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2度目の人生、と思ったら、実は3度目だった。~歴史知識と内政努力で不幸な歴史の改変に挑みます~  作者: take4
第十二章 列強同盟編(歩み出した戦後世界)

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七巻発売記念特別篇 新女王の戦略

本日、書籍版7巻が発売です!

2/13付けで書籍版の情報を活動報告にも記載しております。

良かったら作者名(take4)のリンクからそちらもご覧ください。

俺たちは新生リュート・ヴィレ=カイン王国の王都に入るとそのまま王宮へと招き入れられた。

というのも、王都の城門前には近隣から招集されたであろう全軍が集結し、歓迎するために隊列を作っており、もちろんその最前列にはクラージュ王、アリシア殿下、ゴルパ三軍総司令官が待ち構えていたからだ。


そこで俺の前に跪こうとした三人に対し、俺は慌てて馬を飛び降りると彼らと握手して回った。

何度も言うが俺は彼らの主君ではない。ウエストライツ魔境公国は()()()()宗主国だからね。

なので彼らを伴い、そのまま流れで王宮まで入ることになったからだ。



「先ずは公王陛下にお詫び申し上げます。

国の安定のためとはいえ、私たちは公王陛下のお名前と今回の訪問を利用させていただきました」



王宮の一室に招き入れられ、俺とユーカ、クラージュ王とアリシア殿下にゴルパ三軍総司令官、この五人だけになった際に、改めてアリシア殿下が深く頭を下げると、続く二人も深く頭を下げた。


どういうこと? あの噂を広げた件か?



「実は今回の婚儀に合わせ、国内の不平貴族たちが一気に反乱を起こし揺さぶりを掛けて来るとの情報を掴み、それに合わせて私たちも意図的に間違った情報を流しました」



ははは、そんなことがあったんだ。

俺はてっきり反対派も鳴りを潜め、統治は安定していると思ったのだけどな。

だた……、大きな疑念もある。



「この期に及んで反乱とは穏やかじゃないよね。彼らは成功するとでも思っているのかな?」



「陛下の仰る通りです。ですが……、大前提として反乱は成功しなくても良いのです。反乱を起こす者たちの後ろに居る大商人たちにとって、実行する側の貴族も言ってみれば使い捨てのようなものですから」



酷い話だな。となると黒幕は大商人たちなのか?

もしかするとカイン王国の?



「彼らは万が一反乱が成功すればそれでよし、成功しなくても国内が混乱すればその隙に乗じて国政に介入し過去の立場に帰り咲くこと、私たちを糾弾する口実ができれば良いと考えているようです。

そして反乱をも利用して利益を拡大できるよう、入念に物資の買い占めを行っているようで……」



何段構えにも罠を張っているということか?

決して自分たちは表に出ず、手を汚さない形で利益だけを貪るように……。



「悪辣だな……。ただ乗せられる貴族がそこまで阿呆とは思わないけど、そこはどうして?」



「実は我らも()()()()の策に従い、意図的に軍を各地に分散して派遣し、中央を開けております。

この機会に蠢動する虫共を炙り出す機会とするために……」



実はゴルパ総司令官がアリシア殿下を女王陛下と言ったのにも理由があった。

二代にわたって別の国として存在した三国は、思った以上に根深いしがらみを抱えていたからだ。

そのため苦肉の策として、当代に限り国王と女王の共同統治体制を選択することにしたそうだ。

もちろん、その発表は婚礼の儀にて行われる予定で、彼らと事前に相談を受けた俺以外はまだ誰も知らない話だけどね。


対外的には国王のみに権限が集中しているが、国内では軍事面を国王が、内政面を女王が差配する形で二国をまとめ、この両国の圧力とゴルパ将軍が国王に次ぐ三軍総司令官となって旧ヴィレ王国を抑える。

これが彼らの導き出した結論、最もスムーズに三国統一に移行させる政治体制だ。



「それを受けて私たちは、国賓としてお越しいただく公王陛下の軍は一千、その他諸国からの来賓は無く帝国からは祝いにかこつけた『詰問』の使者が訪れるという事前情報を流しました」



「あれ? それでは俺の動きはヤバくないかい?」



俺は予定通り二千の軍を率いてきたうえに、カイル王国から一千、フェアラート公国からも一千、何よりもまして『祝賀のため』と称して元捕虜たちを軍に仕立て、総勢で一万四千騎もの軍勢を率いてきたからね。



「いえ、彼らは反乱を起こした直後に陛下の軍容を知って震え上がり、軍を返したため未然に乱は防がれたと言っても良いと思います。ですが反乱の事実は確定しましたので、これで彼らを公然と処分できます」



ははは、そりゃそうだろう。

過去の出兵や国土を蹂躙されたことで軍は疲弊し、加えて彼らは一万名もの捕虜を人足として魔境公国に派遣している。そのため軍事力には余裕がない。


それに加えて最も気を遣う最前線、イストリア正統教国との国境地帯である旧東三郡に軍を重点的に派遣しているうえ、俺たちや帝国以外の国に対する国境警備もあるからね。

王都のある旧ヴィレ王国に展開できる軍はせいぜい頑張って二千がいいところだろう。


『これは好機!』と軍を動かしたところに、国王側の援軍が一万四千も現れたのだからね。



「国土を奪還したと同時に、イストリア正統教国側に寝返ったり誼を通じていた貴族は全て処分しましたが、問題だったのはずっと日和見を決め込み、戦いの行く末を睨みながら自身をより高く売りつけようとしていた者たちですわ」



「後になって『侵略者と戦いながら領地を守っていた』主張する彼らを廃するにも十分な理由がなく、奴らの真意を知る術もなかったため、現状は公職から退いてもらう形にしておりました。

もっとも……、三国を統合した結果、公職の席も大きく減ったのが表向きの理由ですが……」



そりゃそうだろうな。

元々は三つあった行政組織が一本化されれば、少なくとも必要なポストは半分以下になるしな。



「アリシア殿下、それが暴発する原因となったと?」



「はい、先ほどのものを含め、彼らが暴挙に走った、いえ走らざるを得なかった理由は三つあります。

第一に彼らは、日々国内で高まる公王陛下の英名を恐れていました。このままでは今の割譲地に加え、自身の領地も併合されるのではと恐れを抱くほどに。

第二に彼らは、このままでは決して浮き上がることは叶わないと思ったのでしょう。処分こそしませんでしたが、私たちは彼らの『日和見』を断固として容認せず、そもそも返り咲く席がなくなったのですから。

第三に彼らは、商人たちから莫大な借金を抱え、彼らの要求を断ることができませんでした。それほどまでに商人たちは、三国の王家だけでなく貴族社会にも根を張っていました」



「なるほど……、彼らは領地ごと消滅する危機、政治的に消滅させられる危機、財政的に立ち行かなくなる危機、この三つに苛まれていた訳ですね。故に暴発すると?」



「はい、今回のことで王宮の外に潜んでいた敵は一掃できるでしょう。ですが他にまだ二つ。

今度は王宮内に潜む敵と国家に巣食う敵を排除したいと思っています」



そう言ってアリシア殿下は不敵な表情を浮かべて笑った。

うん、前もそうだけどさ……。

時折見せる無邪気な『お姫様』の部分はあるけど、こと政略に関して彼女は相当な『人物』なんだよな。



「どうやって? と聞いても良いのかな?」



「もちろんです! この点に関しては公王陛下のお力添えをいただきたく、お願いする所存でしたので」



へ? 俺の力添え?

既に彼女の描く舞台には、俺の配役すら決められているということか?



「先ずは前回、帝都を訪問させていただいた折、皇帝陛下が対面の場で用いられた手法を取り入れたく思います。それにより彼らは……」



ははは、それはお気の毒な話だな。

では俺はそれに乗って、何も知らずにただ呑気に振舞っていれば良い分けか?



「次に公王陛下が率いられた軍は、『携行した物資も少なく食料にも事欠いている』との噂を、商人たちに流していただけますか? 既に私たちは民需軍需ともに必要な物資を密かに確保し、然るべき場所に隠しておりますが、商人たちはそれを知りません」



なるほど、こちらもかつてジークハルトが第一皇子に対して行った作戦か?

というか……、アリシア殿下は帝国のことを良く研究しているよな?

ずっと仮想敵国だったから当然と言えば当然だけど、一国の王女がそこまで調べていること自体が驚きだ。



「心得た。俺はこの国の商人たちの在り方に思うところもあるし、新しい国が安定するために喜んで協力させてもらうよ」



最も商業の発展したカイン王国の大商人たちが陰で三国を好き放題にしていたのは事実だ。

それが最も露骨に出ていたのがカイン王国だが、そのことは俺も身を以て体験しているし、ショーンからの報告に眉をひそめさせられていたからね。



「何から何まで、お世話になってばかりで本当に申し訳ありません」



こうしてアリシア殿下(女王)の描いた舞台は整えられた。

そして……、間もなく開幕を迎える。

遂に本日、小説版7巻が発売されました!

どうか皆さま、引き続きの応援をどうかよろしくお願い申し上げます。


昨日より書籍七巻発売を記念した特別篇を三日間連続でお届けしています。

今回の特別篇はリュート・ヴィレ=カイン王国でのその後の動き、タクヒールが盛り立てるクラージュ王とアリシア王女の婚礼にまつわる三話構成のお話です。

・2/14 捕虜たちの休日

・2/15 新女王の戦略

・2/16 新体制の始まり

書籍7巻ともども、楽しんでいただければ幸いです。

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