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転生したらΩだってそんなの知らんがな ~ユニコーンΩのミリしら転生記編  作者: 井氷鹿


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5/10

バカヤロウ、誰が出産するかってんだ

「殿下、お時間良いですか」

「いいよ。何か見つかったのかい」

 立ち上がる気配がして、王子がやって来た。

 慌てて立ち上がると、肩を押さえられまた座らされる。

「君と同じΩの最後を知って、ショックだろうけど」

 腕を組み、やや上から得意げな顔で見下ろしてきた。

「今こっちの端末に僕が調べてたサイトを出すから、確認してみて」 

 言いながら目の前のキーボードを操作する。

 重低音を立てディスプレイが明るくなり、またキーボードを王子が叩くと画面にサイトが映された。

「お産でΩが亡くなる理由が、ここに書いてある」

 咄嗟にマウスを握り、画面を見つめる。

『一般的Ωには体内に魔力が一切存在しない。そのため魔力を宿すAlpha胎児を妊娠した場合、腹の中で胎児が成長する過程で母体の栄養だけでなく『生体エナジー(生命力の源泉)』を枯渇するまで根こそぎ吸収・奪い取って生まれてくる。このため出産時に母体は極度の衰弱死を免れない。』

 何だよこの記述内容は。

 そもそもAlphaってのが分からん。母親の命と引き換えにしても得たい人種って事か。

「Alphaを妊娠した母親は、魔力が無いから子供に命取られて衰弱死、するって事かよ……じゃ、Ωの俺を産んだのになぜ、あ」

 ギュンターには魔力があったんだ。それで母親が。

「僕の母上は幸いAlphaだったから、お産で亡くなることは無かったが事故で亡くなったからね」

 何だって? 事故で母親が亡くなったって。

「ちょ、ちょっと待って。殿下」

 驚き過ぎて、立ち上がった拍子に大きな音を立ててゲーミングチェアを蹴倒してしまう。

 あわわっ。

「ほら、大丈夫かい。ケガしてないよね」

 俺の体を気遣い、椅子を起き上がらせる。

「いいから、座って」 

 と俺を座らせ、画面を指さす。

 見るとユニコーン種についての項目があった。

 すかさずマウスを合わせ、画面を開く。

「覚えてないとか言ってたけど、セル・パッドは使いこなすし」

 え?   

「この、セル・コンも僕は何も言ってないのに、マウス使って画面をスクロールして」 

 しまった。慌てて、マウスから手を離すが、遅いか。

「君を責める気は全くないし、怒っても居ないけどさ」

 そう言うと、デスクに腰掛け笑みを押し殺した顔でこっちを見つめて来た。

 この、クソ王子め。

 何企んでやがる、その顔は。同情なんかするんじゃなかった。 

「何より、君は本当に貴重な存在なんだって事は、分かって欲しいんだけどなぁ」

 あ~、ごまかすのが面倒になって来た。

 何だよ、笑いを堪えた顔でこっち見やがって。くそ、可愛いなぁ。

「そんなにむくれないで」

 我慢できないとばかり、人の顔見て笑いやがった。 

「だから、僕を信じて話してくれないかな」

 くそう。この世界では、王子以外頼れる奴が居ないんだよ、俺には。

 何より、ギュンター自身が王子を信じ日記の入ったセル・パッドを託したんだ。

「分かった。先に言っとくが、荒唐無稽すぎてまず信じられないと思うよ」

「大丈夫。どんな話でも、君が本当だと言うなら僕は信じる」 

 今度は真剣な顔で、俺の目を見つめて来た。

「さあ、僕に全部話して」


 王子は俺がこの世界にやって来るまでの話を、最後まで真剣に聞いてくれた。

 相槌も、一切挟まず。

 なるべく詳しく、俺は覚えてる限りのことを話した。

 帰社前にコンビニに寄った事。

 それから、ペットボトルのお茶を飲んだ事。

 歩道を歩いていたら、突然上から何かが落ちて来て、死んでしまったこと。

 気が付いたらベッドで寝ていて、身動きが取れなかった事。

 知らない人に囲まれて、この上なく居心地が悪かった事。

 毒と知った上で、焼き菓子を食べたギュンターの決心も。

「動けるようになってからは、この通り。あっという間に回復したよ」 

「うん。王室からは治癒魔法の賢者を派遣してたからね。倒れた直後は、本当に危なかったんだ」

「だけど、ギュンターは」

 王子がデスクから降り、俺の肩を掴んで抱き寄せた。

「心配無いよ。ギュンターは君と同じで、別の体で生きてるはずだから」

「え? 彼の魂は生きてるってことか」

 顔を上げると、王子は笑って頷き、俺の頭を軽く撫ぜた。

「彼の心配はしなくても大丈夫。それより、ここに来る前の名前って憶えてる?」

 名前。

「ああ、日本って国に住んでたんだ。俺の名前は宇條だ。宇條努(うじょうつとむ)

「うじょうつとむ」

 おうむ返しに俺の名前を王子が言う。上手に発音するなぁ。

「今はギュンター・フォン・ローゼンベルク。しっかり覚えておいて」

「分かったよ。俺の名前は、ギュンター・フォン・ローゼンベルク。オーケーだ」 

「僕はオスカー・フォン・ヴァルハイト。正式名はもっと長いけど。ヴァルハイト王家の嫡男だ」

 そう言うと、また可愛らしい笑顔で微笑み手を差し出してきた。

「オスカー殿下。ギュンター・フォン・ローゼンベルクです、宜しく」

 握手を交わしながら、ふと気になった事を聞いてみた。

「この記事なんだけど、Ωって性別ないのか?」

「性差はあるよ。現に君は男性で、君の母親は女性だったでしょ」

 じゃぁ、なんで妊娠に関して記述に性差が無いんだ?

「でも、俺は男なのに殿下の婚約者って」

 ああ、と合点がいったような顔をしてスッと手を伸ばしマウスを掴む。

 画面を操作し、この王子、とんでもない解剖図を拡大しやがった。

「うそ」

「嘘じゃないよ。たまたま君の父上が女性Ωを選んだだけで、男性のΩと子を成した夫婦だって居るよ」

 子を成すって、おい。ふざけるな、俺は男だぞ。

「僕とギュンターの子って、絶対可愛いよね」

 バカヤロウ、誰が出産するかってんだ。

「あはは、ギュンターって困るとそんな顔するんだ」

「アホな事言わないで下さいっ」

 冗談じゃねーぞ。何で前立腺の裏に子宮があるんだよ!


挿絵(By みてみん)

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