宇條先輩が、この世界にやって来たよ
眠る前。
目を閉じると、突然カリエルが現れた。
「王子様~っ、良い知らせを持ってきましたよ」
いつも通り能天気な笑顔だな。
「いい知らせって事は、無事に呼べたんだな」
「はい。無事ご依頼の方は終了しましたので、お知らせに来ましたぁ」
そう言って、事務的な笑顔を作る。
「それはありがとう、カリエル」
「そんな、お礼だなんて。私も王子様の為に今回は頑張りました」
とガッツポーズをして見せる。
「で、宇條先輩は元気なんだね」
「はいっ。それはも……うっ」
慌てて口を手で押さえやがったよ。
チッ、つられて言うかと思ったのに。
「元気ならいいや」
「と、とりあえずお約束した件は、すべてご希望通りに」
「希望通りにどうしたの?」
「適材適所にて処置いたしましたっ」
なんだよ、それ。
「ギュンターの方も、大丈夫なんだよね」
首が折れる勢いで頷いてるよ。
イレギュラーなリクエストだから、口に出せないってか。
「宇條先輩も、無事なんだよな」
これまた、バンギャ並みにヘドバンしてるよ。
「最初に間違えたのは君なんだからね」
「はい、それはもうわたくし、猛省しておりますです」
そもそもボクがここの王子に転生することが間違いだったんだから。
人を助けて死んだボクが、こんな人生に転生なんてあり得ないからな。
「生まれて即殺されかけるなんて、な」
「ひっ。それは仰らない約束で」
カリエルが怯えて抵抗するように手を前に出す。
しかたないな。可哀想なので、優しく聞いてあげるよ。
「ボクの大切な先輩は然るべき場所に然るべき状態で大切に扱われているんだよね」
少し思案し、カリエルはまた他所を見ながらもごもごと喋りだした。
指をひっきりなしに動かしている。
「はい。王子様のご指示通り、然るべき場所に然るべき状態で」
ならいいよ。先輩がここに来てるなら。
「あの、具体的には申し上げられませんが、ご希望通りに事を運びましたので」
「ギュンターも無事なんだよね」
そこでカリエルの顔が、ぱっと明るくなる。
「はい! ギュンター様の体は回復に向かってます。ご安心ください。もうすっかり毒は消えました」
そこは、ボクの目を見て陽気に答えた。肉体は問題ないって事だな。
「聞きたいのは中身の話なんだがなぁ」
「は……い。ご依頼通り、その、約束は守りましたので……」
カリエル、これで貸しが無くなったわけじゃないけどね。
「あ、それからもう一つ。魂が安定するまで頭はぼんやりしてると思います」
「分かったよ。ありがとう」
それでほっとしたのか、ため息のような笑みが漏れる。
「それでは、また何かありましたらお知らせに上がりますね、王子様」
最後に取ってつけたような笑顔を向け、ノイズと共に逃げるみたいに消えていった。
だけど、遂に宇條先輩が、この世界にやって来たよ!
翌朝にはカリエルの情報通り、ローゼンベルク家からギュンターの意識が戻ったと、正式な知らせが来た。
ウィルが応対し、ボクに知らせてくれた。
その後すぐ、カリーナから直接ボクのセル・フォノに通話が来たよ。
ルークが付いていながら、ボクを含めギュンターまで危ない目に遭ってしまった事を酷く気にしてて。
この様子だと、ルークの奴こっぴどく叱られたんだろうなぁ。
カリーナはギュンターのことになると、容赦ないから。
意識が戻ったが、まだ状況が分からないのか会話ができないと嘆いていた。
今後様子を見て、早いうちに警護の完璧なボクの城に移したいと言われたから、そこは速攻で引き受けたよ。
当然だろ。先輩がやって来るんだぞ。
王家の権力使ってでも、いつでも迎えられる準備をして待ってますとも!
最後はあまりにボクがうっきうっきだったので、カリーナに逆に感謝されちゃったよ。
翌週には、城に戻る日程が知らされた。
すでに歩いて、食事も取れるようになったって。
ただほとんど喋らず、会話をしないんだとか。
うん。間違いないな。先輩が転生してきたんだ。
落ち着くまでしばらくかかるってカリエルも言ってたし。
もうすぐ先輩に会える。
先輩に会えるんだ!
オスカー編の表紙絵です




