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2度目の人生、と思ったら、実は3度目だった。~歴史知識と内政努力で不幸な歴史の改変に挑みます~  作者: take4
第十二章 列強同盟編(歩み出した戦後世界)

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七巻発売記念特別篇 元捕虜たちの休日

7巻発売まであと1日!

2/13付けで書籍版の情報を活動報告にも記載しております。

良かったら作者名(take4)のリンクからそちらもご覧ください。

新年恒例の宴を終えた五日後、俺たちは新しい年が始まって早々に新たな旅路へと就いた。

もちろん今回は遠征でもなく、新年の宴にて参加を約束していた『祝宴』に参加するためだ。


率いた兵は魔境騎士団から二千騎、同行するカイル王国の特使一行が一千騎、フェアラート公国の特使一行が一千騎と、先年帝国に出たときとは比較にならないほど少数だ。

だがそれでいい、先方に無理をさせないよう気遣っての結果だしね。



「それにしても、このように()()()に囲まれて旅をするなんて私、初めてです。

まして他国に行けるなんて夢のようですわ!」



俺に同行するユーカはそう言って目を輝かしていたが……、確かに大軍勢には変わりないよね。

なんせ魔境公国領を出発し旧ヴィレ王国の王都に向かったのは、総勢で一万四千名もの大軍勢になってしまったからね。



「ははは、行きがかり上で同行する者たちが増えちゃったからさ。俺もまさか……、声を掛けた全員が参加してくるとは思ってもみなかったけどさ」



そう、俺たち一行以外の一万名は全て、今は期間派遣人足と呼ばれる、元三国の捕虜たちだった。

クラージュ王とアリシア殿下の婚儀が行われるのに際し、俺たちは魔境公国に派遣されていた人足(捕虜)たちにも休暇と一時金を与えていた。


それに加え『もし希望者が居れば、式典に向かう俺たちに同行することを許可する』と伝えたんだが、それが何と全員が同行を希望してきた。


ただし同行は可能だけど、大前提として移動にかかる宿代や食事代などの諸経費は各自負担として案内していた。

あくまでも仕事ではないし、ご祝儀の一環で休暇と一時金を与えての上で、参加は自由意志の話としていたからだ。


そしてもうひとつ、大前提が騎馬での移動だから同行するには『足』も必要になるし、戦時を前提とした強行軍でもないので、往復にはそれなりの日数を要する。

そうなると行って帰るだけでも彼らの休暇はほとんどは無くなってしまう。


派遣人足として半年から一年以上の期間を魔境公国に長期滞在する彼らは、そのほとんどが家族を一時的に魔境公国に呼び寄せている。

わざわざ無理して、家族を置いて故国に出向く理由もない、と思ったのだけどさ……、俺が甘かった。



「それで結局、全員分の乗馬を用意されただけでなく、食事の手配や宿の面倒を全て見てあげるなんて、改めてタクヒールさまのお優しさに触れた気がします」



かくいうユーカも、今回はどうしても連れて行きたかった。

帝都に行った時はミザリーの代わりを務めてくれたし、これまではずっと留守番役でもあったしね。

加えて往路はゴーマン子爵領(ゴーマン侯爵預かり地)も見せてあげたかったし、今回は彼女ひとりだけを連れていくと決めていた。



「まぁ、人足と言っても全員が元は兵士だからね。馬に乗るだけなら問題なくできるし、軍として移動することにも慣れている。なので今回はちゃんと軍装させ、兵士としてしっかり仕事をしてもらうことへの対価だよ。しかも経費はまとめて手配したほうが結局は安いしね」



それに最も助かったのは、彼らの中で指揮系統が明確に定められており、それが今もなお機能していたことだ。

人足の中には下級士官や中級指揮官、果ては千人単位を取りまとめる上級指揮官までいたからね。

もちろんその中には俺たちと共に遠征軍として参戦し、三国の解放後に改めて残留していた捕虜たちと交代でクサナギにやって来た者もいる。


彼らは俺たちが祖国の開放に手を差し伸べて戦ったことを自身の目で見ている。

だからこそ『ここで誠心誠意働くことは我らにできる恩返しの一環』と公言して率先して働き、人足としての働きぶりも目覚ましいものだった。


ここだけの話、そんな彼らが参加を決めたあとで『諸経費は自己負担と言っていたよね?』、と改めて言うのも気恥ずかしかった一面もある。



「それにしても……、この国では凄い歓迎振りですね。どの町、その村を通る際も領民たちが大歓声で手を振って迎えてくれますし、すごく歓迎されている感じで嬉しくなります」



「うん、アリシア殿下はこういった所にも目端が利くし、すこぶる優秀だよね」



「???」



ユーカは俺の言った言葉の意味を理解しかねていたのか、少し不思議そうな顔をしていた。

もちろん歓迎されている理由は、敵国として侵略してきた彼らの国を助け、国土を解放したことも大きい。

でもさ、俺自身も新年の宴では話半分で聞いてたけどさ、多分あの二人は全力で俺たちの良い噂を広げまくったんだと思う。もちろん感謝の意味もあるけど、半分はアリシア殿下主導の政略だろうな。



『それだけ領民に支持されている魔境公国が、自分たちの後ろ盾となっている』



このことを国内の敵対勢力に対して示し、反抗の機運を抑え込むことだ。

かつて三国であったリュート・ヴィレ・カイン王国は一国に統合され、統治体制もドラスティックに改革されつつある。


これを成しえたのはひとえに、


・三国を瞬く間に開放し、他の国内勢力は介入する余地が一切なかったこと

・三国内で突出した戦力を誇るクラージュ王(と麾下のゴルパ将軍)の存在

・指揮する兵たちの圧倒的な忠誠心の高さと練度、指揮官たる二人の実績

・政略的にカイン王国を抑え込んだアリシア殿下と、殿下に対するカイン王国(特に王都)の民の信頼


これらが効果的に機能したに他ならない。


反対勢力からしてみれば、呆然としている内に事が進み、気付いた時には全てが定まった後だった。

そんな狐に摘ままれたような感覚に陥っていたことだろう。

反対勢力が動くとしたらむしろこれからだ。だからこその後ろ盾だと思っている。


そこに国王夫妻の婚儀を祝うため、新たに一万の元兵たちが駆けつける。

この意味はとても大きい。

唖然とする反対勢力の顔が目に浮かぶようだった。



「この国は……、きっと良い国になりますね」



ユーカの言葉は俺の思いに等しかった。

領民たちは俺たちに水を用意したり、心ばかりの差し入れを送る者たちも後を絶たなかった。

そしてその歓迎に礼を尽くして応じる一万もの兵(派遣人足)たち……。

国の礎は領民と支えてくれる兵たち、それを理解し彼らを身体を張って守る為政者たち。



「きっと十年もしないうちに、俺たちと肩を並べる強国になるんじゃないかな?」



「私たちも負けていられませんね」



俺たちは王都へと進む道すがら、そんな思いを強く抱かずにはいられなかった。

その後も行軍は続き、俺たちは五日かけて新生リュート・ヴィレ=カイン王国の王都へと到着した。

もちろん大歓声に包まれて。



この日、旧ヴィレ王国の王都では、至る所で驚きの声が上がっていた。

本来なら捕虜として、ウエストライツ魔境公国に抑留され強制労働に就いていたと思われる、一万もの派遣人足たちが兵士として一時帰還したからだ。


各所で抱き合って再開を喜ぶ兵士たちや、旧交を温めなおす兵士たちの姿が目撃されたが、それを苦々しく見ていた者たちも居た。



「おい、話が違うじゃないか! 魔境公国が率いてくる兵は僅かに一千と聞いたぞ?

それがなんで二千で、しかも関係ない二国の兵まで来ているんだ? 合計で四千とは聞いていないぞ?」



「それどころかあの一万の兵士はどこから来たんだ?

これでは国を盗んだ者たちが婚儀に浮かれている間に各所で反乱を起こし、仮に反乱が成功しなくても『統治能力なし』と糾弾することも……」



「それどころではないわ! 反乱など起こしてみろ、それこそ俺たちは根絶やしにされてしまうではないか!

相手には悪名高い『魔王』が後ろ盾になっているんだぞ」



「おいっ、大変だ! 国境からの早馬によると帝国から一千騎を率いた特使が『詰問』のため訪れて来るらしいぞ! それに加え予め焚きつけていた不平貴族や高官たちが、魔境公国の軍勢に青くなって尻込みし、各所で矛を収めているらしいではないか!」



「くっ、臆病者たちめ。自分たちにまで累が及ぶと青ざめているのだろうな。何を今さら……」



「ならば一層、奴らには保身を図るよう励ませれば良いことよ。身代わりとして現国王一派を槍玉に上げ、帝国から来訪した特使の前で『現国王に統治能力なし』と見せつければ良かろう?」



「ははは、なるほどな。奴らの独断専行に帝国が介入するよう我らが誘導し、帝国への責任は奴らに果たさせれば良い、そういうことだな?」



「そうだ、更に俺たちは王都で物資の買い占めを進め、奴らの胃袋を締め上げてやるのさ。

予定外に一万五千もの兵が留まっているのだ、三日で王都の食糧は空になる」



「それで追い出すのか?」



「ふふふ、俺たちは商人だぞ。安く仕入れて数倍にして高く売りつける。それだけだ。

万が一飢えた民衆が暴動でも起こせばそれはそれ、起こらなくとも他国の目からはどう映る?

圧政を敷いて民が飢えるなか『のんきに婚姻の儀を行う』奴らを見れば……」



「ははは、少なくとも現国王一派を支持しようとは思わんだろうな。そこで俺たちが『正統な』継承者を推薦する。我らだけでなく帝国にとっても、扱いやすい傀儡を、な」



「初期の計画は既に頓挫したが、我らは幾重にも手を打っているからな。使える手札は沢山あるということよ。

国王の評判に傷を付けさせてもらうと同時に、たらふく儲けさせてもらうだけだ」



「あの生意気な公王に国を売った王女、俺たちの財貨を恥じることもなく巻き上げた公王、二人の泣きっ面を見て溜飲を下げるとするか?」



実のところタクヒールが行った思い付きの提案、『捕虜たちの休日』は本人すら予想しなかった方角に進み、更にそれを政治的に利用したことにより、三国内で周到に用意されていた反乱を未然に防ぐという結果をもたらしていた。


当初の計画が破綻したと理解した商人たちは、ここで新たな『祝儀わざわい』を贈くるべく動き出した。

彼ららしいやり口によって。

7巻発売まであと1日!

本日より書籍七巻発売を記念した特別篇を3日間連続でお届けします。


今回の特別篇はリュート・ヴィレ=カイン王国でのその後の動き、タクヒールが盛り立てるクラージュ王とアリシア王女の婚礼にまつわる三話構成のお話です。

・2/14 捕虜たちの休日

・2/15 新女王の戦略

・2/16 新体制の始まり

書籍7巻ともども、楽しんでいただければ幸いです。


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