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転生したらΩだってそんなの知らんがな ~ユニコーンΩのミリしら転生記オスカー編  作者: 井氷鹿
第1章 ユニコーンΩのミリしら転生記編

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ずっと待ってたんだよ

 王子のお土産のセーグルはもちろん、タマラお母さんとジョイスの料理は城じゃ味わえない家庭料理で、特にキャセロール料理は絶品だった。

 王子も俺も、お代わりして食べたもんな。

 前の日にウェインが獲ってきた鴨肉も絶品だったけどね。

 残念ながら、暗くなる前に城に戻らないとならないってことで、俺たちは三時過ぎにはジムの家を出発しないといけなかった。

 帰る時、すっかり王子に懐いていたビニーが泣いて王子から離れず、あれは可哀そうだったなぁ。

 それで「じゃぁ泊まる」と言いだした王子に、オトナ全員が一瞬青ざめたのは見なかったことにしとこう。

 あいつの意外な面を見られて、ちょっと今日は得した気分だ。


「日記かい? 続けてたんだ」

 シャワーを浴びた王子が、上気した顔で戻ってきた。まだ濡れてる髪の毛をタオルで拭いている。

 マジできれいな顔してるんだよなぁ。今後成長が実に楽しみだ。

 将来どこまで化けるんだろう、こいつは。

「せっかく、彼も書いてたからね。続けてやらないと、悪い気がして」

 へぇ~、と王子が笑い俺のデスクに腰掛けた。

 そこ座るの好きだな。

「ボクたち貴族ってね、実は日記を書くのがある意味ステータスなんだよ」

 は? そうなの。

「オスカーも書いてるのか」

「一応ね、王子だから書かないと不味いらしい。もう習慣化したよ」

 お貴族様も、王族様も大変だな。と、のんきにディスプレイを眺めてたら。

「学校へ戻る前に、大事なことを伝えとかないといけないんだ」

 は?

「これはマジで、大事な話だ。ウィルに話してもらうつもりだったんだけどね」

「な……に?」

 真剣な顔して、何だよ急に。

「あ」

 おいっ。

「自分でフっといて何赤くなってるんだよ」

「ごめん。その、アレだ。せ、せっ」

 はぁ? 上気した顔がますます赤くなってどうした?

「その年でセックスでもするのか王族は?」

 子供らしからぬジョークのせいか、王子が真っ赤になっちゃったよ。もしかして図星か?

「『ち、ちがうっちゃ。精通の話じゃ! 宇條先輩のバカタレが!』」

 はぁっ? なんで日本語? しかも方言丸出しで喋ったよな、今。

 じゃねぇ。

「『お前何で、日本語喋れんだよ。しかも方言丸出し』」

 驚いて、王子の腕をつかんでしまった。

「『ううっ』」 

 今更口を抑えても遅せーわ。

「『ごめん。隠すつもりは全然無かったんちゃ。本当はボクも転生者で、宇條先輩と違(ちご)うて、赤ちゃんで生まれたけぇ』」

 はいぃ? この訛りで宇條先輩って呼ぶ奴は……

 ちょっと待てぇいっ!

「『おいっ、もしかしてお前、一ノ瀬か』」

 そう言うと王子が、ボロボロと涙を流して泣き出したよ。

「うわぁ~んっ」

 としがみ付かれた。ずびずびと鼻をすすって泣いてやがる。

「『宇條せんぱーいっ。一ノ瀬ですぅ~~っ。ぐすんっ。おぼえでてくれだぁ~っ』」

 と涙と鼻水を垂れ流した王子が顔を上げる。

 なんだよ、この展開は。

「『泣くなって。一ノ瀬、泣くな。イケメンが台無しじゃろうが』」

 あーあー、しかたねーな。王子が頭を拭いていたタオルで顔を拭ってやる。

「そうか、お前、俺より先に死んじゃってたのか。気が付いてやれなくて、お参りにも行けなくて、ごめんな」

「うわぁ~んっ」 

 また声に出して泣き出したよ。しがみつくなって、俺の上に乗るなよ、おまえっ重いんだって。

「同じ大学に入って、同じバスケサークルに入ってたんですよぉ」

 ん? 一ノ瀬が来たらすぐ分かるはずだぞ。バスケサークルには、居なかったよな。

「一ノ瀬っていたっけ?」

 肩に押し付けてた頭を上げ、半べそかいた顔で俺を睨んだ。

 イケメン王子が、涙と鼻水でどろどろだよ。

 しょうがないから顔を拭いてやるが、言っとくが拭いてる俺もまだ子供だからな。 

「親が離婚して……名前が……」

 手がちっちゃいんだよ。こっちはよぉ、上手い事拭けないから、もう泣くなって。

「あ~、名前が変わってたのか。そりゃ、分からないな。こら、じっとしてろ、ほら」

 何とか顔を拭いて、王子も少しは落ち着いたよな。

「先輩に伝えようと思ったその日の朝、ボク、車に跳ねられたんだ」

 あ。お前も事故だったんだ。

「そうかぁ。オレは上から降ってきた何かに潰されたけど、なんだぁ、お前は交通事故だったんだ」

 髪の毛を整えて、いつもの王子に戻ったか。

「うん。ありがとう先輩」

 何だ、俺たち仲間だったのかよ。ったく驚かせるなぁ。

 いろいろと今までの事も、腑に落ちてきたぞ。

「気が付いたらこの世界で泣いてた。赤ん坊になってた」

「赤ちゃん? そりゃ壮絶だな。で、いくつで死んだんだ?」

「十九」

「十九! 何だよ、成人前じゃないかよ。それは、なぁ……辛かったなぁ」

 あぁあぁ、また涙こぼして、もうっ。

「もう先輩に会えないかと思うと悲しくて、泣いてたの覚えてる」

 何だそれ。

「死ぬ瞬間に強く思った感情がそのまま残っててさ、先輩に会いたいって」

 そう言ってもたれかかってきた。 

「ああ、俺はやり残したことばっかり悔やんでたな。

甘えんのは良いけど、今は俺の方が小さいんだよ、分かってるかオスカー」

「あ、ごめん。重かったね」

 と言うや体を入れ替え俺を膝に跨らせる。

「これでよし、と」

 今度はぎゅっと抱き寄せられた。

「ずっと待ってたんだよ」

 はぁ?

「先輩が亡くなったら、ボクの婚約者に転生させてくれと、カリエルにお願いしてたから」

「はぁんっ?」

「ほら、出てこなかった? 背中に羽生やした天使みたいなの」

 と体を離し、顔を覗き込んできた。

 ああっ、その顔は。見慣れてきたとはいえ、な、心臓に悪い。

 そういえば出てきてたな。急に消えて居なくなったっけ。

「ボクの転生先がどうやら選択間違いだったらしくてさ、お詫びにリクエスト聞いてくれるって言うから頼んだんだ」

「バカか? たまたま俺が早く死んだから良かったが、爺になるまで生きてたらどうするつもりだったんだよ」

 そう言うと、オスカーは片眉を上げ自信ありげにニヤッと笑う。

「不思議な事に平行世界だけど時間が縦軸に流れてるから、こっちの時間で調整ができるんだよ。面白いだろ」

 何を言ってんだ、おまえ。

「よく分からんが、爺(じじ)ぃになってても結局十歳のこの体に転生可能ってことか?」

「そういうこと。さすがギュンター、理解が早いね」

 未だに全然理解はしてねーよ。結果がそうだったって話だろ。

「ギュンターが生死を彷徨っているタイミングで、カリエルが魂を入れ替えたんだよ」

「そんな、簡単に」

 ギュンターの取った行動は、そりゃ自殺行為に近かったが。

「たぶん、直後は朦朧としててあまり覚えてないと思うけどね」

 そこで、俺を床に降ろした。

「この城に着くまでは夢の中みたいだったよ。玄関ホール前に降りた時、あの似非天使が出てきたんだ。すぐ消えたけどな」

 そう言ったらオスカーは、ハハっと笑った。


 その翌朝の事。

 目を覚ました俺は、また起き上がった時に、肩かどっかに髪の毛を引っ張られた痛みを感じる。

 はぁ? これが嫌で昨日髪を切ったはずなのに。

 起き上がり、頭に手を当てたら。

「嘘だろ、何だよこれ!」

 それで起きたらしいオスカーが、どうしたんだと体を起こすが。

「ギュンター、それどうした?」

 知らねーよ。起きたら髪の毛が元に戻ってたんだよ。

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