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「結論から言うとだな、ゴブリン村に居たゴブリンどもを滅ぼしてきた」


俺は今、なぜか店内に立たされている。眼前のカウンターには、右からフォール、ラック、ロロア、トトの順番で腰を下ろしていた。ロロアとトトは高椅子に座っているようで、時折りカウンターの内側で、コンッっと内板に足をぶつけたような音がなっている。ラックの方はカウンターの上にちょこんとお尻とつけて座っている。

なぜみんながカウンターに並んで俺の方を見ているのか、こうなった理由はどうやら俺の朝帰りが問題だったようで、いつもはそこに居ないだろうと言いたい面々が俺を待ち受けていたのだ。


呆れた様子で溜め息混じりにフォールは口は開き「はぁ。それで返り血塗れで帰ってきたと?」と、みなの代表のように呟いた。


「そういう事だな」


バツが悪いとはまさにこの事だろう。悪気はないのだろうが、ロロアに着替えがない事を指摘されてしまった。


「かじゃみ。もうおきがえのようふくないよ」


うん。そうだな。と、ロロアの言葉に心の中で返事をしておいた。天井を見上げてだんまりを決め込んだ俺の様子に、まるで嫁かと言いたい口ぶりで「朝帰りなんかして皆に心配かけてどうするの? 夜遅くには帰ると言っていたのに、起きても帰っていないから二人も心配して朝食しか食べてないんだよ」と、軽い冗談をまじえてきた。


うん、明らかにまだ朝だよな。時計の針は朝の八時を差していた。すでに皆は朝食を終えていて、いつもならロロアが店先で箒を片手に、トトが店内で埃叩きを手にして、ラックが棚の上にちょこんと座り込む時間帯だ。


「俺は昨日から何も食ってないけどな」


「さぁ。ゴブリン村で何があったのか話してくれるかな」


やっぱり少し怒ってるのか?俺の言葉を流して話すように促してきた。俺は仕方なく言葉を紡ぐ事にした。


「開拓村に出向いたらゴブリンに襲撃されている只中だった。村は救ったが、どうやら村娘が攫われてしまったようで、俺は村に居たフロアという少女とゴブリンの巣に攻め込んだ」


俺の言葉を聞いて、ロロアが手を上げて口を開いた。


「おもいだした! ロロアをおいかけてきたみどりのちっちゃいの」


「そんな事があったのか」


「うん。かじゃみがくまさんとおちちゃったときにね、ライドとかじゃみをさがしてたらおいかけらたの」


ラックは上げられたロロアの手を機用に両手の肉球で挟みながら「話が進まない」と言って、カウンターの上に戻させた。


「見ているとトトたちが採ってきたりんごの様に真っ赤だね」


りんごに反応したトトが手を上げて「いっぱいりんご採れたんだ。ふわふわのパン楽しみだよ」と言うと、トトの方を振り向いたロロアが「ねー」と言って、トトと顔を合わせながら賛同していた。その姿をチラリと見て、カウンターの上に座っていたラックが双子の間に移動した。なぜわざわざ移動したのか気にはなったが、これは後ですぐわかる事になった。


コホンッと咳払いをしたフォールは、やってしまったと言わんばかりに苦い顔をして、それをごまかすように話を続けた。


「成り行きとはいえゴブリンの巣に赴くなんて行動は褒められたものじゃないんだよ。少し話が逸れてしまったけど、一晩何をしていたのか話を続けてほしいな」


なんとなく読めてきたな。双子が朝帰りを真似しないように、悪い事をしたら怒られるんだという事を俺で教えているんだな。となると・・・俺は反面教師ってとこか。


先に言っておいてくれればよさそうなものだがと思いながらも、少しは本当にフォールも怒っているのかもしれないので、何も言わずに話を進めよう。


「それで巣の中でフロアと別れ、ゴブリンを狩りながら別行動で村娘を助け出していたんだが、フロアの向かった先へ行ってみるとゴブリンもフロアも、その場に居ただろう攫われてきた娘も、まるで神隠しにでもあったように誰もいなくなっていたんだ。辺りを見渡し抜け穴を見つけた俺はその先へ進んだ。崖を掘って出来たような巣だったんだが、その抜け穴は崖の上に続いていた。抜け穴を進み崖の上に出た時には、すでに朝陽が昇り始めた頃だったな」


「はい! ねてなっ・・・」


挙手制なのか? 発言の自由は認められていないと言わんばかり空気だ。ロロアが手を上げて何かを口にしようとした所で、ラックが上がりきる前のロロアの手を肉球で抑えた。寝てないの? と心配してくれたんだろうか。

ラックはロロアの視線に首を横に振ってみせた。ロロアも「わかった」と言って黙り込んだ。


なるほど。話が進まなくなるから二人の間に割って入ったのか。


「でだな、ここからが大変だったんだ。崖の上には先にも言ったゴブリン村があってな、村に忍び込んだはいいんだが、巣へ共に向かったフロアが捕らわれてしまっていたんだ。長きなりそうだから俺にも椅子を用意してくれないか」


「ちょっと待ってて」


トトが椅子を取りに行ってくれそうだったが、ラックがまたもトトの手の甲を肉球で抑えてそれを制止した。なんとなく気づいてはいたが、俺ってラックに嫌われていないか?


「続けるが。二人とも、今日は出かけないのか?」


「今日はりんごのシュワシュワをロロアと作ろうと思ってるよ」


「そうだよ。だからきょうはキッチンでシュワシュワつくるひなの」


双子も今日は出かける様子もなく、無理に外出させるのもな。と思い、俺は立たされたままゴブリン村の内容はオブラートに包んで双子にショックを与えないように励んだ。


「ゴブリン村は崖上の森林を開拓して興した村だった。村への出入りに使われていた門は一つしかなく、おそらく森林から現れる他の魔物や畑を荒らす害獣などを防ぐ為なんだろう。それで村には大きな集会場のような建物があって覗いてみると、明朝と言う事もあって他の村々から連れてこられただろう人達が大部屋で雑魚寝させられていた。俺はその建物に結界張り、外から進入できないようにしておいたんだ。

その大部屋以外にも村の家屋にちらほらと娘がいたようで、とりあえずは家屋の方から群がっていたゴブリンを潰していった。家屋から救い出した娘を大部屋にゲートで移動させるという作業を地道にこなしていき、全ての娘たちを移動させてからフロアの救出に向かった。フロアは気を失っている様子で十字の丸太に張り付けられ村の中心に立てられていた。その周囲にはヘルサーゴブリンとおもわれる巨体の太ったゴブリンがいたが、的がでかい分、やりやすかったな。

自分たちの支配者が居あい抜きで胴から真っ二つになる姿を見せられ、他のゴブは逃げ出そうと村の出入口に向かって走り出した。一つしかない出入り口だったからな、一塊になったゴブリンどもに雷を落とすとあっけなく終焉した。まぁ散らばったゴブリンもいたが、各個撃破していき一匹も逃さずにすんだ。

あと面倒だったのはドワーフがいた事だ。」


「そのドワーフはどうしたんだい?」


「まだ村に居る。ゴブリンどもが居なくなった村では、そこに居た人達が帰る当てもないと言って定住する気だったからドワーフの処遇は任せる事にした」


「任せるってドワーフがゴブリンの味方をしていたのかい?」


「そうだ。武器の製造に家の建て方、村を襲う下準備にと、色々と知恵を貸していたようだ。それに村と言っても土壁でできた立派な家が多かったな」


「なるほどね。それはたぶんゴブリンメイジに知恵を与えて土魔法で作らせたんだろうね。それでフロアという少女はどうしたのか聞いていいかい?」


「フロアは開拓村に送り届けた。と言ってもゲートを開いてやっただけだがな。村の女が薬を出してくれてな、それを飲ませると目を覚ましたんだ」


「きっと魔力が枯渇して気を失ったんじゃないかな。薬草には魔力が微量に含まれているのもあるからね。それでゴブリンの村に居た人たちは定住を決めてドワーフの処遇を考えているところなんだね」


「なるほどな。魔力が枯渇すると気を失ってしまうのか。

ドワーフはそういう事だな」


「そのドワーフ。たぶんだけど荒野の街に居たんじゃないのかい?」


「そんな事も言っていたな。人間どもに復讐してやるんだと言っていたが、俺が現れてご破算ってとこだ」


「まぁ事が大きくなる前でよかったよ」


「放っておけば戦力を増強して街でも襲撃していただろうな」


「そうだね。今回は人助けで朝帰りになってしまっただけだから仕方ないと思っておくけど、ゲートを使えばすぐに戻ってこられるんだから、せめて一言伝えに帰ってきてよ」


「そうだよ! ロロアもしんぱいだよ」


「ぼくは寝ていたから本当は朝ごはん食べるときまで気づかなかったよ」


「ロロアもそうだったけど・・・」


二人は正直だな。せめて心配で眠れなかったとでも言ってくれれば、俺にも罪悪感が芽生えただろうに。


「朝ごはんはいつもと変わらず食べたのか?」


「うん。きょうはあさからぜいたくしたの! おさかなまるまるたべたんだよ」


「フォールが港街まで行ってお肉と交換してきてくれたんだ」


「ちょっと二人とも、僕が港に出向いたのは内緒って言ったでしょ」


「ラックも食べたのか?」


「当たり前。留守を預かっていた」


「ほー。俺が大変な目に合っている中、港街で買出しとはな」


「ほら! 僕は寝ずにカザミの帰りを待っていたからね。目が冴えていたし、久しぶりに焼き魚なんていいかなって」


あははっ。と笑ってごまかすフォールに「よしわかった! 表出ようか!」と冗談を飛ばした。


「カザミの分もちゃんとおいてるから、まずはお風呂に入ってきなよ」


「あっ。そうそう。風呂で思い出したんだが・・・」


俺はリーサに頼んだ一件と、ゴブリン村での朗報を伝える事にした。

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