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転生したらΩだってそんなの知らんがな ~ユニコーンΩのミリしら転生記オスカー編  作者: 井氷鹿
第1章 ユニコーンΩのミリしら転生記編

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オスカーって、一人っ子なんだ

 思ったより馬具を選ぶのに時間がかかってしまった。

 しかし、田舎の工房と思っていたら装備品から材料の皮革にしろ、上物が揃ってて驚いたな。

 商社時代は皮革製品も取り扱っていたから、それなりの目は持ってるつもりだったんだが。

 ここの取扱品は見た事無い完成度の高さで、この世界の職人技に敬服したよ。

 お陰で、目移りしてなかなか決められなかったよ。

 流石に王家を相手に商売してるだけに、工房の格も違うのか、やっぱり。

「それにしても、ギュンター様はお年の割にとても詳しくて、私どもも舌を巻いております」 

「君がそこまで詳しいなんて、ボクも知らなかった」

 なんだなんだ? 俺を持ち上げたって何にもならないぞ。

「そんな事は無いよ。いい商品をたくさん見せてもらったから」  

「まぁ、納得いくものが見つかって良かった。ね、ギュンター」

「うん。でも、オスカーこんな贅沢していいのか」

 何言ってんだと、帽子を取り上げ頭をくしゃくしゃにされる。

 止めろと、顔を上げて工房から外を見たら、少し離れた所からこちらを窺っている人がいた。

 え? 兄ちゃんか。

「オスカー、あれ、もしかして俺の兄ちゃん?」

「ふぅん」

 と王子も外を見る。

「あ、ヘイ! ルーク!」

 と手を振るから、俺も一緒に手を振った。しかし、いきなり大声出すから、心臓に悪いぞ王子ってば。

 ありゃぁ、遠めでも分かるくらいの笑顔で手を振り返してるよ家の兄ちゃん。

「めっちゃ喜んでるな。たまには何でもいいから合図でも送ってあげな」

「そうするよ」

 気分的に年下の兄ちゃんはなぁ、やれやれだぜ。


 工房を出て、メイン通りへ。そろそろ戻らないとまずいんじゃないか。

 約束があったはずだ。

「ジムの家に行くんだよな」

「ああ、急いでライオン亭に戻らないと」

 宿へ戻ると、そのまま厩の方へ案内された。

「待ってやしたよ、殿下」

「坊ちゃんも、さぁ早く準備してくだせぇ」

 既に出発の準備をしたティムとジムが待っていた。

 靴を履き替え、乗馬用のヘルメットを被る。

 ビートもすっかり元気になって、張り切ってるなぁ。遠出が好きなんだな、君は。

 準備してる間も、ひっきりなしに馬が入っては出て行っていた。馬車がこの奥に停まってるようだ。

 大きな宿だとは思ったが、馬の交換もしてるのか。

「ここはポスト・ハウスとステージング・インも兼ねた宿だから、馬の数は凄いんだ」

「ポスト、何だって?」

「郵便を運ぶ馬車と駅馬車の宿も兼ねてるって事。ここで馬を交代してるからね」

 あ~。それで、何台も馬車が出入りしてるのか。

「では、出発しますぜ」

 ブルックスさんに挨拶をし、俺らはライオン亭を後に街道に出た。

 街道を暫く走り、途中で右の脇道に入る。見渡す限り緑色の小麦畑だ。

 その馬車が通るのがやっとの幅の道を駆ける事一時間弱、 視界に広がる麦畑の向こうにこんもりと茂る林が見えてきた。

「もうすぐです。あの林の先」

 ジムが振り返り叫ぶ。

 林が近づき、一際大きな大樹の陰に建物が見え隠れしている。

 ジムの家だ。でかいな。

 建物に向かい、右に曲がりジムに付いて厩に向かう。

 うわぁ~っ、近衛も合流してきたぞ。

 馬から降りて、とりあえずビートを労わってやる。家の人が水を用意してくれていて助かった。

 幸か不幸か、近衛の馬は俺らのストールの前を通り反対側へ行った様だ。

 一応兄ちゃんには笑顔で手を振っといた。

 飼葉桶と水桶と、王子と一緒に運んで馬に与えて。それから鞍を外して、と。

 奥のストールにはここの馬が数頭。

 他所の馬が入ってきたのに、落ち着いてるなぁ。

 一通り世話を終え、ジムが俺らを母屋へと案内してくれた。

       

 母屋に入ると土間があり、その先のドアの前に家族が並んで出迎えてくれていた。

「ようこそ。オスカー殿下、お久しぶりでございます。ギュンター坊ちゃん、いらして下さってありがとうございます」

 ジムの母親らしい、ふっくらした初老の夫人。その隣は奥さんかな。そしてまだ幼い子供たち。

 ドアの脇に控えたジムが、家族の紹介をしてくれる。

「母親のタマラです」

「妻のジョイスです」

「こんにちは。また、世話になるね。タマラ、ジョイス。これ、お土産」

 と言って王子が買ったパンを奥さんに渡す。

「まぁ、殿下。いつもいつも、ありがとうございます」

「これは、ベイカーの石釜屋(ベイカーズオーブン)のパンじゃないですか。まぁこんな良いもの」

「トビーのお勧めだよ。きっと美味しいよ」

「早速切り分けて、みんなで食べましょうね」  

 とタマラはホクホク顔だ。ティムのパン屋って有名なんだ。

 王子はしゃがんで、子供たちの相手を始めたぞ。

「でんか~、いらっしゃい」

「てんかぁ」 

「はい、殿下ですよぉ。大きくなったぁチビ」

「チビちがう。びに~」 

 わぁ、可愛いなぁ、女の子か。まだ二、三才かな。お兄ちゃんは幼稚園くらいか。

 王子が幼い方を抱き上げる。

「ビニツゥカだ。ボクはオスカー」

 名前を呼ばれたとたん、子供が笑顔になる。

「びにぃ~オスカーすきぃ」 

「ボクもビニー大好きぃ」

 あーあー、ほっぺにキスしてるよ。 

「まぁ、殿下。もったいない」

「いいから、いいから」

 母親のジョイスが慌てるが王子は楽しそうに、タマラの後をついて部屋に入って行く。

 俺は年かさの子の手を取り名前を聞いてみた。

「たいらー」

「タイラーか。いい名前だね」

 ジム一家は全員βだからか、母親が居る。

 トビーと違い、子供がβならお産でも母親は亡くならないんだ。

 そんなことを考えながら部屋に入ると、すごく明るくて目の前が真っ白になる。

「ギュンター、大丈夫かい。今日はいい天気だからね」

 王子の声だ。影を作ってくれたからか目の前に子供を抱いてる王子のシルエットが見えた。

「オスカー、ありがとう」 

「ほうら、お兄ちゃんが来たよビニー。一緒に行こうねぇ」

 王子が抱いてる子供をあやし、テラスへと向かう。

 ようやく視界が戻り、タイラーと一緒に俺もテラスへと歩いて行った。


挿絵(By みてみん)


 俺がテラスに出たところで背後から、声がする。

「遅れちゃって、すみません」

「ウェイン兄ちゃんっ」

 とタイラーが手を放し、後ろへ駆けていく。

「お世話をありがとうございます、ギュンター坊ちゃん」

 あ、馬の世話を手伝ってくれた人だ。わ~、よく見たらジムに似てるなぁ。

「ジムの弟のウェインです」

 タイラーを軽々と抱え上げた。

「ささどうぞ、王子のお隣にお座りください」

 彼は言葉がきれいだな。

「殿下、お久しぶりです」

「ヘーイ」 

 とウェインが王子とハイタッチをした。

 なんだなんだ。

「ウェインは今年、クロイツを卒業したんだよ。ボクたちの大先輩さ」

「大先輩だなんて」

 ウェインが少し照れて、向かいの席に座った。

 クロイツとは、俺たちが通うことになっている学校の名前だ。

「じゃ、全員揃ったところで始めましょうか」

 タマラの合図で、ランチが始まる。

 オスカーが子供たちの相手をしながら、一緒に食べてるのが何とも新鮮だなぁ。

「殿下には兄弟がいないから。それで小さな子供を見ると、世話を焼かれるんでっさ」

 ティムが、その様子を目を細めながら眺めている。

「オスカーって、一人っ子なんだ」

「先代の王ご夫妻が早くに亡くなったせいで、殿下はおひとりなんでやすよ」               

 それで、俺の兄ちゃんにも声をかけてくれてるのか。

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