ウイスキーってそんなに美味しんだ
公開が遅れしまいました。
朝に読んでいたただいていた読者様ごめんなさい。
小さな手と体で、人数分の椅子を何度も往復しながら運ぶ。
椅子を並べる度にテーブルの上が整えられていくのが面白い。
野外での野営なのに、テーブルクロスが敷かれていたりする。
テーブルのセンターには、木製のトレーに香辛料の入った小瓶が並んでいて、なぜか花も飾られていた。
肉がもう少しかかるというので、時間つぶしで俺たちはジムと名乗った馬丁と一緒に厩舎の確認に行くことにした。
と言っても、既に綺麗に整えられているので馬の様子を見て回るだけだ。
各馬が収納されているストールは、通路を挟んで左右に作られている。
通路と言っても軽自動車が一台通れる程度には広い。
「何頭くらいここに居るんだ、その馬って。よく分かんねーけど」
騎乗して中で走れるように、天井も十分な高さがある。
「この厩舎だけで、何頭だろ?」
と王子が横に居たジムの顔を見る。
「今は調教中の馬を含めてちょうど二十頭になりますぜ、殿下。来月にはもう一頭仔馬が誕生しますからね」
に、二十頭? あんなデカい馬が二十頭もここに居るのかよ。こんな幼い王子の持ち馬で。しかもブリードまでしてんだ。
「収容頭数としちゃぁ、この厩舎だけで三十頭は収容できるんでさぁ、坊ちゃん。驚きましたかい?」
うんうんと、俺は頷いた。
「お産前の牝馬は、ちょっと離れた向こうのストールで休んでまさぁ。気が立ってるから、ほかの馬とは離して世話してやんねぇとならねぇんで」
なので、そっと遠くから母馬の顔を窺った。馬の良し悪しなんかまったく分からんが、漆黒の美しい馬って言うのは遠めでも分かったよ。きっと高値で取引されんだろうなぁ。
「真っ黒で、きれいな馬だね」
「いい馬だろ。青毛の最高に美しい奴さ。ボクの馬の母馬だよ」
マジか。黒から白が出るんだ、やっぱり。
「ギュンターが乗った芦毛は、また別の母馬だけど父親は同じなんだよ。両親ともに黒い馬だ」
「黒から突然変異で白が出るとは聞いてたが、マジでそうなのか」
「マジでそう。来月の仔馬の誕生、もし間に合えば立ち会う? 芦毛が出るか白毛が出るか」
「え? できるの」
「学校へは来月の終わりの週には出立するから、それまでに産まれてくれたらね」
へー、そりゃ凄いや。
ウィルの話じゃ、明日から毎日俺は乗馬のレッスンを受けるみたいだし、馬にも慣れないといけないんだよな。
動物は好きだけど、間近で大きな生き物に接した事なんて無いからなぁ。
「そうかぁ。無事に生まれてくれるといいね」
「もちろんですぜ。あの母馬は今回で二回目だから、きっと安産ですよ坊ちゃん」
そう言って、ジムが俺の頭をポンポンしてくれた。
うん、子ども扱いされるのも悪くはないね。
一通り厩舎を見て回り、馬の紹介をしてもらった。各ストールに名札が掛けてあったのには驚いた。ちゃんと決まった部屋があるんだな。
俺が乗った馬は王子の馬の隣に居た。
「ライトニングビートって言うのか、お前」
手を伸ばすと頭を寄せてきた。鼻筋を撫でてやる。
「ティムはビートって呼んでるけどね」
王子も頬を指で掻いてやる。気持ちよさそうだ。
「?」
「ちょうどこの子が生まれた夜が嵐でね、雷が凄かったんだ」
「なるほどね。足も速いしな、お前は。良い名前つけてもらったな」
頬をさする。暖かくて毛並みがサラサラだ。体温が心地よくてずっと触っていたい気になるなぁ。
「ティムは何でも短くして呼ぶのが好きなんですよ、坊ちゃん」
なんかわかる気がする。あのおっちゃん、無茶するしな。
表へ出たら、肉がようやく焼きあがったようでティムとウィルが交互に肉を削いでいた。
鉄なべでパンも焼いたみたいで、馬丁がちょうど取り出したところだった。
「彼の実家はパン屋なんだよ。ちなみに、ジムの家は農家だ。主に麦を作ってる」
火の側が安心するからか、王子はテーブルじゃなく焚火の側に直に胡坐をかいた。
「はい。殿下の領地で麦を作らせてもらってやす」
ジムがどうぞと尻に敷くクッションを王子に渡し、その横へ俺用のを置いてくれた。
城で働く人たちは全員王子の領地で働く小作農家や、町の商家の家族なんだという。
そのせいか、使用人たちの距離が近く皆仲が良い。主従の関係も近いのはそのせいか。
テーブルを見ると、ウィルが別の容器に食事を詰めていた。数人前はありそうだな。
「こちらは、今日の乗馬の警備で来ていた近衛兵の分です」
近衛兵? 兵士がいたのか。
「ギュンター、キョロキョロしないで」
王子が俺の顔を覗き込む。
「見えないように気を配ってくれたんだよ。だから、探さないでやって」
そう言って笑う。
「いつも気が付かないかもだが、近衛兵がボクらの警護に就いてるんだよ」
詰め終わった木箱を大きな籠に入れる。それをジムが受け取り厩舎に入らず、建物の向こうへと歩いて行った。
夕食は結局椅子に座らず、王子と俺は火の側で勝手気ままに食べることになった。
焼きたてのパンをスライスして、持参したバターを付けて肉を挟んで食らいつく。
しっかり噛み応えのあるハード系のパンだから、肉に負けない。
鹿もパンもどっちも最高に旨いよ。
大人たちは行儀よく腰掛け、持ってきた樽から注がれるウイスキーを待っていた。
ウィルが鼻歌を歌いながらコックを捻り、木で作られた樽型のマグにウイスキーを注いでいる。
ウイスキーってそんなに美味いんだ。
俺らは同じマグでも中身は水だ。王子も楽しそうに飲んでるし。
なんたって汲みたての冷たい地下水で、すんごく甘くて美味しいから良しとするか。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
更新が遅れてしました。ごめんなさいm(__)m
火曜日はしっかり時間通り、早朝6時半にアップいたします。




