやりかたっすね。ん?それって魔王にこき使われる自分はずっと解放されないってことなんじゃ...」

「あん?なんか言ったか」

「なんでもないっす。いやー自分に出来そうなのないかな。この通り戦いは出来ないんですわ」

「ならいい仕事があるぞ」

「おお、ぜひ紹介してください」

「これだ。あとこれもいいかもな」


一枚目には"試し斬られ人募集。和気あいあいの職場。我々と一生の思い出を残しませんか"と記されていた。

「一生消えん思い出か命と消える思い出しかできねーよ」

トウニは紹介された2つ目を見た。

そこには"激戦地の盾役者になろう。世界はあなたという英雄を待っている"と書かれている。

「タテの字がちがっててやべー仕事になってんじゃねーか。まともな仕事が欲しいのですが」

「お前、何しにここに来たんだ?」

「えっと、市場調査?」

「はぁ?」

「この街の状況を確認してこいと、とある王様にいきなり言われてここに放り込まれまして」

「ふーん、そうだなぁ、まともな仕事。お前知らなそうだから教えてやるが、ここは魔王軍との戦いにおける最前線基地だぞ。そこでまともな仕事ってむしろなんだろうな」

「最前線...まじかよ。そういば来る途中デカい火球が飛んでいくのが見えたけど、あれが日常なんすか?」

「デカい火球?ああアリスとドロシーか。まぁ、あいつらにとってはよくあることだ。気にするな」

「あれが日常...やばいとこ来ちゃったなぁ。あ、ここってなんか受付とか募集してないっすか?」

「してねーなぁ。が、しかたねー。ちょっとの間だけ使ってやる。ただし期限を設けるぞ。それ過ぎたら容赦なく追い出す。あと使えないと判断したら即追い出す。せいぜい働け」

「へへー。ありがたやありがたやー」


 こうしてとりあえず仕事らしきものを掴んだ彼は住む場所として湿っぽい地下の一部屋に案内された。

石造りでできた部屋は地下牢の如し。

「うげー、野宿のほうが良かったかも。まぁいっか、外はすげー危険そうだし。しかし異世界転移の大先輩方が要注意人物とは。やれやれ。こんな調子じゃスパイなんてしてる余裕ねーじゃん。どうしたものかなー」


 今後を憂いながらトウニ知らずに眠りに落ちていった。

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