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転生したらΩだってそんなの知らんがな ~ユニコーンΩのミリしら転生記オスカー編  作者: 井氷鹿
第1章 ユニコーンΩのミリしら転生記オスカー編

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ギュンターだけどギュンターじゃない

 先輩が城にやってくる日を迎えてしまった。

 もう興奮して、夜明けまで何度も目が覚めてしまった。

 今日から隣のベッドで、先輩が眠るんだと思うと。

 わぁあああ~っ。

 ダメだダメだ、変なこと想像したら。

 う~っ。

 

 あの日会いたかった先輩の夢を見たせいか。

 城に戻って来る日の知らせを受けた夜、僕はこの体になって初めて夢精してしまった。

 隠しようがなくて、結局ウィルにもバレてしまい、体現した場合に備えて薬を渡されてしまったよ。

 まぁ気休め程度にしかならないのは、分かった上でウィルも渡してきたんだろうが。

 しかし、今夜から隣に先輩が寝るんだぞ。

 大丈夫か、ボク。

 あああぁ、不安はいっぱいだけどさっさと着替えて準備しなきゃ。


「殿下、もうそろそろギュンター様がお着きになりますよ」

 待ちきれず、部屋から出たところを目ざとく見つけられてしまう。

 ウィルも嬉しいのか、落ち着かないように見えるけど。

 お互い目が合い、苦笑いを浮かべてしまう。

「ではわたくしは、お先に外で待たせていただきますね」

 役得だとばかり、弾む足取りでウィルの奴が廊下を歩いて玄関ホールへと出て行った。

 あいつ、ステップでも踏みそうな勢いだな。

 ボクも落ち着かず、廊下をうろうろしていたら開いた入り口のドアからセル・ヴィークルのエンジン音が聞こえてきた。

 うわぁ、着いたんだ。

 先輩が、ここにやって来るよ。

 ああ、心臓が早鐘の様に鳴ってる。頭というか耳の奥で脈打つ心音が大音響で響いてるぞ。

 

 あぁ、やっと会えるんだ。外見はギュンターのままだけど、中身は。

 ドアの閉まる音だ。先輩が車から降りたんだ。

 くそっ、呼ばれるまで待ってられるかよ。

 居ても立ってもいられず、ボクは駆け出した。

 先輩先輩先輩先輩。せんぱーいっ。

「せ、じゃないっ」

 大きく深呼吸してボクは階段を走り降りた。

「ギュンター! よくぞ戻った」

 おお、驚いてこっちを見てるよ。

 せんぱ~い、一ノ瀬です。

 思いっきり抱き着いたら、しっかりと小さな体で受け止めてくれたよ。

 嬉しいから、頬ずりしちゃう。

 ウィルが堅苦しい事言ってるけど、気にしなくて良いからね。

「さ、一緒に行こう!」


挿絵(By みてみん)


 先輩はボクの婚約者だからね、しっかり手を引いてエスコートしないと。

 わぁ、先輩と手を繋いじゃったよ。

 先輩ったら、不思議そうな顔で上ばかり見てるなぁ。そこに何が見えるの。

 来たばかりだから不安なのかな。日本とのギャップに驚いてるのかな。

「ギュンター、何を見てる?」

 あ、やっと僕を見てくれた。

 思わず顔がにやけちまう。

 えっ?

 突然先輩がボクの頬を指で突(つつ)いてきた。

 せ、先輩。そんなに何度も何度も突かれたら。

「くすぐったいぞ、ギュンター。な、何をするっ」

 あああ、先輩っ。

「かーわいい」

 うわっ! 可愛いだなんてっ。

 顔が熱くなってきた。そんなに見つめないで。

 見慣れたはずのギュンターの顔が恥ずかしくて見られないじゃん。

「ギュンター、君はもうっ」

 ダメだ、嬉しすぎて愛おしすぎて我慢できない。

 両手でしっかり先輩を抱きしめたら、先輩もボクに抱き着いてきた。

 ああぁ、生きてて良かった。

「オスカー殿下、もうすぐお部屋です。婚約者のギュンター様が元気になられて良かったですね」

「うん」

 先輩がギュンターになって帰ってきてくれたよ。

「どうぞ」

 ウィルがドアを開けてくれたのでそのまま手を引いて、ギュンターと部屋に入る。

 何を言えばいいんだろう。いきなり先輩って聞くのはまずいよね。

 とりあえず、ボクは王子だ。余裕をもって、相手をしないと。

 なにせ、この世界じゃボクの方が先(・)輩(・)なんだから。

 ウィルの手前、偉そうでごめんね。 

「ギュンター、今まで逢いに行けなかった事、許せ。動くと危ないと、城から出してもらえなかったのだ」

「うん。それは」

 きっと何の事か分からないんだろうなぁ。

 それでも、ボクに笑顔を向けてくれたよ。 

 まだ笑顔だ。同じギュンターなのに別人なんだよな。

「どうぞ、座って」

 ソファーに座らせ、隣に引っ付いてボクも腰を下ろした。

 お茶を飲んだら部屋に行って、話をしよう。

 落ち着け、オスカー。お前は王子なんだから。 

「ありがとう、付き合ってくれて。もう少し我慢してね」

 耳元でささやくと、大きな瞳をより大きく見開いてボクを見つめてきた。

 ああぁ、これ先輩なんだよね。紫色の瞳にピンクゴールドの長いまつ毛。

 ギュンターだけどギュンターじゃない。

 そう言えば、今までこんな近くで見た事無かったよな。

 昔の先輩も綺麗な顔だったなぁ。もうぼんやりしてハッキリと思い出せないけど。

 ギュンターが口を開いたところでノックが響いた。

 お茶の用意ができたのか。

「入っていいぞ」

 ウィルが先導し、メイドがテーブルにアフタヌーンティーの準備を始める。

 それが珍しいのか、先輩ったら菓子の一つ一つを好奇心旺盛な子供のように見つめてるよ。

 実際、十歳の子供になっちゃったからなぁ。

 ああ、これから長い付き合いになるんだと思うと、もう嬉しくてどうにかなりそうだ。

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