↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したらΩだってそんなの知らんがな ~ユニコーンΩのミリしら転生記オスカー編  作者: 井氷鹿
第1章 ユニコーンΩのミリしら転生記オスカー編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/27

どうやって白状させようかなぁ

 ウィルが挨拶して、ドアが閉まる。

 ようし、みんな出て行ったな。

「ギュンター、好きな物取って食べて」

「うん。ありがとう」

 慎重にカップを持って、香りを嗅いでる。

 紅茶が好きなのかな。

「元気になって良かった。戻ってきてくれてありがとう」

 ん? 不思議そうな顔して。

「ボクとの婚約で君を守れると思っていたのに」

 何故か、今、引かれたような気がする。えっ、ちょっと待って。と先輩の手を取るけど。

 うわぁ、先輩、顔が引きつってるよ。そんな嫌がらなくても、ボクは婚約者なんだよ。

「君の命を危うくしてしまったね」 

「え? 俺、死にかけたの?」

 は? 

 そうなんだけど、それはギュンターが望んだ事で。

 いやいや、そんな事言いたいんじゃないよ。

 どうしよう。何て言えば良いんだ?

「ギュンターがボクの代わりに毒入りの菓子を……」

 うわぁ、ますます驚かせてしまったよ。

 そりゃそうだよな。ボクも生まれてようやく落ち着いたと思ったら、いきなり枕で顔を覆われたからな。

 あれはびっくりした。

 先輩も、殺されかけてたなんて言われたら、そりゃ驚くよね。

 相当緊張してるみたいだし。

「あの、どう言えば良いのか、その、覚えてないというか、記憶がないんだ」

 え? どういうこと? 

「記憶がないって、ちょっと待って。ボクの事も覚えてないって事かい」

 ちがーう。何バカ言ってるんだ、来たばかりの先輩が今のボクの顔が分からないのは仕方ないじゃん。

 たとえ昔のボクの事を覚えてなくたって、先輩は先輩で。

 そんなこと聞きたいんじゃない。

「自分の名前も、実は、分からないんだ。ギ、ギュンターって誰?」

 

 え? 何にも分かってないって事か、もしかして。

「うっそ~っ」

 カリエルの奴、何してんだよ。状況ぐらい説明しとけよ! 

 とにかく、先輩をこれ以上緊張させないようにしないと。

 笑顔だ、笑顔。 

「ボクの名前、分かる?」

 先輩が不安そうに首を振る。

 そりゃ、知らないか。大丈夫、知らなくても。大丈夫だよ~。

「じゃ、ここがどこかも分からないんだ」

 今度は、そうだと頷いた。

 だよね。そうか、全く分からないまま来ちゃったのか。

 カリエルの野郎っ。また一つ貸しだからな。

「何も覚えてないの?」

 即座にうんと頷く。子供に戻ったからか、オレ様だった先輩が素直過ぎてめっちゃ可愛いんだけど。

「記憶を失くしたのは、毒を食べたから?」

 うわっ、顔色が変わったよ。口を押えて、毒を食べた時の記憶が残ってたのか。

 すがるような眼でボクを見てるよ。

「ボクの為に。何も言わずに戻ってきてくれて、ありがとうギュンター」

 愛おしすぎて抱きしめてしまう。大丈夫だからね、これからは絶対に守るから。

 首筋に顔を埋めると、何とも云えないうっとりするような香り。同じΩでも、ユニコーンの香は特別だ。

 頬を摺り寄せたら、先輩も頬を寄せてくれた。

「もう絶対、君を危ない目には遭わせないから。ボクの事、許してくれるかい」

 ずっとこうして居たいよ。もう離したくないよ。ああ、なんて手触りのいい髪の毛なんだ。先輩だと思うと全部が新鮮で何度でも触りたくなる。

「もちろん! 記憶ないから、気にしてないというか。元気だし」

 そう言って、ボクの肩を掴み体を離す。うん? 顔が真剣だな。

「ボクの代わりに、君は毒の入った菓子を食べたんだよ。半分に割って」

 焼き菓子を割って、その時の真似をして、差し出してみせる。


挿絵(By みてみん)


 瞬間、先輩の目が曇ったぞ。

「毒を食べさせようとしたのは……」

 も、もしかして、ギュンターのまま? カリエル、仕事失敗した?

「思い出したの」 

 そんな、今にも泣きそうな顔して。

 自分が生まれたせいで、父親や兄姉たちから愛されていた母親を殺してしまったと思っていたギュンター。

 自分がユニコーンでさえなければと、自分を責めて責めて、憎んでいた。

 そんな苦しみから自由になって欲しくて、ボクはカリエルに頼んだのに!

 あのクソ天使がっ。

「君は、全ての元凶は自分だと、そう考えてたんだよね」

「それは!」

 急に怒ったみたいに顔を上げ、先輩の頬を触っていたボクの手を握りしめる。

「それはよく分からない。ぼんやりとしか、思い出せないから。正直に話すと、記憶はほとんどないんだ」

 うんんんっ? ボクの手を握った? その上、ボクの目を遠慮なく見返してきた。

「それは、毒のせいなのかい」

 正面からボクの目を見つめ返す。

 ギュンターなら、あり得ない!

 カリエル、ちゃんと仕事してた。

 あは、疑ってごめん。

「見た目はギュンターなのに、違う人みたいだな」

 おおっ、目が泳いだぞ。

 やった。先輩だ、間違いない。都合悪いと目を逸らす癖が、そのまんまだ。

「最初に抱き着いた時、抱き止めてくれたよね。ギュンターなら、頭を撫でてくれるけど、君の様に抱きしめるなんてしないよ、遠慮して」

 一瞬、先輩の顔が強張る。

「それは、大変失礼しました」

 うわっ、先輩が慌てて姿勢を正したよ。

 そうか、ボクは王子だからか。そこまで遠慮されたら、こっちも困るけど。

「あんなにしっかり抱きしめられる事なんて無いから、嬉しかった」

 それに、無邪気に指先で突かれた。

「ほっぺもね」

 言ったとたん、先輩が目をむいて立ち上がる。

「ごめんっ。勝手に触ったりして。じゃない、えっと、大変申し訳ございませんでしたっ」

 ボクの手を掲げて頭を下げる。

 冗談で言ったつもりだったのに、真剣に受け止められちゃったよ。

「何言ってんの、ボクは嬉しかったよ」

 安心させるように、ボクも立ち上がり先輩を座らせる。

「なんか変だよ、ギュンター」

 先輩の笑顔が引きつってる。ボクを王子と意識したからか、また緊張させちゃったな。

 気を付けないと、ボクの方が立場が上だったんだ。

「やはり、全然別人だ。君、本当にギュンターなの?」

 ここじゃボクの言うことが絶対なんだ。ボクは王子で、それも次の王になる王太子だった。

「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ」

 ボクったら、何をそんなに焦ってたんだ。もう先輩は、どこにも逃げられないんだから。

 カップのソーサーを持ち上げ、飲みやすくなった紅茶に口を付ける。

 う~ん。これは、いい香りだ。のど越しも悪くない。

 さて、どうやって白状させようかなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。