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転生したらΩだってそんなの知らんがな ~ユニコーンΩのミリしら転生記オスカー編  作者: 井氷鹿
第1章 ユニコーンΩのミリしら転生記編

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ヴェリタニアの御三家

 ティムのヨイショに担がれて、人馬ともにヘロヘロになるまで鍛えられたよ。

 常歩(ウォーク)に速足(トロット)、駈足(キャンター)に襲歩(ギャロップ)。

 障害はまだ無理だが、まぁ仮免は取れたんじゃないか?

「坊ちゃん、今日はここまでにしましょうや。初日にしては上々の上ですぜ」

「うん。ありがとう、ティム。早く、ビートを休ませてやりたい」

「へぇ、ビートも今日は頑張ったからなぁ。顔見りゃ分かりますぜ。満足そうな顔してやがる」

 母馬が来たからか、また甘えた感じでティムの馬に鼻先をこすりつける。   

 ビートは優しくて良い馬だよなぁ。俺の為にすまなかったなぁ。

 息の上がっているビートが気になって、何度も馬上から首に抱き着いては労ってたが、これってビートに伝わってるのかな。

 下馬したら、ビートが頭を寄せてきたので、思わず抱きしめた。

「よしよし、今日はありがとう。よく頑張ったね」

「ビートは、すっかり君の馬だな」

 なんて言いながら、王子が涼しげな顔でやって来たよ。

 背丈より高い壁を飛び越えてたよな、こいつ。

「やっと終わったよ。殿下も?」

 うんと頷き、王子が馬から降りる。

 手綱を引いて、そのまま一緒に馬に水をやりに行く。

 俺らの後ろをティムも馬を連れて、付いて来ていた。

 殿下と一緒に居た人は、馬丁とは違う服装だったけど誰だったんだろう。

 辺りを見回すが、既に姿がなかった。騎士と言うか兵士みたいな恰好だったよな。

「何か気になるの?」

 ビートってば、凄い音を立てて水を飲んでるな。

「いや、大したことじゃねーけど、殿下と一緒に誰か居たじゃん。もうどっか行っちゃったけどさ」

 ああ、と王子が合点のいった顔をする。何かあるのか?

「近衛騎士の一人だよ。ボクたちのガード」

 おお、分からないように見張ってるっていう、アレか。

「その隊長のルーカス・フォン・Alpha・ローゼンベルク。君の二番目の兄さんだよ」

「げっ。何度もこっち見てたのは、それでか。オレ、顔知らねーから知らん顔しちゃったよ」

 とたん、王子が破顔する。もう楽しくてしょうがないみたいに。

 そこまで笑うことかよ、ったく。

「写真だけじゃ分かんねーよな。あはは。ルークも可哀そうに」

「兄さんって、やっぱり俺と仲良しだよな」

「君にはべた甘だよ。あーーっ、おかしいっ。すっかりしょげ返って行っちゃったのは、それが原因か」

 さも楽し気に膝を叩いて笑ってるよ。

「でも、彼はヴェリタニア帝国一の乗り手なんだよ。つまり、世界一の騎手なんだ」

「え? そりゃ、すげーな俺の兄貴。顔知らんけど」

「ぶっ、他人事みたいに」

 と、また声に出して笑う。

 しょうがねーだろ。知らねーし実感もねーし。

「おまえんちの兄妹、実は皆化け物揃いなんだよ」

 何だって?

「長男カールは世界各国に展開するローゼンベルク商会を取り締まる若き代表で、ノーフォーク家(ランカスター家に次ぐ大貴族の一つ)へ嫁いだカリーナに至っては、ノーフォーク家の家長を尻に敷いてほぼ女領主的な存在で、近隣の貴族たちを従えてるし」

「ああ、あの綺麗なお姉さんか」

 ずっと俺に付き添ってくれてた、きりっとした美人を思い出す。

 母親にしては若いと思ってたんだよな。そうか、あの人が長女なんだ。

「次女のクララはアカデミーきっての科学の才女だ。セカンダリー(ハイスクールも含む)に教室を持ってるよ。もし選択するなら、クララが教えてくれる」

 え、ちょっと待って。

 情報が渋滞してきた。まだ何か言いたそうな王子に手をあげて、待ったをかける。

 えっと、長男が家業を継いで、次男は近衛隊長。一番上の姉ちゃんは嫁に行った先を牛耳ってるのか。次の姉ちゃんは大学生でセカンダリーで教室を持ってる?

「もう一人いたよな、確か……お姉ちゃん」

 王子が待ってましたとばかり、意地悪な笑顔を浮かべる。

「ボクより三つ上にね。セカンダリーに居るよ」

 う~、国史や貴族名鑑より先に俺の家族構成だろ、覚えるのは。

「戻ったら、ローゼンベルク家について話すか」

「そうしてくれると助かる」        

 あー、頭が煮えそうだぜ。せめて次男の兄ちゃんだけでも覚えておかなきゃ、気の毒になってきたぞ。


 たっぷり水を飲んだのか、ビートが首を振りながら激しく鼻を鳴らした。

「鼻に水が入ったのか」

 手を伸ばすと、すかさず頭を摺り寄せてきた。

 うへぇ~、慣れたら犬みたいに可愛いなぁ馬って。

 さぁて、厩舎に戻って体を洗ってやるからな。

 王子に並んで厩舎へ入る。

「明日の授業でも、ウィルにローゼンベルク家についての講義を頼んどくよ」

「そんなに話すことあるのか、ローゼンベルク家」

「公家(こうけ)の一つだからね。ランカスター家、ノーフォーク家に次ぐ家柄だ。ヴェリタニアの御三家ってところだな」

 あ……、今日やったなそう言えば。貴族名鑑。

「んじゃ殿下、またあとで」

「ああ、ギュンター」

 やれやれだ。お貴族様も、やってみると楽じゃねーんだな。

 ストールに付くと、ジムが待っていてくれた。

「じゃぁ、坊ちゃんお手入れしましょうか。あっしがここで見とくんで、分からないことがあったら聞いておくんなさい」

「分かった。ありがとうジム」

 さぁて、お疲れさんのビートくんをしっかり手入れしてやらないとね。

 腕まくりをして、さてやるか。   

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